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04-3 白い部屋で (3)


 「あはは。勇者なんてこっちの世界では要らないよ。なりたかったら、何かそれっぽい加護は付けれるけど、使う場面は絶対に無いね。いや、あっちゃ困るのよ。こっちでやってもらう事はね、楽しく幸せに長生きする事だけ。最後の『長生き』ってのが大事だよ。せめてあっちの普通の倍は生きてもらわないとね。」

 そんなに長生きしたら疲れそうですね。元の世界に戻ったら、親戚も友だちも皆死んでますよね。

 「いやねぇ。こっちの世界の人になったら、元の世界には戻れないから。今のうちなら戻れるけど・・・戻る?? 元の体に戻ったらそのまますぐに死ぬよ。えっと、元の体、見る?? 上から押しつぶされて、けっこう派手な状態。頭はぐちょっと潰れてて、お腹の中身はびちゃって飛び散ってて、骨もけっこう砕けてる。こりゃ、腕利きの職人でもミイラに出来ないんじゃないかなあ。」

 なんか、酷い姿みたいです。見ないでいいです。ミイラって何でしょうか。どんな治癒術師でも絶対に助けられそうになさそうですけど。

 「そう。ミイラってね、屍骸を生前の形に整えて長持ちするようにした物ね。時が経てば復活するからってね。ああ、想いだけで実際には生き返らないからね。」

 つまり、戻って死んで消えるか、この神様の世界で別の一生を送るか。どのみち向こうで暮らせないなら、新しい世界で生きる方が良さそうです。でも、なんで私なんでしょう。

 「なんでかって? まあ、望まないけど本人も周りも覚悟の上で死んだ者って、条件はそれだけだったんだけどね、けっこうあっちの担当の神様が気をつかってくれたみたいだね。あんた竜退治の英雄なんでしょ。それってあっちでは凄いコトらしいね。死んで正当な評価されないのは良くないから、せめて神の救済をってね。あ、こっちには竜はいないからね。」

 元の世界の神様の御配慮なら無駄にしてはいけませんよね。でも・・・足を踏み外して転んだ竜に潰されたけれど、それで私がドラゴンスレイヤーなんですか?


 「あの時の録画、見る? 録画って、場面の記録ね。ほら、立とうとして横に落ちてた剣を掴んでるでしょ。そこに竜が倒れて来たんだね。見た目はボロ剣だけど、本物のドラゴンバスターだったんだね。それで刺さっちゃったんだ。そんで・・・ちょっと早送り・・・剣の持ち主の隊長さんが竜退治の英雄という事になったんだね。実際にはその前に死んでるけど。実際に竜に大きな傷を付けたのはあんたともう一人。そっちの娘もこっちに送られて来てるみたいだよ。」

 竜に重い傷を付けたというと、竜の片目を潰したあの弓のお姉さんですね。召還勇士さん、手柄にはならなかったんですね。


 「その娘は、あたしとは別の神が担当してるから、詳しい事は判んないけど。ええっと・・・その子はこっちで生きなおすのを受け入れたらしいよ。まあ、お互い『長生き』するはずだから、そのうち会えるんじゃないかなあ。しっかしねえ。アンタもその子も、おとなしく話が通じて良かったよ。だいたい、あっちの世界の魂って、死んで神の前に来ると泣き叫んでいたり興奮して暴れてたりするらしいね。あっそうか、そうならないような魂を選んで送って来たんだね。きっと。」

 私は覚悟の上だけど、普通は突然死んだらたぶん混乱して暴れますよ。バステト様の世界の人って、死んだ後も冷静なんでしょうか。だから狙われて攫われてしまうのではないかしら。


 「それでさあ、こっちでやりたい事とか無いかなあ。それに合わせて適当な加護を付けるから。あ、長生きできなくなりそうなのはダメだからね。元と同じような女の子でいいよね。獣人っていないので、種族は人間限定ね。えっとね、魔法って無いよ。魔物はいなくて、せいぜい強い獣ぐらい。それも街の近くにはいないね。危険なのは盗賊とか悪人とか、人間っていう動物ね。そっか、村で暮らしてて街には行った事が無かったんだ。それであこち見て回って、いろんな物を食べたいって・・・もっと欲出していいよ。

 それじゃ、加護は全部強力なのにしておくからね。あと、味覚と嗅覚を高目にして胃腸も強化して、目も良くして、脚力も強くしておくか。あちこち旅するなら、言語理解も要るね。危険を察知できる力もあった方がいいね。あとは・・・病気耐性、迅速治癒、疲労回復、毒耐性・・・」


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