-赤き月とカルマン-9P
「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
人間のものとは思えない、獣じみた低くて重い咆哮が、赤い月に向かって放たれる。その声は、どこか苦しそうにも聞こえる。だけど、今まで聞いたこともないほど低く、地面を揺らすほどの威圧感に満ちていて……その声に僕は体が硬直し、痺れるような感覚に襲われた。
圧倒的な力……まるで目の前にいるのは、カルマンじゃなく悪魔なんじゃ……。そんな不安が支配し始める。
そんな僕の不安なんて知る由もないような様子で、カルマンは無気力にも似た様子で肩を揺らし、ウマ型のメテオリットを視界に捕え──そして、背筋が凍りそうなほど不気味で不敵な笑みを浮かべ、人間とは思えないほどの速さでメテオリットを瞬殺する。
本当になにが起こったのか解らない。
気づけばメテオリットの核から、血の様に赤い液体が吹き出し、カルマンの全身に降り注いでいた。
その光景は現実味が全くない。鉄に似た異臭が僕の鼻を刺しえぐり、思わず嗚咽しそうになる。なのに、カルマンはその液体をなにごともないかのように受け止めていて──。
どうして? そう思ってもなにも判らない。
僕はなにも理解しないまま呆然と立ち尽くし続けていると、不気味な雰囲気を醸し出すカルマンと共鳴するように、さっきまで僕の魂と融合していた鎌も異なる姿へと変貌していく。
鎌本体に黒々とした靄が広がり、禍々しいオーラを纏っている。そんな靄は螺旋を描くようにカルマンの周囲にまで広がりを見せる。
それはまるで死神──