-母の反対-11P
そんな時間が延々と続き、ようやく決意したのか母さんは、再度、深呼吸をして一息。
「……フォルトゥナ教会まではそんなに時間は掛からないと思うけど……。十八時までには帰ってくるのよ? お願いだから、寄り道しちゃダメよ? 母さん、リーウィンちゃんがいないと寂しくて死んじゃうかも〜!」
なにかを飲み込むような間を開けたあと、普段の様な態度で冗談を交じえ、完ぺきな笑顔を取りつくろう。
「母さん、ありがとう……」
多分、母さんは納得も理解もできていないと思う。本当は、どうにかして止めたかったはず。だけど自分の気持ちを押さえ、僕の意志を尊重してくれたんだと思う。
そんな気持ちが、完璧に取り繕った笑顔に見え隠れしている気がして、僕はそう言うほかなかった──。
そんなこんなで色々とあり……。 母さんとの話し合いなんかで、いつの間にか時刻は八時四十八分を指していた。
そろそろ、教会に向かわなきゃ。
あ〜、プレゼントの方は……帰ってきてから開ければ問題ないよね! それよりも……。そんなことを考えながら僕は、教会で必要なモノを再確認したあと
「母さん、行ってきます! あっ、兄さんも行ってくるね!」
三歳の頃に行方が解らなくなった兄、シルプの写真に向かって挨拶をし、靴を履こうと手を伸ばす。
その瞬間──
カタッ
棚に飾っていた写真立てが、なんの前触れもなく突然、床へ落下した。
「えっ!? あっ、母さんごめん! もしかすると、写真立てにヒビが入ったかも!?」
僕は慌てて写真立てを拾い、確認もせず棚に戻したあと、玄関のドアを勢いよく開け外へ飛び出した──。