08-3 調達依頼 幻のフルーツをGETせよ(3)
突発クエスト「幻のフルーツを探して納品せよ」を完了。依頼のカンロウリって甘露瓜だったんだ。見た目は地味だけど、味も香りもちょっとお上品な感じで美味しい。そして、依頼主はなんと瓜蔓の精霊で、届け先はなんと水神様って。とんでもない関係ができちゃったみたい。水神様の配下って、シュウガさんは細身でクールで優しそうで。
シュウガさんたちは繭神様の祠の事を知っていた。桑畑に祠があった頃の事、移転した祠がその後置き忘れられていた事も。それから、瓜を育てていた松井さんのお婆ちゃんが、子どもの頃はこの桑畑のあたりに住んでいた事も。これって・・・繭神様の依頼からつながるチェーンクエストって事なのかなあ。そうなら、まだもう少し続きがありそうだね。
チェーンクエストっぽいので、繭神様の件の関係者のツルとタヌキにもSNSで一応は報告。すると、「神様が欲しがるような瓜、私たちにも食わせろ!」って。そして夕方に2人がやって来た。
瓜を食べながら、今日のでき事をくわしく説明した・・・というより説明させられた。
「しっかし、繭神様とか、なんでネコって、こういうのに声かけられるのかなあ。」ツルよ、そんなのは・・・たぶんあの猫耳女神様のせい~なんて言えないよ。「そんなのわからないよ。私がネコだから??」 じゃダメか・・・ははは。
「で、これって繭神様のクエストと繋がってるんだよね。きっと。」タヌキもそう思う? 「やっぱ、アタシにも声かけて欲しかったなあ。」タヌキ、精霊に会いたいんでしょ。そういうの、好きそうだよね。でも、見えるのか? って、なんで私は見えるのだろうか。バステト様がくれたとは思えないから、そうなると繭神様の仕業? だとしたら、タヌキやツルも神様や精霊が見えるのかなあ。
次の日の午後、松井さんの所へおじゃますることに。瓜のお礼がメインだけど、昔の桑畑と養蚕の事を知っている可能性が高いから。お礼に行くと言うと、母さんが煮物を持たせてくれた。
松井さんの家へ行って、昨日の瓜のお礼を言って、種子おばあちゃんに煮物を渡した。
「わざわざありがとうね。ところでさ、ネコちゃん、あんたあの瓜を神様にお奉りしたのかい?」いきなり訊かれた。
「わたしはね、昨日の夜ずいぶん変わった夢を見たんだよ。水神様のお使いというのが現れてね、瓜のお礼だってね。『水神様があの瓜をたいへん喜ばれた』ってね。白蛇の化身だって言うけれど、それがもう、細見で美顔の青年でね。」あはは、シュウガさんって、白蛇だったんだ。そう言われればそれっぽい。へぇっ、知恵があって腕も立つんだ。それで水神様から名前をもらったんだ。『秀牙』でシュウガなんだ。
「それでね。その横にいた男の子がね、わたしが子どものころに一緒に遊んだことがある子みたいなんだよね。その頃は変な子だと思ってたんだけどね、白蛇さまの子分らしい様子だったから、やっぱりウリ坊は人の子じゃなかったんだね。」あはは、ウリヅル君だね。そっか、ウリ坊って呼ばれてたんだ。
「子どもの頃はちょくちょく畑のあたりで見かけたんだけど、そのうちに見えなくなってしまってね。あの子は昔の姿のままだったけど、わたしはすっかりおばあちゃんになっちゃったよ。水神様がお好きなら、こからは味瓜を神棚にお供えしなきゃね。あの子が遊びに来てくれるかもしれないからね。」種子おばあちゃんって、子どもの頃は看える人だったんだ。
やはり、種子おばあちゃんはあの上篠の桑畑の横に住んでいたんだ。そして、子どもの頃までお家では蚕を飼ってて、絹糸も作っていたんだって。その頃の農家と農作業の様子をいろいろ教えてくれた。桑畑にあった繭神様の祠のことも話してくれた。
「そうだよ。桑畑には繭神様の祠があってね。ずっと昔にね、遠くの国から来た旅の商人さんがこのあたりで重い病気になってね、それを村人が看病したんだって。ちょうどその頃、このへんでは蚕に病気が流行っていて、村人が困っていたのを覚えていてれたんだね。次の年にその商人さんがまた来てね、その商人さんの故郷にある神社のお蚕さんを守護する神様をこちらへ連れて来てくださったんだって。」うわぁ、繭神様がこの村に来たいきさつもわかっちゃったよ。
「繭神様の祠ね、養蚕が盛んな頃は毎月お祀りしていたらしいけど、桑畑が減るとお参りする人もなくなって、わたしの頃にはあまり手入れもされていなかったんだよ。長くお世話になった神様をこのまま疎かにしてはいけないって、それで繭神様は元の神社にむお帰りいただくことになってね。そのあと祠は神社に移したんだよ。そうだね、神社の横の方、ネコちゃんが見つけた潰れた小屋みいなのって、それは元は祠だったものだろうね。」
どうやら、祠を移すのと神様を帰す順番が混乱したんだね。祠ごと神様を移動して、それから帰すというのと、神様を帰してから祠を移転するのと。種子おばあちゃんたちは、繭神様はとっくに帰ってしまってて、神社の裏の祠は空き屋だと思ってた。それで分御霊様があそこに取り残されたんだ。たぶんこれが正解。
松井さんの家の庭には桑の木が1本植わってた。「6月頃にね、黒い実がなるんだよ。子どもの頃はこれが楽しみでね。ちょっと甘いぐらいで、たいして美味しい訳じやないけど、時期になると食べたくなるんだよね。」蚕のためじゃなく、実を食べたくて植えてるんだね。「良かったら6月中頃に来てごらん。」って。
私事で想定以上に投稿の間が空いてしまいました。
あとしばらくこの調子で続くと思いますので、ブクマしたまま気長にお待ちいただると幸いです。