#03
「大通りをいくと、また騒ぎになるかもしれない。少し逸れていこう」
「わかりました」
賑やかにたどり着く前に道をそれていった。
大通りは店構えのしっかりした店舗が並んでいたが、道をそれていくと、小規模な店や住宅が混ざって立ち並んでいた。遊具らしいものがおいている広場。植木や花壇。走り抜けていく子ども。ベンチでお喋りをする老人。露天で山積みにされて売られているのは野菜か果物か。サトルには判別がつかなかった。大通りのときほど人だかりにはならなかったが、それでも呼び止められることは多かった。富をもたらすという漂流者にあやかろうと無遠慮に触られそうになったが、フロレンツがしっかりかばい、注意したのでひどいことにはならなかった。
しばらく住人に挨拶をしながら進んでいたが、フロレンツは明確な目的地に向かっていることに途中で気づいた。
「おばあ、焼いてくれるか?」
「あら、フロレンツ様。いらっしゃい。何を焼くんだい?」
「鳥を二本……いや、三本もらおう」
「はあい。久しぶりねぇ。前に来たのは何年前かしら?」
「そこまでじゃない。先月にきたじゃないか」
「そうだったかしら? ばあさんになると、昨日も一年前もわからなくなっちゃうからねえ」
屋台に張り付いた板には文字が書かれている。話すことと同様に、見たことのない文字だが読み取ることができた。串焼きの店で、自称するとおり腰の曲がった老婆はのんびりと焼台に立っている。軽く手を叩くと、そこに熱が発生したことが肌に感じられた。
「これが氷石ですか」
「あぁ」
この世界には魔法がある。それはサトルの目にそう見えているだけで、この世界においては真っ当な科学なのだが。
氷石という石は、電池のようにエネルギーを溜め込んでおける石だ。ここでいうエネルギーは、電気だけを指すのではない。例えば熱を、光を、冷気を、衝撃を溜め込んでおける。サトルとしてはそれらを一括りにするには分類が異なるように思うのだが、この世界では氷石に溜め込んでおけるものというくくりなのだ。ちなみに氷石というが、冷たいわけではなく、半透明の石が氷のような見た目をしているからその名前なのである。
火の力が溜め込まれている氷石によって肉が焼けていく。こうばしさはサトルに空腹を気づかせた。朝食はわずかしか喉を通らなかった。途中からフロレンツに抱えられたが、教会までそれなりに歩いた。教会でも長時間話し込んだ。空腹は妥当である。
「甘いのも食べるかい?」
「そうだな。バナナももらおう」
「ばなな?」
メニュー表を見ると、たしかにバナナと読めた。おそらくバナナに近いものなのだろう。それを、サトルにもわかりやすくほんやくコンニャク機能が意訳した結果だ。
「ぼくはどうするのかしら?」
「え? ……っと、少食なので、小さいのがあるなら同じのください。あと、僕、おばあちゃんが思ってるほど子どもじゃないです」
「あら、そうなの?」
「サトルはもう十八だ」
「サトルくんっていうのね。おばあちゃんはカルラっていうのよ」
「カルラさんですか。かっこいいお名前ですね」
「まあ、ありがとう。お父さんがくれた唯一のプレゼントよ」
のんびり話しながらも、カルラの手元はしっかり動いていた。追加で焼き場に乗せられたのは、たしかにバナナらしくはあった。ただ、曲がっておらず真っ直ぐである。サトルの思うバナナではない。サトルが小さいものと言ったので、片方は半分ほどの長さだ。
「はい、とりは焼けたから、先に食べなさい」
「ありがとうございます。いただきます」
受け取ったのは、一口大……には少し大きい肉が刺さった串。タレではなく塩とスパイスがかかっている。熱いはずなのだが、フロレンツはそんな素振りなく食べていた。サトルも一口かじりつく。かみきれなかったので、一切れを無理やり口の中に収めることになってしまったが。とり肉といえば鶏を思うのだが、ここでもそれがよく食べられているのかはわからない。食感は鶏だと思うのだが、ジビエの食レポで“鶏肉のような”はよく出てくる言葉だ。噛みしめるごとに溢れ出てくるような肉の旨味、塩と少しピリッとするスパイスで、満足感は十分だ。焼き加減も味付けもほどよく、口の中が幸せになる。
サトルがよく噛んで一切れを飲み込むころには、フロレンツは一串食べきっていた。
「とってもおいしいです! 焼いているだけに見えるのに、おいしさが口の中に広がるみたいで」
「まあまあ、嬉しいわ。でも、サトルくんのお口が小さいから、一口でいっぱいだったわね。ちょっと貸してくれるかしら?」
まだ残っている串を渡すと、キッチンバサミで切れ目を入れてくれた。少し肉汁が落ちてしまったが。
「ありがとうございます」
今度は噛み切りやすくなったので、一口一口味わうことができた。その間に焼き上がったバナナももらう。最後に砂糖をふりかけて炙っていたため、パリパリしたカラメルで覆われていた。柔らかい実はとろけるような濃厚な甘さで、たしかに何も言われず食べてもバナナだと思っただろう。ただ、果肉はねっとりしているだけでなく、さつまいものようなホクホクした食感もあった。およそだいたいサトルの思うバナナではあるが、完全一致ではなさそうだ。
「こっちもおいしいです。甘みが強いのは、温めているからですか? とろっとして、かおりまで甘くて」
「あらまあ。あんた、上等な舌を持ってるのね。……あんまり言いたくないけど、フロレンツ様のところでの食事、大丈夫?」
「えっ? それは、その……素朴で素材の味を大事にしている味だなって……思います……」
嘘は言っていないが、正直に言うこともはばかられた。よっぽどの理由がない限り、出されたものには文句を言わず食べると、給食で刷り込まれているために。食が進まなくて残してしまったことには、大変な罪悪感を覚えた。食欲がなかったことは本当だが、あまりの味気なさに手が進まなかったのである。
「すまない、私の食事に付き合わせてしまった。兄にも相談しよう」
フロレンツにも自覚はあるらしい。
「顔色がよくなってきたね。あったかくおいしいものを食べたら、だいたい元気になるから。元気がなくなったらここにおいで。若い子はいっぱい食べなきゃダメよ」
「は、はい。そうですね」
「面目ない……」
初手でそういうものなら仕方ないと諦めていた食事事情が改善するかもしれない。
そのまま、大通りから少し外れた道でフロレンツの邸宅まで戻ってきた。途中、もう町中に漂流者の噂がまわっていたため、声をかけられることも多かったが、程々で切り抜けた。
フロレンツの邸宅に戻って今後の方針について話をした。サトルとしては一市民として身を立て、それなりの生活を営めるようになりたいと思っている。丸一日この世界を体感してわからないことだらけだということが知れた。まだまだ一市民には程遠い。思わず、『人を殺すこと、人のものを盗ることは悪いことですよね?』と確認してしまう程度には。フロレンツ預かりの身は続きそうだ。
まずはこの世界に馴染むこと。その一環として、フロレンツの甥と姪にあたるヘルムントとローザと勉強をしないかと提案された。二人は四歳と五歳。ちょうど家庭教師をつけている。すでに交渉済みらしく、その学びに混ざらないかと、そういう話だ。一般教養、歴史、作法等を学んでいるとのことで、邪魔にならない程度に聞かせてもらうことにした。サトルの思う常識や価値観は、今はまったくあてにならない。それを学ぶ機会を与えられたことはありがたかった。子どもの学びに混ぜられるなら、サトルに虚偽を教えるということもないだろう。
「そういえばフロレンツさんはお一人なんですか? フーゴさんとホルストさんしか紹介されていませんでしたけど、ご家族は?」
フーゴとホルストは、この屋敷の使用人頭とその見習いだ。祖父と孫の関係で、真ん中の父はヘルマン宅で働いている。他の役割の使用人は、短時間のパートタイムのように決まった時間に仕事をして帰っていく。常駐している二人は紹介されたのだが、他にこの屋敷に住むものは紹介されていない。兄であるヘルマンに妻子がいるならば、聞いたところによるとそれほど年が離れていない弟にも妻子がいてもおかしくはない。いの一番に紹介される存在だろう。と、思ったのだが、口に出してから気づく。
「あっ、もしかして聞いちゃダメなことでしたか?」
他人の家の事情でサトルには関係のないことだ。口を出すことではない。
「となりがにぎやかだから、そう思うのも当然だろう。結婚はしていた。だが、子ができなかったので、離婚した。それからも何度か紹介を受けているのだが、なかなか話が進まないんだ」
「そうだったんですかでも、子どもができないくらいで……あっ、これは僕の感覚ですね。すみません」
「たいしたことじゃない。──新しい命は、身も心も強く愛し合い、それが認められて神から託されるものだ。愛していた……つもりだが、神のお眼鏡にはかなわなかったのだろう」
「そうなんですか。早くいい人が見つかるといいですね。フロレンツさん、強くてかっこいいし、優しくてかっこいいですから……あ、かっこいいって二回いっちゃった。いえ、昨日にぽっと出てきた僕の印象なんて薄っぺらいでしょうけど」
まだこの世界のすべてを疑う気持ちは消えていないが、なんらかの打算があったとしても、悪い人ではないだろうと、つまりは少しほだされつつあるという自覚があった。
「まだ昨日の今日でそう思ってもらえてるなら嬉しい。ありがとう」
ふわっと、微笑まれた。
フロレンツは厳つくてゴツい。格闘ゲームのキャラクタのように盛りに盛った体躯で、顔のラインも直線的だ。それを、ほんの少し口元や目を柔らかく緩ませると、とたん印象が丸くなる。なにか大型犬がもふっとしてきた気分だ。微笑み一つにも説得力がある。
それはそれとして、結婚や何やらの話はやはりセンシティブだ。今後は話題に出さないようにしよう。そしていい人を見つける邪魔をしないよう、できるだけ早くこの家を出ていけるようにしよう。
「食事の件は早急に対応する。すまない。こっちの屋敷には私しかいないうえ、私があまり食事に頓着しないから、専任を雇っていないんだ」
「そんなそんな! フロレンツさんの生活を変えてもらうほどじゃないですよ! 全然、そのうち慣れますから!」
「しかし、サトルはあまりにも華奢だろう。今のままではますます痩せてしまう」
「いや、こんなもんですよ。平均的な体格の父と母から産まれた、平均的な僕ですから!」
平均の範囲内で背は低く痩せ気味ではあることが否定しないが、今言うべきことではない。
「時々で、私もまあいいかとそのままにしておいたが……」
と。ノックの音で遮られた。フロレンツは返事をする。使用人のフーゴが、『お話中失礼します』と入ってきた。
「お客様です。落とし物をお届けに来たと言っています。私が預かると引き受けようとしたのですが、フロレンツ様とサトル様に直接お渡ししたいとのことです。いかがしますか?」
「サトルに?」
「あ、もしかしてストールでしょうか? 親切な方が届けてくれたんですかね」
疑問なく受け取るつもりで腰を浮かせると、フロレンツも立ち上がった。そこで、ふと、あの少年なのではないかと気づいた。持ち去ったのに、わざわざ持ってきた? 何のために? 持ち去った時点で、善意ではないと判断せざるを得ない。どうしよう。嫌な想像ばかりしながらフロレンツの後ろをついていく。考えすぎであるようにと願わずにはいられなかったが、想定できるサトルへの届け物など、なにもないのだ。
やはり、残念ながら、待っていた少年が持っていたのは、フロレンツが貸してくれたストールだった。母と思しき女性とともに、少年はニコニコ笑っている。あのときの少年であるのか、確信はない。だが、腰が引けてしまう。
「こんにちは! フロレンツ様」
威勢よく、すでに前のめり気味である。
「漂流者のお兄さん、落とし物!」
「あぁ、うん、ありがとう」
差し出されたので、受け取る。
「ボク、漂流者の人と話したくって」
「僕はまだわからないことが多くて、何を話していいのかもわからないから」
「何でもいいです!」
「それが一番困るやつ……」
何でもいいといいつつ、おもしろいものを求めているのは明白だ。サトルはその少年の趣向どころか、世間の流行りや文化も何もかも知らない。そもそも恐怖を抱く相手にまともに喋れる気がしなかった。
「渡したね。じゃあ、帰るよ」
少年の母が、少年をサトルから引き剥がすように抱え上げた。
「えー? 持ってきてあげたんだから、それくらいいいじゃん!」
「届けたんだから、もうそれはおしまい。いいことは褒められるためにするんじゃないの。お時間いただいてありがとうございました」
じたばたする少年をものともしていない。母、強い。
「こちらこそ、感謝する。助かった」
「はい。それでは、失礼します」
少年を抱えたまま──では扉は開けられなかったが、フーゴが先回りして開けた──帰っていった。
ふっと、無意識に詰めていた息を吐く。思ったより緊張していたらしい。
「戻ってきてよかったですね。お返しします。ありがとうございました」
受け取ったものの、あくまでストールは借り物だ。持ち主に返す。
「あぁ。──……」
フロレンツはストールを受け取ったのだが、何故かじっとサトルの顔を見ていた。
「窃盗が悪事であるかと聞いたのは、これのことか?」
「えっ! ……っと、肩から落としてしまったのは僕の不注意です。持ち去ったように見えたのも僕の主観で、あの騒ぎの中だとすぐに渡せなくてもおかしくないと思います。あとから渡したほうがいいって考えたのかもしれない……すみません、僕には判断できなくて……」
「そうか。そうだな、とっさにどう動けるかは経験によるところが大きい。あらゆる基準がわからなくなっているサトルには難しいことだ」
「すみません、ご迷惑をおかけして」
「迷惑などなにもない。サトルが私達の領地に落ちてきたのであれば、大事な領民と変わりない。領民が健やかに不安なく過ごせるように手を尽くすのが、私の仕事だ」
領民という言葉は、サトルにはピンとこなかった。フロレンツが──ヴォルフ家がどういった経緯で領主なのか、サトルはまだ知らない。封建制度や君主制のようなものであるならば、知ってはいるが、教科書の中の話だ。どういう立場なのか、まだよくわからない。
「戻ろう。フーゴ、これを頼む。なにか身体が温まるものを持ってきてくれ」
「はい、かしこまりました」
フーゴはストールを受け取り、さっと引っ込んでいった。使用人がいる生活も、サトルには漫画の中の生活である。
「私はどうすればサトルの信用を得られるだろうか?」
「え?」
話は応接室で行われていた。部屋に戻る途中、フロレンツは口を開いた。
「不審に思ってるだろうと行動の端々に出ている。サトルが何を信じていいのかもわからない状況で、せめて私だけは信じてほしいというのも難しいだろう。この家では安全を保証する。私を信じてほしい。だが、口先ではなんとでも言えることもわかっている。“信じてほしい”という言葉も、時と場合によるが、なかなか信じられるものでもないだろう」
「そう、ですね。口先だけならなんとでも言えるし、意に反する態度だって取れます。それを信じられると思い込めるようになるには、積み重ねが必要なんじゃないでしょうか。僕がこの世界のこと、この町のこと、フロレンツさんのことを知る前提ですけど、フロレンツさんも僕のことを知ってもらって、仲良くなって。人と人との信用って、そういうところから生まれるものだと思います。示せる実績がなにもない以上、ゼロから築いていくしかないですね」
「うむ。……なにか、当然のことを聞いてしまったな」
「価値観のすり合わせは大事だと思います。何が常識で何が非常識か、わからなければ思いも寄らないところで嫌な思いをさせかねませんから。僕が知らないからっていうだけで、全部チャラにできるとは思っていません。些細なことでも指摘してください」
「あぁ。今のところ、それほど常識外れな言動はないと感じている。ただ、ずっと緊張しているように見える。私も事情はわかっているから、楽にしていい」
「えっと……ありがとうございます」
自覚はあったが、緊張は外にも漏れていたようだ。
「親しくなるというのは、どうすればいいものだろうか」
応接室のドアを開けたフロレンツに促されて中に入る。
「共通の話題があれば、一気に親しくなることもありますけど、やっぱり日々の積み重ねですね。うーんと、握手とか、どうでしょう?」
腰を落ち着ける前に手を差し出す。
「仲良くなる手段というより、仲良くなった結果、仲が良いですよのポーズになると思うんですが。お互いに徒手であることを開示して触れ合えるのは信用があるからでしょう」
「なるほど」
がっしりとしたフロレンツの手に包まれる。まるで岩のような手だ。サトルの手が子どもの手に見えるくらいに大きく、骨や筋の凹凸がくっきり浮き出ている。魔獣討伐のリーダーを務めるくらいだ。手の厚さも感じられる。
「やっぱり大きいなあ。かっこいい」
ぽそりつぶやく。文化系部活に所属しているだけの、つまり幽霊部員であったサトルには程遠い手だ。
「挨拶の本来の意味なんて、形骸化しているから、そんな事を考えてしてるわけじゃないですけどね。ハグをするのだって、無防備をさらけ出してわひゃあ!」
覆いかぶさるように抱きしめられ、思わず悲鳴が出た。
「む、ちがったか?」
フロレンツはぱっと離れてくれた。
「結果です、結果! 抱きしめられるくらいの仲っていう結果で、仲良くなるための手段じゃないです!」
「すまない……」
なにかすごくしょんぼりさせてしまった。
「大丈夫、です。びっくりしただけですから。全然嫌な感じはなかったです。自分で思っているより、フロレンツさんのこと信用してるんでしょうか」
「そうか。よかった」
フロレンツのしょんぼりはすぐになくなった。
仕切り直すように、こほんと咳払い。
「急にするのはよくなかったな。次からは確認してからする」
「そうしてください」
言ってから気づく。抱きしめていいと許可してしまったのではないかと。──まあいいか。嫌な気分にもならなかったので、そのままにしておくことにした。
腰を落ち着けてしばらくもしないうちに、フーゴが茶を運んできた。教会で飲んだものとはまたかおりが異なる。何も入れずに一口飲んでみる。爽やかなかおりと、ヒリヒリする辛味があった。じんわりと温まるようなそれは、生姜だろうか。
「甘みはいらないのか? 教会でもそうしていたが」
「どんな味かと思っただけです。甘み、いただきます」
カップを置くと、フロレンツは小瓶の氷砂糖のようなものをザラザラと入れてくれた。サトルの目には入れすぎているように見えるのだが、そんなものなのだろうか。一緒に漬かっていた琥珀色のシロップのようなものも一匙。甘みと深みのあるかおりが足された。お腹の中からじんわりと温まっていくようだ。添えられていた一口サイズに切り分けられた焼き菓子も頬張る。ふわふわぽかぽかしてきた。
「さっき、サトルの手が冷たかったが、顔色もよくなって……赤すぎないか?」
「ふえ?」
なんだか顔が熱い。昨夜ほとんど眠れなかった眠気が、今になってまぶたを重くする。
「もしかして、酒は飲めなかったか?」
「お酒……」
ぽわぽわしてきた。
「僕、成人してるっていいましたけど、お酒は二十歳になってからだから、飲んだことないです……」
まぶたの重さに逆らえなくなっていた。
なお、後に確認したところ、小瓶に入っていたのは氷砂糖をウイスキー(※ほんやくコンニャク機能通過後の翻訳)に漬けたものだったそうだ。