表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/27

06-2 初クエスト (2)


 「特別クエスト発生。学校の裏山で謎の遺物を発掘せよ。依頼主は夢に出てきた着物のお姉さん。挑むのはネコとツルとタヌキの腐れ縁の3匹。」って、これいったい何ゲーム!!



 学校の裏の小山。昔はここに神社があったって聞いてたけど、そう思って見ると確かにそんな雰囲気。道の横のコンクリの上に登って、少し進むと崩れかけた石が階段のようになっている。そっか、下の道を広げるのに、下半分削られたんだ。神社の石段の跡。

 登った所は広場のようになっている。振り返って見たけど鳥居のような物は残っていない。そのまままっすぐ前に進むと、四角く削られた石が左右にある。狛犬さんがいたのかしら。その先のあたり、丸い石がいくつも見えてる。このあたり、穴が掘られてたり棒が立ってたりするけど、男の子たち、秘密基地でも作るつもりなのか。ここに神社の建物があったと考えると、夢に出て来たのは・・・あのあたりかな?


 大きな樹が倒れかかっているその影の方。藪が覆いかけている所。このへんかな? 藪影から透かして、狛犬がいたと思う方と鳥居があったと思うあたりを見て見る。神社の建物の大きさが分からないけど、もう少し奥かな?


 「おおっ、あそこの影。何かある。犬小屋の潰れたの?」

 タヌキ、神社に犬小屋は無いでしょ。でも藪の中、何かある。家にあった剪定鋏を持ってきて良かった。殺虫スプレーの範囲攻撃でヤブ蚊を制圧して、ガザガサ茂った低い枝を刈りながら探って行くと、潰れた小屋みたいなのが・・・積もった落ち葉の中は虫だらけ。女の子には辛いよ。スコップですくって横に除けて。下から出て来たのは何か、板と棒と。木が湿って腐りかけて、手で持つのはきついよ。「スライムが出そうだぞ。」不穏な事を言うのはツル。そんなら、何か魔法でも使ってよね。あ、火魔法は無しだよ。火事が怖いから。

 これって、壊れたお社? そうすると、やっぱり夢に出てきたのは神様だったみたい。夢で頼まれたのは、木の箱を探して蓋を開けること。板を持ち上げて、棒を引き抜いて、上から順に除けてゆくと、緑色に錆びたお椀のような物と汚れた皿が1枚。「おおっ!伝説のお宝だ!海賊王になるぞ。」って、ツル、それ違うから。

 その下には布に包まれた何か・・・腐りかけだけど、木の箱。とにかく明るい所へ運ぼう。「油断しゃダメ。ミミックかもしれないよ。」って、それも無いから。


 ずいぶんボロになってるけど、確かに箱はあった。「で、クエストの達成条件は、箱を開けることだよね。」そうだけど。「白い煙とか出ないよね。」って、タヌキ、変なフラグ立てないでよ。物語が違うよ。

 覚悟を決めて、周りにへばりついているスライムじゃなくてナメクジを払い落として、蓋を持ち上げる・・・開かない。

「紐があるよ。」 あはは、緊張する。紐は解けないから鋏で切ってしまった。それから、そっと蓋を持ち上げる。湿って張り付いているのを強引に開ける。腐ってる蓋が壊れた。


 白い煙は出なかった。化け物も出なかった。ふわっとそよ風が吹いた気がしただけ。そして、小さな声が。「ネコさん、ありがとう。これで消えずに帰れます。」

 顔を上げると、あの白い着物の女の人・・・神様? 頭から薄い布を被っている。その体がどんどん薄れて透明になって行く。「お友だちの、ツルさんとタヌキさんでしたっけ。お手伝いありがとうございます。お礼はあらためてさせていただきますね。」と、声だけが最後に残りました。

 箱の中にはボロボロになった布が1枚残っていました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ