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猫が招くとダレが言った!?  作者: 山神ゆうき
第一章 『アディアホ村まったり(?)生活』
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5・血だらけな私にミンナ驚いた!

フランは王国への道を走っていた。走っていたといっても、荷物を持っているので、そんなに速くは走れなかった。


「しまった!あの人達からのお礼は、『将来、魔女っ子ちゃんの巨乳を揉ませてください!』にすれば良かった・・・。まっいっか!店の宣伝はしたし、数年後来店したときに揉めば・・・。いや、その時はまたベルに怒られそうだな・・・。それに魔女っ子ちゃんが巨乳になるとは限らないし・・・。」


フランはそんな卑猥なことをぶつぶつ言いながら走っていた。ヨウジョが大きくなって(体も胸も)アジュウに泊まりにきて自分がその胸を揉もうとしているのを妄想しながら走る。顔がとてもニヤニヤしている。

しばらく走っていると、道の横に誰かがテントを張っていることに気付く。


「こんな昼間っからテントを張るなんて、重症の冒険者が避難の為に使っているのかな?」


フランは走っていた足を止め、お客さんの武器を道の端のほうに置きテントの中を覗いた。


「グゴー!グゴー!」

「グガー!グガー!」


フランが中を覗くと、上半身裸で筋肉質な男性2人が大の字になって大きなイビキをかいていた。そう、この2人はアジュウでビドゥを飲んでいた人であった。

この2人は酔いながら王国を目指していたのだが、眠くなってテントを張り寝てしまったようだ。


「お客さんの忘れ物を届けに参りました。血だらけになってごめんなさい。またのお越しをお待ちしております。」


フランは血だらけになった彼らの武器をテントの横に置き、起こさないように小声で言ってアディアホ村に戻る道を歩いて帰っていった。




ー(幕間)ー




「あの2人、何をしていたのだろう?」


アディアホ村に着いたフランは、帰る途中にコヒィとヨウジョに再び出会った。しかし、彼らは何かあーだこーだと議論をしており、彼女の事など眼中にないようだ。フランは自分の本能で『これは厄介事だ!』と思い、道を外れ2人に気付かれないように帰ってきた。


「まっいっか!自分で達成したクエストじゃないから納得いかなかったのだろう。うん!きっとそうだ。」


このように勝手に自分で結論を出し、アジュウがある方向に向かおうとした。


それにしても、とても凄い視線を感じる。フランは今、モンスターの返り血を浴びているのだから全身血まみれなのである。外に出ている村人の皆が心配そうな目でフランを見ているのだ。


しかし、フランが気になっている視線はそれではなかった。彼女が気になっている視線を言い表すなら、自分の事を敵と見ているような、危険な存在とみているような、そんな感じの視線だ。フランは"気になる視線"の方向を見てみる。するとそこには木の影に隠れるように、しかし体半分は見えている人物が2人いた。その人物は見た目が30代半ばの男性とその男性に甘えるように、男性の服にキュッと抱きついてる女の子であった。男性は私を警戒しているように少し睨んでおり、女の子は人形のように可愛く無表情であった。


服装からして、神父とシスターである。そう、彼らは最近アディアホ村に来て、使われていなかった村の端にある教会に住み始めた人である。


「どうも!こんにちは。」


フランは笑顔で2人に挨拶をする。


「「・・・・・。」」


2人は無言で頭だけ下げるとその場を急いで去っていった。

フランは頭の上に『?』を付けるほど疑問に思いながら2人が見えなくなるまで目で見送った。


フランは他の村人の血まみれである自分を見ている視線は気にせずに歩き出し、やっとアジュウの前まで戻ってきた。

そこまで時間はたっていないのだが、何故か凄く懐かしい感じになった。


「私が血まみれだから驚くだろうなぁ。・・・・・・。そうだ!良いこと思い付いた。」


フランは悪巧みを考えてる子供のように笑い、その良いことを実行に移した。




ー(幕間)ー




「セーラ神父様!セーラ神父様!」


緑髪でシスター服を着た目の赤い女の子、エティーラは神父であるセーラの服の裾をちょいちょいと引っ張り名を呼ぶ。


「どうしたんだ、エティ?」


人形のように可愛く無表情のエティーラに比べ、セーラは笑顔で言う。


「さっきの女性はとても危険な感じがします。あの人は私たちの計画を邪魔するでしょうか?」


「エティ?人を見た目で判断したら駄目だよ?大丈夫!我々の計画は密かに行うから、誰にも邪魔はされないさ。」


そう言ってセーラはエティーラの頭を優しく撫でる。エティーラは無表情のまま、『?』を表すために首を傾げた。


「我々の計画。きっとうまくいくさ。」


セーラはそう呟くと怪しく微笑み、大きな門のある教会に帰っていくのであった。




ー(幕間)ー




ガチャリ!


アジュウの扉が開く音がした。


「いらっしゃいま・・・。あっ!おかえり、フランさ・・・ま・・・・・・。ええっ!!」


ガシャーン!


ベルはお客さんが来たと思い、いらっしゃいませを言おうとしたが、フランだと気付いてすぐに挨拶に切り替える。その時のベルの顔が笑顔から徐々に青ざめて驚きの顔になり、持っていた皿をその場に落とした。ラジルも驚いた顔で見ている。


そう、何度も言うようだけど、フランの姿は全身血まみれである。そしてフランは苦しそうな顔をして腰を曲げ、右手は愛剣を持ちそれでも力なくだらんとしており、左手で右腕を押さえてる。これで、"瀕死なフリをしているフラン"の完成である。


「ふふっ、マズった・・・ぜ・・・。」


バタン!


フランは気を失うように目をゆっくり閉じ、力なく床へとうつ伏せで倒れる。


(やべっ!私、今日の床掃除をサボったから微妙に汚い!それに、息ができにくくて苦しい。)


↑これが今のフランの心の中の声である。


「フラン様!」

「フラン主様!」


2人は同時に叫び、フランのところへ来る。そして、ベルがフランを抱き抱えた。


(ふう、これでちゃんと息ができる。)


フランは安心して薄目をしてみた。ベルの顔が大きく見え、その目は涙目になっていた。フランは笑いそうになるのを必死に抑え、目を閉じ心を落ち着かせる。そして、自分が思う一番いい死亡フラグの台詞をドヤ顔で言う。


「もう・・・・・ゴールしても・・・(略)。」


そう、今のフランはこのあとベルに酷く怒られることを知らなかった。

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