ごめんね、今は大好きだよ。
地味なこげ茶色に たまに白い粉なんか吹いていて
噛じると 歯にまとわりつくような ねっとりとした食感
のどが イガイガするような 甘さ
子どもの頃 ばあちゃんの作る干し柿が 大嫌いだった
おやつに出された時は 思わず がっかり
だって 何だかダサくて 年寄りくさいんだもん
それよりも しょっぱくて パリパリとした食感
うすしお コンソメ のりしお 色んなフレーバーに
目移りしてばかりで 選ぶのにもひと苦労
だけど ポテチ片手に ファンタを流し込む
この魅惑的な刺激に 勝てる子どもなんているもんか
干し柿そっちのけで わがままに 黄金コンビをねだると
ばあちゃんは それでも ニコニコしながら
これで買っておいでって お小遣いをくれたっけ
あの頃はごめんね ばあちゃん
そんな私も 社会に出て
久しぶりに会うようになった ばあちゃんが
何だか 小さく見えはじめた頃から
やっと 干し柿の美味しさが わかるようになった気がするよ
「ばあちゃん、干し柿もっとないの?」
いまさら ねだるなんて
ごめんね ばあちゃん
いくつになっても 孫は わがままだ
「来年は、もう少し多めに作っとくよ」
それでも あの頃と変わらずニコニコと
ありがとう ばあちゃん
いくつになっても 孫を 甘えさせてくれて
ばあちゃんの作った干し柿 今は大好きだよ
あと いくつ食べられるのかな?
あの頃はごめんね ばあちゃん
今年はお正月だけじゃなくて
その前にも 顔を見せに来るから
きっと 帰るから
一緒に裏山の渋柿を採りに行こう
作り方も教えてね
でもきっと上手くなるまで 時間かかるから
だから
長生きしててね ばあちゃん
あの頃はごめんね
大好きだよ ばあちゃん