-お互いの意志。譲れぬ信念-4P
もし仮に、僕がクトロケシス神と、なにかしらの契約を結んでいなければ魂の使命こん願者になることも、なかったのかな? そんなことをひたすらに考え、クトロケシス神の目的が一体なんなのか? 悶々と考えていた。
「リーウィンちゃん、母さんが昔、話したことがあったでしょ? あなたのお兄さん、シルプのこと……」
母さんは、目まぐるしく変わる僕の表情に、クスッと笑みを浮かべ、躊躇いがちに一拍。兄さんの名前を口にする。
「うん、あんまり……兄さんのこと、覚えてないというか……、思い出せないけど……。母さんから聞いた話は、よく覚えているよ」
どうしてか解らないけど、僕は双子の兄、シルプのことを思い出せずにいた。
兄さんが居なくなってから、もう十三年。
時が経つにつれて、曖昧になっていく兄さんの記憶。白い靄に覆われる様に、脳が兄さんという記憶を拒絶している様な……。まるで誰かに、兄さんの記憶を奪われているような……記憶の器にポッカリと、穴が空いたような感覚だけが残り続けている。
夢に出て来ることもあるし、それが兄さんだと理解もできる。だけど、顔も声なんかの細かな特徴がなにひとつ思い出せない。無理やり思い出そうとすると、強い頭痛や眩暈に襲われるから、今じゃ兄さんのことは考えないようにしている。
だからって、兄さんの存在を否定するつもりは全くない。だけど、どこか空想の住人のようにふわふわしているから、兄さんの存在に期待もしていない。
ただ、本当に存在するなら一度でいいから会ってみたいけど……