2・私は巨乳が好きだとドウドウと言った!
フランが目を覚ましたときには厨房の奥の休憩室であった。
「いててて・・・。」
フランは自分の頭を撫でながら上半身だけ起こすと、ベルが黒い笑みを浮かべて仁王立ちをしていた。
「フラン様?なんで私が怒っているのか分かりますかぁ?」
ベルの目は笑っていなかった。
「私がお客さんの胸を揉んだから・・・・。」
フランは拗ねた子供みたいに頬を膨らませ顔を少し横にして目をそらして言う。
「なんでそんなことをしたんですかぁ?」
フランが視線をベルにやると、ベルの顔はまだ黒い笑みを浮かべていた。
「お客さんの胸が巨乳だったから・・・。」
フランは頬を膨らませて不機嫌そうに言う。ベルはフランの胸を見る。フランの胸は少し膨らんでいるだけで巨乳ではなかった。次に自分の胸を見る。ベルの胸は美乳であり、綺麗な形なのだが巨乳ではなかった。
ハァ~。
(私にもっと胸があったらなぁ・・・。)
ベルはそう思い深くため息をした。
(って、ダメです!例え私の胸が大きくても絶対に揉ませません!)
ベルは変な妄想を打ち消すかのように、首を横にブンブンと振り、フランを見る。
「今度からそんなことをしたらいけませんよぉ?分かりましたかぁ?とーくーにー!お客様の胸を揉むことは絶対に駄目です!」
ベルは左手を腰にあて、右手の人差指を立て上下に動かしてフランに注意をした。
「はぁい。反省します。」
フランは頭を下げ、反省したフリをしていつもベルの説教は終わる。
ーーーーー
バン!
フランは厨房から食事処に出るドアを思いっきり開けた。飲食をしていたお客さんの人数は食べ終わり、会計も済ませたのかフランが退場する前よりも減っていた。
「私は巨乳が大好きなのだ!!」
フランは両手を腰にあて、大きな声で宣言した!
「いきなり来て、なに宣言しているんだよ!フラン女将様、ちゃんと働け。」
一人でワタワタと働いているラジルはフランを睨み付けて言う。ただ目付きが悪いだけと思いたい。(普段は優しい目付き。)
「はぁ~い。」
フランは少し不機嫌そうにジト目で言い、他に仕事は何が残っているのか見渡す。
ラジルは誰も座っていないテーブルやカウンターを布巾で拭いていた。
ベルは表に出てきていないので、奥の方で食器や布巾などを洗っているのだろう。
フランはテーブルを1つ1つ見ていった。すると、筋肉ムキムキな男性2人が座っていたテーブルのコップが残ったままであった。それを片付けようとテーブルに近付くと、壁に大きな斧と大剣が掛けられているのに気付いた。
「ねぇ、ラジル。ここのお客さんはトイレに行っているの?」
フランは恥じらいもなく平然と大声で、少し離れた場所で作業をしているラジルに訪ねた。
それを聞いていた男性のお客さんは、「ブフッ!」とお冷やを吹き出した。
ラジルは小走りでフランのところまで来て小声で言う。
「お食事をしているお客様がいるから、そんなことは大声で言うな!それにここのお客様はもう会計済ませて帰っていったぞ!」
「ふ~む。じゃあ、これは忘れ物かな?」
フランは壁に掛けられている武器を指差す。ラジルはフランが指差す方向を見た。
「そうだな。あれは忘れ物だな。忘れ物ボックスに入れとくか?」
ラジルは冷静に両手で重そうにまずは大きな斧を持ち、忘れ物ボックスまで持っていこうとしていた。
「あっ!私がお客さんに届けるよ!まだ近くにいるかもしれないし・・・。」
フランは閃いたように手をパンと叩いて言う。閃いたら即!行動。フランはラジルから大きな斧を取り、壁に掛けられている大剣を左手で持つ。それを見ていたお客さんは再びお冷やを「ブフッ!」と吹き出した。
「ベル!私はちょっと出掛けるから、ラジルと一緒に表の方を頼む。」
「あいさ~。いってら~。」
フランはレジカウンターの下から1yの剣を取り出して、厨房に向かって大声で叫んだ。厨房から顔を出したベルは右手で軽く敬礼をして表へ出てきた。
そして、左手には大きな斧と大剣を持ち、右手には自分の愛剣を持ち店を出たのであった。