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-君は本当に……-5P
今、どうしたいのか。それが重要じゃない? そんな答えをみつけ、胸の中にそっと落す。
「ふぅ……。正直なところ、解りたくはない……。そんな気持ちしかないわ。だけど解ったわ。あと一度だけ、あなたの背中を押してあげる。でも、辞めたくなったら、いつでも辞めて良いのよ? 私は、反対しないからね」
母さんはグッと歯を食いしばり、寂しげに笑う。
その笑みは諦めとも、哀れみとも違う。純粋に、僕を心配する暖かな優しさが満ちているように思えた。
そのあと母さんは、上手く作れていない笑顔を隠すようにカップを口につけ、クロムティーを飲み、心を落ち着けるように少しの間、天井を仰ぐ。
そして視線を僕に戻したあと、
「それと、なにも解らない運命に振り回されず、自分の気持ちを大切にすること。この次、またあなたが死にそうになれば、魂の使命こん願者を続けることは絶対に認めないわ」
母さんは二度目はない。そう言い切ったあと力なく笑った。
本当は、自分の気持ちなんて変わらない。魂の使命こん願者なんて辞めて欲しい。小刻みに震える母さんの体から、それがヒシヒシと伝わってくる。