219-続き-
「な、なにをするのですか!」
それに気づいたタナストシアは、逃げようと走り出す。
そんなタナストシアを逃がさないと言わんばかりにカルマンは、容赦なく腰辺りに狙いを定め、思いっきり鎌を振りかざす。
だけど――
カーンッ
カルマンが振るった鎌は、なにか目に見えないものに遮られる。
それだけでも驚きだというのにもかかわらず、お返しだと言わんばかりに、軽い金属音が響いたかと思うと、突然カルマンが数十メートル後ろへ吹き飛んだ。
そんなカルマンの行動を認めたフェルは、驚きとも苛立ちとも取れそうな声音で言い放つ。
「なにしてるガウ!」
その言葉を受け止めるようにして、カルマン――否、ルフーラが、カルマンの代わりというようにフェルを諭しにかかる。
「なにか僕たちで言う、シールドのようなモノが、あのタナストシアの周りに張りめぐされてるんじゃない?」
そんなルフーラの様子だけど、どこか苦しげに息が上がっているような気も……。
僕はそれにふと疑問を覚え、さりげなく確認を取った。
「ルフーラどうしたの?」
だけど、まだ僕は完全には信用出来ないと思ってるのかな?
「……別に」
ルフーラはそう言って、ふいっと僕から顔を逸らしてしまった。
でも、その態度は嘘だって言うことを僕は知っている。
だから、こんな所で追求するのは良くないと理解しながらも
僕はルフーラの態度が気になって同じ問いを別角度で重ねた。
「嘘だよね?
ルフーラも嘘つく時よくわかるよ?」
「別に嘘ついてないし。
気にしなくていいから」
けれど、何度問いを重ねたところで、ルフーラは一切答えてはくれなかった。
それどころか、どこか僕を突き放そうとしているような気も。
だけど、あまり深く追求すべき時じゃないことも理解できていたから。僕は嫌な予感のような直感をグッと堪え、それ以上は聞くことをしなかった。
そんな僕たちを横目に、若干冷静を取り戻した様子で、蛇のタナストシアが声を上げる。
「先程の攻撃は肝を冷やされるかと思いましたよ」
そんな蛇のタナストシアに、カルマンは苛立った様子で声を荒らげる。
「なにをした!?」
「なにもしてませんよ?
強いて言うならばあなたたちと同じく〔シールド〕と呼ばれるものを張り、反射させただけですよ」
タナストシアは冷静な態度で、余程破られない自信があるんだと思う。カルマンを挑発するような態度で種明かしをした。
そんなタナストシアの挑発に乗るようにして、カルマンは“殺すっ!”と一言。不穏な殺気を放ちはじめる。
だけど、そもそもシールドが張られているならば、それを壊さない限り、カルマンの攻撃が当たることなんんて無も同然。
だから僕は、カルマンに言い放った。
「」冷静になりなよ」
でも、カルマンは頭に血が登って周りが見えていないみたい。
「俺は至って冷静だ」
そう言って、後先考えずに蛇のタナストシアへと攻撃を仕掛けようとした。
それを認めた僕は、カルマンの動きに待ったをかけるようにして、牽制する、
「どこが?
先ずシールドをどうにかしなければ意味がないんじゃないの?」
でも、僕の言葉ななにひとつカルマンには響かなかったらしい。
「あんなまがいモノ
俺の鎌で壊せるはずだ」
そう言って、やっぱり勝手な行動をしようとするんだよね。
僕はそんな独り善がりにも似たカルマンの行動に、若干の呆れを覚えながらも、小さく息を吐くと、肩を竦めわざと嘲笑してみせた。
「自分の鎌にどれだけ信頼を置いているかは解らないけど、さっき後ろに飛ばされたのにその鎌で壊せるの?」
そんな僕に腹を立てたのか。それとも図星を突かれちゃったからか。カルマンは、僅かに青筋を立てるように顔を顰めると、怒気を強めるようにして当てこする。
「あれは知らなかったからだ!」
はあ……。今のまんまのカルマンじゃ、多分いくら言っても無意味なんだろうな。
僕はそんなことを考えながらも、静かに問いを重ねた。
「じゃあさ、いつもシールドを破壊する時どうやって壊すの?」
「様々だ
だが鎌で突破することが多い」
「今回は難しいと思うけど?」
「どうしておまえにそれがわかるんだ?」
徐々に苛立ちを募らせていくカルマン。そんなカルマンをじっと見つめながらも僕は、淡々とした声音で応じる。
「もし突破出来るなら、なにかしら攻撃した痕跡を残せるはずだけど、あのタナストシアの見えないシールドには、そんな痕跡が残っていないよね?」




