0011-たぬきじゃないから!?-1P
「たぬきはどうしているんだ?」
テーブルの上で休息を取っていた僕に、突然カルマンが声をかけてきた。
ハッ! さっきカルマンがトイレに行った時が追い出すチャンスだったじゃん!? 僕、なにしてるんだろ……。そんな後悔が胸に広がるけど、もう遅い。
「はぁ……。フェルのこと、たぬきって呼ぶの辞めない?」
僕は溜め息混じりに、カルマンを睨みつけ、自分の要領の悪さに呆れ返る。
だけど|カルマン(当の本人)は、そんな僕の心情なんてお構いなし。僕がいくらフェルだと言っても、訂正することなくたぬきと呼び続ける。
どうしてそんなに、たぬき呼びに拘っているのか知らないけど、気にするだけ無駄か。
「はぁ──フェルだよね? フェルは我儘でごう慢で。つい最近も、カジノに行って散財してくるわ、自分が気に入らないと思えば、癇癪を起こして、とても臭いナニカを投げてきたりしてるよ」
僕は、淡々とした態度で嫌味を混じえつつ、フェルのことを話した。
「他にはないのか?」
どうやらカルマンが知りたい部分はそこじゃないっぽい。僕には、カルマンがなにを知りたいのかさっぱり解らない。
「キミが、なにを知りたいのか解らないんだけど?」
僕がそう答えると、カルマンは興味なさげに「そうだな」と一言呟き、足を組み直し、なにかを考えるように、片手を唇へと持っていった。
「聞いたのはカルマンなのに、興味ない態度って……。はぁ──、ほんと意味解んないや」
そんな小言を吐き連ねていると、ふと思い出す。
そういえば、カルマンって魂を遣う者だったんだ!