平野奏:真実
元婚約者の一方的な、別れを告げられてから数ヵ月が経った。
回りは、腫れ物を扱うように、私に関わった。
私は、もう、何も考えれなかった。
季節が流れ、人生で初めて一人きりのクリスマスイブを過ごした次の日、チャイムが鳴り響いた。
確認すると、元婚約者の弟、寿くんだった。
招き入れると、同時に、彼は玄関先で、土下座をした。
唖然とする私に、彼は告げるのだった。
「もっと、もっと早く、伝えに来たら………ごめんなさい!!!」
「寿くん……!?顔をあげて?とりあえず、中に入ろう……?」
必死に説得、リビングに、通すと、彼は徐に私に告げた。
「昨日、僕の兄、在原稔は享年22で、この世を去りました。」
「ミノル……が?どうして、私にそれを……」
私は、捨てられた女だと言うのに。
そう呟くと、彼は苦しそうに顔を歪めた。
「僕が早く決断していれば…………兄が告げた婚約破棄は、病気がもう手の施しようもなく、死ぬ運命と決まってしまったため、奏ちゃんに迷惑をかけたくないからと、兄がでっち上げた、ものなんです。」
「病気……!?ミノルは、なんの病気に??」
「……………『ガン』です。大元の胃ガンを含め、複数併発しており、若く健康体であったため、進行が早く進んだ、と言われています。」
「ガ………ン……って、嘘でしょ?あの、ミノルよ?元気で病気なしが取り柄の………」
「事実、なんです。」
「なんで、教えて……」
くれなかったの?と続けようとした、私の言葉は遮られた。
「兄の強い、要望でした。でも、本当は、伝えるべきだった。兄に殴られようとも、伝えるべきだった。僕は、」
「ミノル……が」
「………………」
「ミノルは、私のことが、重荷だと?」
「そんなことは!兄は、闘病生活の中で、常に奏ちゃんを気にかけていました。自分の勝手な都合で、傷つけてしまって申し訳ないと。でも、もう会わない、と。弱い自分なんて見せたくないからと」
「…………ミノル」
それから、私は、寿くんから色々なことを聞いた。
そして、ミノルの最期も……
「私の幸せは……貴方と共にあったのに………!!」
平野奏は、唐突に知った真実に、久しぶりの涙を降らさした。