-カルマンとフェル-3P
【賠償請求書
○月×日
たぬきがカルマン・ブレッヒェンから無断で持ち出した、
【一億五千万セクト】
の返還を、契約主であるリーウィン・ヴァンデルングに要求する】
というような内容が書かれている。
小さい文字じゃないのに見落としたのは、あまりにもおかしな数字の羅列と、ヌワトルフ神父の名前のせいだと思う。
普通に生きていれば絶対、僕のような一般人がこんな金額を見るなんてありえない。
えっ、フェルは一体なにをやらかしたの? 僕はゆっくりと首を動かし、フェルを視界に捕らえると、
「フェル! カルマンの目を盗んで取ったっていう、お金をどこにやったの!?」
即座に問いただす。
「カルマン? 誰だガウ? オレサマ、そんな奴、記憶にないガウ!」
フェルは僕が声を荒らげた瞬間、間抜けな顔で鼻をほじり、シラを切り始める。そして不貞腐れるように、プイッと顔を背けた。
最近、判かってきたことだけど、フェルは都合が悪くなると目を逸らしたり、顔を背ける癖がある。多分、今回もなにかしらの自覚、又は心当りがあるんだと思う。僕はそれを理解し、
「とぼけないでよ! さっき挨拶していたじゃないか!」
なんてカルマンを指さし怒りをぶつける。
「知らないガウ。気の所為ガウー」
フェルは不貞腐れた声で、プイッとそっぽを向き、自分は悪くないと言わんばかりにツンッとした態度を貫く。
「フェル〜!」
このままじゃなにも解決しない。そう思った僕は、フェルの首根っこを掴み、説教の体制に入る。
「無礼だガウ! オレサマに、なにするガウ!」