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-二匹の獣-10P
そんな運命を背負っているかのように、僕にはそういう風に見えてしまった。
白い獣がまず一歩、先手を切って動きだす。
それが合図となり、黒い獣も白い獣に向かって一直線に駆け始める。
そしてカルマンも同時に動き始める。
カルマンが一歩踏み出す瞬間、時間が止まったかのように静まり返り、音さえも停止したような錯覚に陥る。だけど、次の瞬間──閃光のように僕の懐に飛び込んみ、そして一拍……。
なんて待つ暇もない。力強い一歩が地面を沈ませ、その足跡から螺旋状の亀裂が走っていく。
これはまずい。非常にまずい。
なにもしなければ待つのは死あるのみ……。
『死にたくない!』
その一心でとっさに僕は、ロザルトの鞭を具現化し、防御の構えを取る。だけど、僕の動きは鈍く、カルマンの攻撃が視界を埋め尽くすばかり。
それに、カルマンの攻撃は想像以上に重く、まるで全身に圧し掛かるような重圧を感じる。
僕の拙い防御では、数分と持たない──。