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斧と女神のファンタジー ~伝説の斧が存在しない理由に纏わる馬鹿げた物語~  作者: 新人@コミカライズ連載中
第四章:ミズガルドの王

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エピローグ:縁

 ――ヨルムンガンドの死亡が確認されてから三週間。


 それを成した()()の捜索は打ち切られ、一連の事件は全て白金S級冒険者“屠龍”のジークフリートの功績として扱うと内々に決定された。


 その第一地区ギルド上層部の判断に、調査と捜索を一任されていた金級冒険者のアイギス・ティレスタムは当然の抗議を行った。


 しかし当時現場にいたティタニア・メイヴがギルドの決定を了承したことに加え、アイギス率いる調査班が重要な手がかりを掴めなかったこともあって最終的には了承せざるを得なかった。


 自らの無力感に苛まれながら、アイギスは第一地区と第四地区の境である大通り――通称、一四通りを歩く。


 約一ヶ月ぶりの休暇だが予定があるわけでもなく、ただ呆然と街を彷徨っているだけ。


 鎧ではない普段着に身を包み、メガネをかけているだけで誰も彼女が第一地区の議員だと気づきもしない。


 たまに声をかけてくる軽薄なナンパ男をあしらいながら、まだ調査を諦めきれないように街中を流れ歩いていると、いつの間にか日が傾き始めていた。


 朱色の染まりゆく街並み。


 通行人たちは皆が今日も呑気に自由を謳歌している。


 彼女の苦悩も、この街が抱えている潜在的な脅威の存在も知らずに。


 しかし、だからこそ彼女は此処を愛しているし、守りたいと考えていた。


 自らも生まれ育ったこの世界で一番自由な街を。


 決意を新たにしていると、彼女は今更ながら自分が朝から何も口にしていないことに気がついた。


 凛々しい見た目に反してお腹が可愛らしく鳴り、誰かに聞かれたわけでもないが頬を僅かに紅潮させる。


 自らを挟む建物群を少し見渡すと、視界の右奥に小さな料理店が目に入った。


 第四地区側の店だが、消沈している姿を知人に見られたくない今の自分にはちょうど良いと彼女は考えた。


 店内に入ると、厨房で新聞を読んでいる店主らしき中年男性とカウンター席に座って暇そうにしている店員らしき茶髪の青年がまず彼女の目に入った。


 客数も多くなく、これも今の自分にはちょうど良いと思いながら適当な席に座る。


「す、すいません……。何にしますか?」


 来客に気づいた店員の青年が注文を一拍遅れて伺いにやってきた。


 働きだして日が浅いのか、あるいは本業ではないのか、接客に慣れていないのが見て取れる。


「そうですね。何かおすすめはありますか?」

「おすすめ……だったら、最近出来た新メニューがあるんですけどいかがっすか?」

「新メニューですか……では、それをお願いします」

「ありがとうございます。トシさん、例のアレお願いします」


 青年が厨房へと向かって言うと中年男性は気だるげに応え、調理へと取り掛かった。


 客数の少なさもあってか、料理は十分ほどで彼女のもとへと運ばれてきた。


 見慣れない料理だなと最初は戸惑うアイギス。


 だが、萎んだ感情に反して一口二口と食は進み、あっという間に完食する。


 たまには馴染みでない店にも来るものだと苦悩を少し忘れるほどの満足感を得た。


「ごちそうさまでした。お会計を……」


 特に留まっている用もないので、そのまますぐに退店しようとするが――


「ん? 何か問題でもありましたか?」


 彼女は店員の青年が自分の顔を訝しげに見ていることに気がついた。


「その……少し浮かない顔をしてるので料理の方が口に合わなかったのかなと……。もしそうだったら勧めた手前、申し訳ないなと思って……」

「いえ、そんなことありません。すごく美味しかったですよ」


 そこまで顔に出てしまっていたのかと思いながら彼女は微笑を浮かべる。


 お世辞ではなく、本心からの言葉だった。


 対して青年は、自分の考えすぎだったのかとほっと安堵して続ける。


「なら、良かったですけど……料理とは別のとこで何かあったってことですよね? 大丈夫ですか?」


 ともすれば踏み込みすぎとも言えるほどのお節介。


 だが、彼女には青年が心から自分を心配してくれているのが分かった。


「実は……ずっと探している人が居るんですけど、なかなか見つからなくて……」


 だから彼女も具体的なことは言えないまでも、ついその本心を打ち明けてしまった。


「なるほど……探し人が……」

「はい、どれだけ探しても手がかりさえ見つからなくて……それで少し気落ちしてたんです。申し訳ありません。要らない心配をかけさせてしまったみたいで」

「こ、こちらこそ余計なお節介ですいません。でも、そうっすね……前に知り合いが言ってましたよ。人が在るべきように在れば縁は結びつくんだって。だからお姉さんもいつかきっとその人と会えますよ」

「在るべきように在れば……」


 青年の言葉が噛みしめるように復唱される。


「……って、すいません……何か偉そうなこと言っちゃって」

「いえ、ありがとうございます。おかげで少し気が楽になりました」


 そう言ってアイギスは青年へ深々と礼をする。


「おーい、ルゼル。ちょっくら皿洗い頼むわ」


 厨房から店主らしき声が青年の名前を呼ぶ。


 ルゼルさんと言うのか……と、アイギスはその名を心の片隅に刻んでおいた。


「うっす、今行きます! それじゃありがとうございました。良かったらまた来てください」


 お辞儀しながら急ぎ足で厨房へと向かう青年。


 彼の言葉に笑顔で応えたアイギスは店の扉に手をかける。


 在るべきように在れば縁は結びつく……。


 そう、この街が真に王を必要とするのならいつかきっと現れてくれるはず。


 なら自分は、此処がその者の在るべき場所として在る為にやるべきことをやればいい。


 決意を新たにした彼女は、そのために自分はどう在るべきかを思い描きながら再び街へと足を踏み出した。

これにて第四章は終了となります。

ここまで読んで頂いてありがとうございました。


そして、遂に書き溜めが尽きてしまいました。

書き溜めが無い状態で毎日更新を続けても碌なことにならないので、ここで一旦第一部完結として書き溜めを作るための小休止に入ります。

今後は一章分の書き溜めが出来次第、まとめて更新という形で投稿していきます。


少しの間お休みとなりますが、今後とも拙作をよろしくお願いします。


最後に、応援の意味も兼ねて下部にある☆☆☆☆☆で評価を入れてもらえると喜びます。

モチベーションにも繋がるので、何卒よろしくお願いします。

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