013-ドナーへの強い反対-1P
フェルの件だけど、納得しなきゃいけないのは解ってる。頭は納得しようとしているんだけど、心は全く追いつかない。
カルマンから渡された魂の使命こん願者カードは、正真正銘、僕のモノだった。ここに間違いはない。
だけど、魂を守護するモノ証明書には……。カルマンが言う通り、たぬ──。ううん……、化け物のような……、見たこともない生き物が写っていた。
これがフェルなんて有り得ない! 何度でも断言できる自信はあけど、それがフェルじゃないとも言いきれない。
そんな相反する感情を抱えながら、窓に張り付き泣き喚いているフェルと見比べたけど、似ている要素はなにひとつない。
でも、カルマンの話を聞くからに── 。そんな気持ちはやがて、僕の思考を停止させた。
「だからたぬきだと言ってるだろ」
「えっ、いや……。産まれた姿から、多少変わる魂を守護するモノがいるって聞いたことはあるよ? でも、ここまで変わるなんて普通は思わないよ!? 目なんてどこにあるの!?」
「今実際に、おまえが目の当たりにしているだろ? 目も判らないとはおまえの目は節穴か? どう見てもここだろ」
カルマンは、困惑している僕とは裏腹に、冷静な態度を崩さない。フェルだと言われる生き物が写る証明写真を指さし、ここが目だと教えてくれた。
「なんで判るの!? こんな真っ黒な体毛に覆われた、糸目だよ!?」
「偶然とはいえ、たぬきの誕生を見ているからな」
「はあ……」
「そんなに驚くことか? 今とさほど変わらないだろ?」