010.5-常識知らずなカルマン-1P
「ところで、今日はどのような要件で、なんの約束もなしに、突然、訪問されたのでしょうか?」
僕は言葉の端々に嫌味を込めながら、要件を尋ねた。
「……ウゲッ。この茶、かなり苦いな。ミルクはないのか?」
だけど、カルマンは僕の質問を無視し、クロムティーを一口、眉をひそめた。
僕が用意したクロムティーは、〔少し〕苦いだけ。いわゆる初摘みの青々しさが残る風味が特徴。それなのに、まるでゲテモノでも出されたかのように呻き声をあげ、顔を顰める。
そんなに顔が歪むほど、苦く出した覚えは全くない。
少し苦めに淹れたとはいえ、普通に飲める程度の苦味しか出ていない。独特なえぐ味もなく、飲みやすさは僕の折り紙付き!
僕は一瞬、言葉を失いかけたけど、すぐに冷静さを取り戻し、
「ミルクですか?」
そう確認した。
確認した理由は、クロムティーとミルクの相性問題。
クロムティーにミルクを入れると、水色が濁った茶色になって、見た目がかなり悪くなる。その上、味も水っぽくなって、香りなんかも台無しにしちゃう。結論として、クロムティー本来の魅力を半減させてしまうことに。
だから普段は、素直にミルクと合わないことを伝えるんだけど──。今日は早く帰ってもらいたいし、出してあげてもいいかも!
そんな僕に、内なる悪魔が声をひそめ、
『ほらみろ。とても苦い茶を出しておくべきだったんだ』
なんて嘲笑する。