-二匹の獣-7P
「かしこまりました。主あっての私です。主がそう望むならば、私はこの命を賭け、そこの下僕様をお助け致しましょう」
「ありがとう。そっちの黒い獣……は?」
僕は白い獣に感謝を伝え、黒い獣にも確認する。
……ん? あれ、なんかこの白い獣。さっきサラッと変なこと言わなかった? カルマンのことを僕の下僕だとかなんとか……。いや、そんなことはないはず……。気の所為だろう、うん。
「俺様はアイツにつく。アイツは今、正常な判断ができていない。が、アイツが望むならば俺様は、この世界を滅ぼすこともいとわない」
そう言い、黒い獣は軽やかな足取りでカルマンの元へ駆け寄る。
どうやら、この黒い獣はカルマンの判断に従い、その行動を変えるらしい。今のカルマンが正常な状態ではないことを理解しているのに、あえてその選択肢を取ったのは、なにかの制約があるとか……?
……いや、今はそんなことを考えている場合じゃない。
そう思考しながらも獣の行動を観察していると、カルマンは反射的に鎌を振り上げ、黒い獣を攻撃しようとする――。
だけど、カルマンは黒い獣と目が合った瞬間、振り上げた鎌をなぜか下ろした。まるで、黒い獣を受け入れたかのように。
どうして? そう思うものの、今は、カルマンを助けることだけに集中しなくちゃいけない。頑張れ僕。そう鼓舞していると、張り詰めていた空気が一層ピンッと張り詰め──