-ドナーへの強い反対-5P
カルマンは、淡々とした態度で
「俺は魂を遣う者だ。魂を遣う者が魂の使命こん願者と契約することは一つしかないだろ?」
そう言い放ち、母さんを睨みつける。そんなカルマンの言葉に、母さんは胸に抱えていたモノを床に落とし座り込んだあと、なにか言いたげに僕を見上げる。
その瞳には、恐怖や不安なんかの色が宿っていて……。僕は、そんな母さんの態度なんかに動揺しながらも、平常心を装い、
「母さん……どうしたの? そんな、複雑そうな顔をして……」
誕生日と同じ態度で聞いた。
本当はそんなことを言えばどうなるかも解っていた。だけど、平常心を装っていただけの僕には気の利いた一言すら言えず……。
母さんは、そんな僕の態度に怒りを爆発させるように、
「嫌よ! 今回は、目を覚ましてくれたから良かったものの、次はあなたが死んでしまうかもしれないのよ!?」
そう声を荒らげ、泣き崩れながら、魂の使命こん願者を続けることを拒絶する。
まあ、こうなることが目に見えていたから隠してたんだけど…… そこまで拒絶されると、僕の行動は正しかったのか、自信が揺らぎ始めた。
カルマンは、そんな僕と母さんの態度を察してか、
「…………専属契約は元々、今日する予定ではなかった。後日また来る。それまでに、おまえの母親を説得して答えを出しておけ」
そう言い、そそくさと家をあとにした。
その夜から母さんは、
「今はまだ、リーウィンちゃんと上手く話せる自信がないわ」
そう一言、僕との会話を避けるように自室へ篭ってしまった──。