20・そして騎士団の卵はイキイキとして旅立った!
前回のあらすじ!
サトウ・ハタロウ「ハァ、ハァ、ハァ・・・。おっ?俺を見つけるとは、大したやつだな!えっ?前回のあらすじ?スマン!今は逃走中だ!では、さらばっ!」
ー(幕間)ー
「ドラゴンの・・・肉?」
「うん!とっても精力が付くのだよ!だから、入隊試験の人達にはいい食材かな?っと思って・・・」
「待って!そのドラゴンの肉を何処で買ってきたのぉ?」
「ううん。買ってないよ。昨日の夜、倒してからさばいた。」
ベルは固まってしまった。まさか、昨日の夜出掛けたのはドラゴンを狩ってくる事とは思わなかったからだ。
「ベル?ちょっと手伝ってくれないかな?私が、大体同じ大きさにさばいたから、そこのフライパンで焼いてほしいのだけど・・・」
「えっ?ええ・・・」
ベルはフランから視線をそらして、再び肉を見てみた。聞いてみたところ、フランは「ちゃんと一人分に分けているからね!」と言っていたが、明らかに肉は大きかった。
「あ、あの・・・。フラン様ぁ。これ1つどのくらいあるのぉ?」
フライパンで肉を焼きながら、ベルは横目でフランを見て言う。
「あっ!これ、500グラムだよ!!」
「ご、ごひゃくぅ~!?」
ベルはフライパンを持ったままひっくり返りそうになった。500グラムの肉がだいたい100人分くらい用意してあるのだ。
「そうだよ!入隊試験の人達には頑張ってほしいからね」
フランは肉を焼きながら、ウィンクして言った。
ー(幕間)ー
朝食の時間になった。食事処へと降りてきた宿泊客やラジルは、豪華な料理に開いた口が塞がらなかった。
「さぁ!フランちゃん特製のリザードクロスドラゴンのステーキだよ!食べて!食べて!」
フランは厨房から顔を出して、ニッコリと微笑みながら言った。
「お、おい。これって、ぼったくられたんじゃねぇか?」
「そ、そうだな・・・。おーい!女将さーん!」
入隊試験の人達は驚いたあとに、顔を青ざめさせて大きな声でフランを呼んだ。
「うん?どうしたんだい?」
フランは不思議そうな顔をして厨房から出てきた。
「なぁ。俺達を騙してないか?こんなにもてなして50、40yなわけないだろ?後から、『本当は150yでした。』って言わないだろうな?」
自分の中で『騙された!』という怒りが既にあるのだろう。入隊試験の人の一人が少し強い口調で迫ってきた。
「ううん。50yと40yだよ?」
「嘘をつくんじゃねぇ!このくらいのドラゴンの肉といえば、80yくらいあるだろ?」
「まぁ、確かにその位するけど、その肉は私からの『入隊試験頑張って!』という応援なんだよね」
「応援だぁ?」
「うん。だ・か・ら、サービスなの」
頭に血が上っている入隊試験の人達にフランは笑顔でウィンクをした。
「ほ、本当に40、50yでいいのか?」
怒っていろいろ言っている男性の横にいる、茶髪の男性が恐る恐る聞いてきた。
フランは「うん」と言って首を縦に振った。しかし、入隊試験の人達は未だに信じられないらしく、驚いた表情でそれぞれ顔を見合わせた。
「どうしたの?食べないの?早く食べないと冷めちゃうよ?」
「お、おう。じゃあ、いただくぜ」
フランが急かすので半信半疑な人達は、戸惑いながらもそれぞれ席に着いた。
目の前のステーキを見る。分厚くて、それでもこんがりと焼けていて美味しそうだ。
ゴクリ!・・・・・グゥ~。
席に座るととてもいい匂いがして、その匂いを嗅ぐと空腹のお腹が『早くそれに食いつけ!』と言わんばかりに鳴る。
先ほど怒っていた男性は、ステーキを見た後にフランの顔を見る。それに気付いたフランはその男性に対して、ニッコリと微笑む。
それを見た男性は再び肉を見て、ナイフとフォークを手に取る。
「ええい!どうにでもなっちまえ!!」
男性はやけくそになり、ナイフで肉を切る。肉はとても柔らかく、肉汁を出しながら簡単に切れ、中は僅かにピンク色をしていた。
口に入れると、とろぉ~っと蕩けるような感じがした。
「う、うめぇ・・・」
男性や他の入隊試験の人達は、ガツガツと肉を頬張り始め、あっという間に全員完食したのであった。
完食をした入隊試験の人達は、疲れは完全に取れ、元気に王国へ戻るために身仕度を始めたのであった。
例の男性は支払いをする直前まで、何度も何度も「本当に40、50yか?」と繰り返していた。
ー(幕間)ー
「女将さん。お世話になりました」
アジュウの外に出たみんなは、フランの事を疑っていた男性が頭を下げると、全員フランに頭を下げた。
「いいって、いいって。それよりも、入隊試験は大変だと思うけど頑張ってね!」
「おう!がっちり体力も付いたし、不合格になる気がしないぜ!」
男性は右腕で力こぶを作って見せた。フランは一人一人顔を見ていき、全員元気になっていると分かると笑顔でとても満足そうだ。
次にフランはニイとオレットを見て、右手で親指を立て、ウィンクすると、2人も笑顔で親指を立てた。どうやらこの3人は友情が芽生えたようだ。
(よし!俺が騎士団長になったら、絶体、この人を俺の妻へと迎えに来るぜ)
そのフランを見て、『騎士団長に俺はなる!』と言った男性は頬を赤くして、そう思っていた。こちらの方は恋心が芽生えたようだ。
「気をつけていってらっしゃいませ!」
フランが深々と頭を下げると、ラジルとベルも頭を下げた。
「全体!回れー右!!」
フラン達のお礼を聞くと、男性の一人が大声で掛け声をかけ、皆一斉に回れ右をして、歩きだした。フラン達は入隊試験の人達が見えなくなるまで見送っていた。
「フラン様ぁ。余ったドラゴンの肉はどうしますかぁ?」
「う~ん。それなんだけど、村の皆にお裾分けをして、残りはアジュウの期間限定のメニューとして出そうと思うんだけど・・・。あと、ドラゴンの骨、鱗、爪は市場に売るよ」
「さすがフラン女将様。普段からお世話になっている村人達にお裾分けをするとは・・・」
フランの提案にラジルは感動しているようだ。
こうしてフラン、ラジル、ベルの3人は村人達に一人分500グラムの肉を持って、分散して家々を回り、お裾分けをしたのだ。
ー(幕間)ー
「おおー!でっかい扉だなぁ・・・」
フランは、ドラゴンの肉を道具屋と武器屋に持っていき、最後は教会に住んでいる人の分だけになった。残り二個のドラゴンのステーキを持って、大きな扉の前に立って見上げていた。
門の高さは恐らく3メートルくらいだろう。アディアホ村で1番大きな門である。
フランはしばらく見上げた後、ハッ!と我に返り、門を力強くノックした。
ギギギ・・・。
(私的に『ゴゴゴゴ・・・』と思ったのだが・・・)
大きな門とは裏腹に意外と軽いドアのようで、開くときの音が想像と違い、フランは苦笑いをした。
ドアが少しだけ開いた後、その僅かな隙間から10歳くらいの女の子がヒョコっと顔を出して、訪問してきた人物の様子を伺っていた。
この女の子をフランは知っている。前に神父と一緒にフランの様子を見ていた、緑髪でシスター服を着た目の赤い女の子、エティーラだった。
人形のように可愛く、しかし心の奥底に闇を持っているような、そして僅かに哀しさを持っているような無表情の女の子である。
「こんにちは!」
コクリ!
フランが挨拶をしても、ただ頭で1回、頷くだけであった。
「えっと・・・・・」
無言のエティーラを前にして、何て言っていいか分からなくなったフランは、気まずそうに一瞬だけ目をそらした。
「あっ!ドラゴンの肉をお裾分けに来ました。どうぞ、神父さんと一緒に食べてね」
「ありが・・・とう、ござい・・・ます」
ドラゴンの肉を受け取ると、エティーラはお礼を言って、『他に何か?』と言わんばかりに無表情でフランの顔を見ている。フランもエティーラの反応がよく分からず、見つめていると『バン!』という音ともに門が閉まってしまった。
フランは、訳が分からずにしばらく、その場から離れられなかった。
「セーラ神父様。セーラ神父様」
「どうしたんだい?エティ」
門を閉めたエティーラは貰った肉を持って、トコトコと奥の部屋にいる見た目がおじさんのセーラの所まで来て、セーラの裾を引っ張っていた。
「これ。例の女性から・・・」
「ほう!」
セーラを見上げているエティーラが精一杯手を上に伸ばし、貰ったドラゴンの肉を見せていた。
「あの女性はやっぱり危険な存在?」
エティーラは首をかしげて、セーラの解答を待っていた。
「大丈夫だよ、エティ。我々の計画は誰にも邪魔されないさ。」
不安そうなエティーラを余所に、セーラは笑顔でエティーラの頭を撫でていた。




