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-二匹の獣-8P
禍々しいオーラを放ちながら狙った獲物の首を狙うように動き始めた。
それは血に飢えた肉食獣だともいえる。
焦りが僕の胸を締め付ける。今、カルマンが動けばどうなるか──予想もつかない。
だけど、幸い、ここは街から離れている場所だ。人が通ることはほとんどない……と思う。でも、その分、僕にとっては逃げ場がない。この状況じゃ、窮地に追い込まれているのは僕自身。
そんな中、今、鞭を具現化すれば、それが合図になり、カルマンは間違いなく僕の首を狙ってくる。戦いが避けられないことは明白だ。敵が増えるのも困るけど、もしそうなってしまったら──弱音を吐ける余裕なんてない。
ただ、ここがナダイムだということも忘れちゃいけない。教会が管理しているこの地には、他の魂を遣う者がいつ来てもおかしくない。援軍が来ることが、僕にとって有利に働くのか、あるいは事態をさらに悪化させることになるのか……その答えはなにも見えてこない。