プロローグ・1建国史
本編は来月から始めます。
地球とは違う世界、
ファンタジーに出てくるような獣人やエルフ、さらにはモンスターも存在する世界に、ある帝国がある。
その国の名はラインファルト帝国、かつて存在した魔王から魔族を解放し、魔王 ヒルトラーを打ち倒した国である。
ラインファルト帝国の歴史は長く、1500年もの歴史を持ち、建国の経緯は、4人の戦士と英雄ロイド・ラインファルトの伝説として歴史に刻まれている。
かつて、大陸最大の国家ガミラ大皇国の辺境の領地を収めていたロイドは、皇都にて一人の女性と出会う、彼女は、ガミラ大皇国の第三皇女だった。
しかし、皇家の腐敗を正そうとした第二皇子に協力したがために、暗殺の危機にさらされ、第二皇子がその命を賭して彼女を城の外へと逃したのだ。
皇家と皇国上層部の腐敗、彼は、国からの重税に苦しむ自領の民の事を常日頃から憂いており、そんな中、更に税が上がると聞いて皇王に直談判するために皇都まで、僅かな手勢と共に二週間かけてやって来ていたが、皇女の話を聞いて、それは危険と判断し、皇都にて実情を調べ、皇女と共に自領へと戻る。
皇女の話は其れだけ重要な者であった。
皇王は色狂いとなり、後に悪女と呼ばれる魔女マローヌを寵愛し、国庫の金を貢いでいた。
大臣は私腹を肥やし、違法なはずの奴隷…其れも性奴隷を自らのそばに侍らせ、役人はそのお零れに預ろうと必死になり民のことは眼中にすら無い。
騎士団長も騎士とは思えぬ振る舞いで、汚職に手を染めていた。
其れらの話を聞いて、事実と確認した彼は、ある決心を固めていた。
自領へと戻った彼はまず、親友であり、風の魔術を得意とする騎士アレクと、土の魔術を得意とする恩師、ペネトに協力を依頼、二人は快く了承すると、直ぐに行動に出た。
アレクは、まず自らが率いる騎士隊100人を集め、更に自分の剣の師であり、火の魔術を使う元騎士団長、ダイスに協力を求める手紙を書いた。
ダイスは手紙に返事は書かず、嘗ての部下だった騎士80人と共にロイドの治める領地へと馳せ参じ、ロイドに自ら協力する事を伝えたとされる。
ペネトは、水と氷の魔術を得意とし、かつて氷の悪魔と呼ばれた妹に土下座し、協力を仰ぎ、二人はそれぞれの弟子合わせて80人と共にロイドに協力したと伝えられた。
皇国上層部は彼らの行動に気づき、問い質す為に使者を使わせるが、その使者は、有ろう事か、皇国に忠誠を誓うならば、毎月、奴隷を差し出すようにロイドへと告げた。
その瞬間、ロイドは、腰に刺してある剣を抜き、その使者の首を刎ねてしまう。
数日後、ロイドは皇国からの離反を宣言すると、隣接するいくつかの領地もロイドに同調した。
これに対し、皇国は五千の軍隊を派遣するが、ロイド・ラインファルトの領地の軍は僅か三百足らず、誰もが、ロイドの敗北を予想した。
皇国軍と、ロイドの軍は、ロイドの領地の端にあるハージの砦にて遂に戦端を開く。
ロイドの軍はひるむ事なく三日三晩勇猛に戦った。
ロイド自らも剣を取り戦い、敵の指揮官を数名討ち取っているが、其れでも数に押され、敗色濃厚と見られた。
ロイドと、四人の協力者、そして彼らに率いられた兵士たち、若者たちは、其れでも諦めなかった。
そうして、三日目の夕方に、ある異変が起きた。
最初に気づいたのは、皇国軍の一人の指揮官である。
その指揮官が、軍の後方へふと視線を向けると、地平線に、影が見えた。
彼は疑問に思っただろう、見えた影をよく見ると、軍勢で、増援の知らせなど、そんな話は無かったはずだからだ。
そして、直後、彼は戦慄した……その軍勢は、ロイドの軍にではなく、皇国軍の方へ、雄叫びを上げながら突き進んで来たのだ。
彼らは、辺境を治める各領主の連合軍であり、ロイドが戦いに先駆け、前以て使いを出していたのだ。
そして、戦いの結果は、誰もが予想だにし無いものだった。
辺境の領主達とロイドの軍勢は、合わせて千二百、そう、まだ約5倍の戦力差があったのにもかかわらず、皇国軍は敗退、ロイド達は、その後更に二回、侵攻してきた皇国軍を撃退し、反攻に転じると、皇国側の領主は、次々とロイド側へと離反、皇都の近郊にあるセレス平原と呼ばれる平原にて起きたセレス平原の戦いにて、皇国軍は壊滅し、ガミラ皇国は、皇王が民により殺害され、皇都の城壁に晒されたことにより、その終焉を迎えた。
ただ、悪女と呼ばれる魔女マローヌだけが何処かへと姿を消していた…。
其れからすぐの事である。
魔女マローヌは、北の山に住むと言われる魔族、その魔族の村へと現れ、自らを魔王ヒルトラーと名乗り、自らに従うよう告げたのは、そして拒否した魔族の長を喰い殺し魔族に対し、催眠をかけ、自らの手駒とし、更には、ガミラ皇国で集めた怨嗟の力を使い、魔力を高めたマローヌ改めヒルトラーは、北の山に住む莫大な数の魔物をも操り、世界を征し、自らが世界の長になる野望、酒池肉林を作りたい欲望の為に、侵攻を開始したのである。
そして、北の山に隣接するエルフの小国がまず姿を消し、大国と呼ばれた国も消滅した。
しかし、ヒルトラーの野望は、ロイド達が率いる軍隊により、潰えることとなる。
ロイド達はヒルトラーが、魔女マローヌであることを知ると、軍を率いて討伐に乗り出した。
そして、辺境の名前もない砦にて、魔王ヒルトラーの軍勢と対峙すると、砦に現れた白い竜により、その魔女が、特殊な力を持つ剣でなければ殺せ無いことを知らされると、ロイド達は、ではどうすれば良いのだと白い竜に問い、白い竜は、ロイド達をしばし見つめると、自らの牙を折り、ロイドへと渡す。
すると牙は、淡い光と共に変化し、剣へとその姿を変えた。
白い竜は、最後に、ロイド達にこう告げた、『人よ、選択は汝らに託す』そう告げた竜は何処かへと飛び立ち、ロイド達は、その夜、部下達に後を任せ、砦を出ると、ヒルトラーの居る城へと向かう。
彼らは急いだ、砦が陥ちる前にヒルトラーを倒さなければなら無い為だ。
そして、ヒルトラーの城へとついた彼らを、魔族が阻む、しかし、ロイドが、襲ってきた魔族の一人を斬ると、魔族は、ロイドに対し、倒れ際に『ありがとう』と呟いた。
ロイド達は、其れに驚き、その魔族を見ると、笑顔で事切れていた。
そして、他の魔族をよく見ると、魔族は泣きながら武器を構えていたのだ。
しかも、口々に、殺してくれ、助けてくれ、と呟いていた。
ヒルトラーは彼らが苦しみながら戦う様を見て、悦に浸っていたのだ。
ロイド達は怒りに震え、襲い来る魔族を、何とか殺さ無いように気絶させるなどし、ヒルトラーへと迫る。
ヒルトラーとの戦いは苛烈を極め、ダイスがロイドを庇い、重傷を負い、直後にペネトが、捨て身で突貫、土の魔術でヒルトラーを拘束し、そして、ペネトの妹、ペインが氷の魔術でヒルトラーを串刺しにすると、ヒルトラーも黙ってやられて居るだけではなく、レーザーを放ってきて、ペネトの頭部を掠める。
しかし、アレクがその隙にヒルトラーの背後に素早く回り込み風の魔術でヒルトラーの両腕を跳ね飛ばし、ヒルトラーが悲鳴をあげる。
そして、ロイドが、ひるむヒルトラーに対し、白き竜より受け取った剣を振り下ろし、決着が着いた。
ヒルトラーが死んだことで、魔族もヒルトラーの催眠から解放され、魔物も、ヒルトラーにより強化されていた能力が元に戻り、砦の兵士たちの奮闘もあり、魔物達は逃げ散っていった。
その後、領地に戻ったロイドは、新たな国を作ると宣言、民を守り、民と共に在る国を作りたい、彼はそう言って国作りに励み、そして、かつての第三皇女、アイラと結ばれ、今のラインファルト帝国を築き上げた。
「以上が、この国の建国の話だ、帝国騎士たる者、かつての英雄とまでとは言わないが、民を守る重職にある者として自覚を持って、職に励むように心掛けるように成らなければいかん、これから諸君は騎士の基礎から学ぶことになるが、此れだけは心に留めておくように」
【騎士は、勇気なくば騎士に非ず、誇りなくば騎士に非ず、虐げる者騎士に非ず、騎士とは、常に守護者であり、民の先頭に立ち、清廉である事を誓わん】
ラインファルト帝国騎士の宣誓より
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