04-2 白い部屋で (2)
「平行世界って言うらしいけど・・・世界って実は一つじゃないんだよね。いや、国ってのと違ってね、普通は互いに行き来はできないんだわ。どこにあるかって事じやなくて・・・重なり合って同じ場所と時間を分け合っているというか・・・偉い神様とか特別な力が無いと重なってる事そのものが分からいので、ほかの世界は有ってもなくても同じことなんだよね。学者っぽく説明すると次元がどうのって話になるらしいけど、アタシもそっちは苦手なのよね。」どうやら難しい事は飛ばして、そのまま受け入れた方が良さそうです。
「それでね、ごく極たまに重なりをすり抜けて余所の世界に紛れ込んでしまう事があるんだよね。失せ人とか精霊隠しとか。そうするとね、元の世界では当たり前の力が行った先で知られて無かったりすると、それが特別な才能に見えるよね。そうそう、紛れ人とか漂着者って物語にあるでしょ。」
そういえば、紛れ人がもたらしたって言われている不思議な物がありますね。
「それから、前世の記憶にその世でない知恵を持って生まれた子供ってのも聞いた事があるでしょ。あれも、コレね。でもね。生きている魂が世界の障壁を越えるのは難しくてね、たいていは途中で壊れたりするんだよね。ところがね。死にかけた魂なら案外うまく壁をすり抜けられるって気づいたのがいるんだわ。そんでね、死んだばかりの魂をうまく誘って自分の世界に引き込むとか、わざと死にかけにしてかっ攫うとか、ロクでも無い方法を編み出したんだね。どこってねぇ・・・アンタのいた世界ね。召喚術とかってね。最初は怖々やってたんだけどね、アンタの所の神様がね、最初は勝手に喚ばれたお詫びのつもりだったんだろうけどね、あれこれ強い加護を付けたんだよね。そう、神の加護持ちの召喚勇者ってヤツね。」
確かに異世界から来た勇者が人外の力を揮うという物語は多いです。
「そしたらさあ、余計に召喚した者は役に立つって思われてね。まあ、召喚されたのが大切にされて幸せに長生きしてるんなら少しは許せるんだけどね、それが案外すぐに使い潰されてしまってて。召喚するのに慣れてしまったんだろうね。特にアタシの世界の人ってけっこう使えて手頃らしくてね、ここ3百年ほど、どんどん召喚してるんだよね。」
そういえば、勇者様の物語では、末永く幸せにというよりも、妖魔と戦って相討ちとか探索の果てに死んだという結末が多いですね。
「んでね。うちの主神がね、そっちの主神サマに文句を言ったんだわ。『召喚の途中に割り込めるなら、そこで止めてこっちら送り返せ』ってね。そしたらさあ、『どうせ死ぬんだから、こっちでもそっちでも同じだろう』って言い返されてね。それからなんだかんだあってね、試しに『そっちの死にかけ魂がこっちでは長生きする』って見せてやる事になったんだよね。それでその試しの候補者がアンタってこと。」
なんか複雑ですけど、これって神様の事情なんですよね。それで今度は私がこの猫の神様の加護で勇者になるんですか??