-二匹の獣-6P
て。……そんな時間はないから。
そんな僕の態度に、獣は少し寂しげな表情を浮かべ、瞳に陰りが差し込む。だけどなにかをグッと呑み込み息を吸い込み一拍、まるで人間のような優雅な所作で、
「…………。主……。すぅー。私はあなた様の忠実なる下僕で御座います。主の窮地に、馳せ参じました。と言いたいところですが、主の魂の覚醒により、一時的にですが、現世に現れることができた。というのが実際のところでしょう」
僕の質問に淡々と答えた。
僕の下僕……?く僕は誰かを下僕にした覚えも、下僕に思ったこともない。
なにを言っているのか?
口からでまかせか?
それとも、本気で僕を『あるじ』だと思っているとか……?
ううん、そんなのどうでもいい。友好的なのは間違いないはず。今は僕の力になってくれる。それだけで問題はない。この獣の言葉が真実か否かなんて考えている余裕さえもない。
「よく解らないけど……。カルマンを助けたい。協力してくれないかな?」
焦る気持ちをなんとか抑えつけ、僕は白い獣に協力を頼み込む。今は、どんな手でも借りたい。犬でも猫でも構わない。どんな存在でも僕の力になってくれるなら──っ!