-教会へ-4P
「今日はなにしにこちらへ?」
「今日はひと月に一度、クトロケシス様へ祈りを捧げる日なのです。あなたは?」
「私は妹が子供を授かるので、その申請に──」
ボーッと往来する人々や、露店の客引きを眺めていると、そんな会話が耳に入ってきた。そういえば、公的業務も教会が担ってるとか言ってたっけ。魂の使命こん願者登録以外にも、ちゃんと教会らしいことをしてるんだな〜。そんな関心を覚える僕。
だけど、誰もそんな僕に共感してくれる人なんていなくて。ナダイムの住人たちは、長蛇の列に驚く素振りも見せず、馬車や人力車が忙しなく往来し、道端に並ぶ露店の客引きなんかで活気を増し続ける。
きっと教会に人が集まるのは、当たり前の日常なんだろうな〜。
ゴーンッ──。ゴーンッ──。
そんなことを考えながらぼんやりと街の様子を観察していると、十時を報せる鐘の音が鳴り響く。それを合図に教会の門が開き、瞬く間に人々が濁流のように中へと押し寄せていく。
「わっ! わっ!」と焦りながらも、僕はその流れに巻き込まれ、あっという間にもみくちゃにされながら中へ──。
「はぁ──、はぁ──。死ぬかと思った……」