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08-1 調達依頼 幻のフルーツをGETせよ(1)


 夏休みの自由研究はこの市のあたりの養蚕の事をしらべてまとめることにしました。蚕を育てて繭から糸を取って布に織る。全体の流れは、確かお祖母ちゃん家の方にある博物館だっけ?で見たことがあるので、これは簡単にまとめられそうです。問題なのは、この市の養蚕の歴史。いつ頃からいつ頃までどのへんでどのぐらいどんな事をしていたのか。ひょっとして、今でもどこかでやってたりはしないよね。


 困った時の親頼み。夕食のあと、お父さんとお母さんに相談して作戦を立てました。まず図書館でひととおりの下調べ。たぶん町の歴史などをまとめた本や資料か何かあるはず。昔の地図や写真があるかもしれない。市役所の中に郷土資料室というのがあるので、ここにはきっと何かあるだろう。だいたいの時期とか場所とか規模とかわかれば、そこからたぐって行けそう。


 朝から自転車で出かけていろいろ聞きました。「昔このあたりで養蚕がおこなわれてたらしいですけど、いつ頃からいつ頃まで、どのへんで、どのぐらいの規模でおこなわれていたのでしょうか。」と。「学校の夏休みの研究にするんです。」と言うと資料をいろいろ探してくれました。

 郷土資料室には糸車や機織り機がありましたが、残念ながら市内の養蚕について書かれた物はみつかりませんでした。村が町になり、それがくついて市になって。その間に地域の細かな記録は受け継がれて来なかったみたいです。それでも、古い地図があって、その中には今の地図には無い記号が書かれていました。桑畑の記号です。私たちの小学校の近くにも桑畑の記号が書かれています。たぶんそこが繭神様の祠があった場所。前の道を通ったことがあるけど、なにか畑が残っていたような気がします。

 市役所ではいくつかアドバイスをもらいました。養蚕で作られた絹糸や布については、市の商工会に何か記録があるかもしれないです。畑の利用や作物については農協で何か判るかもしれません。


 そこで翌日は商工会と農協へ行っていろいろ聞くことにしました。ついでにちょっと回り道して、地図に桑畑の記号があった所へも寄ることにしました。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 学校の裏の道を山に沿って、自転車であたりを見回しながら走る。学校の周囲は住宅地だと思ってたけど、少し違う角度で見ると案外いろんな建物がある。戸建てのかたまりの間に鉄筋のマンションや会社か何かのお店らしいビル。ちょっと古そうで大きな家は昔の農家かしら。白い壁の倉もある。そしてその間に畑や田んぼがはさまってモザイクみたい。


 このへんから先が地図で桑畑の記号が付いていた場所。そのまま進んで少し行くと。家が途切れて草藪の空き地みたいな所がある。自転車を降りてあたりをチェック。桑畑の跡は残っている?


 草藪を透かして見ると、道に近いあたりは横長の凹凸があるから、ただの空き地じゃなくて畑の跡だね。きっと野菜か何かの畑。でも、もう畑として使われていないんだね。

 奥の方にはやたら不細工に茂った木が植わっている。何の樹かな? あぜ道の跡らしい所を通って近づいてみると・・・実が付いている。緑色だけど・・・これは柿だね。するとこれが果樹園の跡? 柿の木もしばらく手入れされていない様子。枝は高く伸びて茂ってて、折れたり枯れた枝もそのまま。その果樹園らしい所の先は、田んぼ1枚挟んで住宅地になってる。

 このあたりが昔は桑畑で、繭神様の祠はたぶんこのへんのどこかにあったんだろうね。それが果樹園や野菜畑になって、今は草藪。ここもたぶんもうしばらくしたら住宅地に変わるのだろう。そして誰も繭神様のことなど知らずにここに住む。


 振り返って草藪を透かしてみると、道ばたに停めた自転車の向こう、山すその所になにか角張った物がある。道標??お墓??


 道ばたに置かれていたのは大きな石でした。前側が平らに削られて、何か字が彫られています。ええっとととと『??申水??大?』・・・石碑なのかしら・・・これって右から読むんだよね・・・大でなく天かも・・・?申って神じゃないかな?? ってことは・・・


 「ここは水神さまをお祀りしているんだよ。下の畑へ山の水をここから引いてたんだ。」

 わお、誰か後ろにいる。

 そっと横目で見たら、低学年ぐらいの男の子がいる。で、誰これ? 近所の子じゃないよね。今どき着物着てる子なんて普通じゃ無い。藁草履だし。ってことは、妖怪か何かか・・・それとも神がらみ?? 知らんふりした方が良さそう。


 「なあ、ねえちゃん、おいらのこと見えてるんだろ。」 やっぱり怪しいものらしい。

 ちゃんと見えてるよ。なんでかわからないけど、たぶん、これってどっちかの神様の仕業だろ。

 「あんた、わかってて声かけたんでしょ。そんで、ねえちゃんじやなくって、呼ぶなら『ネコ』って。」

 「あはは、わりぃ。おいら、ウリヅル。」


 やっぱり、昔はこのあたり一帯は農地だったんだね。「このへん、夏は水が足りなくなるんで、田んぼにできない所は桑の木や豆や野菜を植えてたんだ。」

 「ところでさぁ。ネコ姉ちゃん、どっかにカンロ無いかなあ。昔はここの畑で作ってたんだけど。」

 カンロって何? 畑で作るって、作物・・・野菜か何か?

 「甘露って瓜。緑色で甘くて香りがいいんだ。」

 甘い瓜? 瓜って漬け物にするぐらいしか知らないよ。甘いって・・・スイカ?とかメロンは瓜の仲間だと思ったけど。

 「漬け物の瓜じやないよ。西瓜は甘いけど香りがね。西洋のメロンって、甘過ぎなんだよ。」

 ああ、そういえばなんだか少し横長で縞模様の瓜があったけど・・・でもあれって、そんなに甘くなかったなあ。

 「俵みたいな形のって、それはたぶん、まっくぁ瓜。あれほど長くなくて緑色が濃いんだ。ネコ姉ちゃん、どっかに甘露瓜無いかなあ。」

 瓜っていろいろあるみたいだね。どっかって、どこ探すの? お店で見た記憶は無いし。急ぎじゃないよね。ネットで調べたら出てくるかな? あっっ、私これから農協へ行くから、その時に聞けるかな。

 「えっと、おいら、だいたいこのへんに居るから。そう、そんなに急がないから、1個持ってきてくれるとうれしいなあ。」


まだしばらく途切れ途切れが続きますが、ブクマしたまま気長にお待ちいただけると嬉しいです。

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