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056-成長、そして覚悟-1P
「主様、大丈夫ですか?」
白い獣は、黒い獣と対峙しているにも拘わらず、僕が覚束ない様子で防御しているのが目に余るんだと思う。心配そうに何度も僕の方を確認する。
「大丈夫! 君は、そっちに集中して!」
そんな獣に明るく言い切る。
だけど、実際は痩せ我慢にもほどがある。心は焦りと不安でいっぱいいっぱい。
カルマンの目は赤く光り、僕の声も届かない。理性を失い、既に僕の知っているカルマンじゃない。
それはどこか赤い月のせいなようにも感じられる。でもその理由がまるで解らない。徐々に人ならざる者として、人を捨て獣に成り下がるカルマンに、僕の焦燥感はピークに達する。
どうすればいい? どうすれば、カルマンを元に戻せる?
カルマンの一振はとても重い。だけど、