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猫が招くとダレが言った!?  作者: 山神ゆうき
第一章 『アディアホ村まったり(?)生活』
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1・私が田舎娘ってダレが言った!?

王国から南に数十キロ。山、草原、森が周りにある自然が豊かなアディアホ村。

アディアホ村にある建物はというと、数件の煙突付きの民家、村で一番大きな建物の宿屋兼食事処、赤い炎を外にある釜戸から出している武器屋、美しい女性が売り子をしている道具屋、早朝暗い時間から賑やかな声が飛び交う小さな市場、誰も住んでいない様に見える古びた教会があるくらいである。ちなみにこの周辺には観光名所もない。


周囲にいるモンスターはこの大陸の中では弱いモンスターしかいないので、冒険者や賞金稼ぎ、騎士団などはあまり訪れることはなかった。


たまに来るとしたら、簡単なクエストを受けた初心者冒険者や、美味しい野菜を求めてきたりする人がほとんどである。あとは1年に一度だけ騎士団が入隊試験で買い物に来るくらいだ。


『休暇などで静かにのんびりしたい方は是非!お越しくださいませ!』


というキャッチコピーが似合いそうな場所である。


そんなのんびりと時間が動いているような村、アディアホ村の宿屋兼食事処の名を『アジュウ』という。アジュウとは古代文字で『小さい』という意味だ。


小さいという由来とは違い標準な大きさの店で、食事処には8人で囲んで食べれるテーブルが5つ、カウンターには椅子が7つ置いてある。(女主人が町育ちなので、小さいと思っていた。町にはもっと大きな宿屋とかあるのだ。)



宿泊できる部屋は2階に8部屋あり、シングルが4部屋、ツインが4部屋で各部屋にはシャワーがついている。

宿泊代は晩御飯、朝食付きで1泊50y(ヤマー)である。yはこのヴァスーの世界共通通貨であり、1y=約100円といったら分かりやすいだろうか。ちなみにアジュウで働いている人達の部屋も2階にある。


現在はちょうど昼であり、アジュウの食事処には上半身裸のマッチョな男性が2人、8人テーブルに向かい合って酔っぱらう泡の出る山吹色の飲み物、ビドゥを飲んでいた。近くの壁には彼らの持ち物であろう大きな斧と大剣がかけられていた。


他にも男性が数名、カウンターやテーブルで食事をしている。


ここで働いている人物は3人。黒執事服を着ており、ワインレッドのスポーツ刈りの22歳の男性『ラジル』は片手にお盆を持ち、その上には料理と飲み物がありそれを運んでいる途中だった。


紺と黒のメイド服を着ており、髪型はコバルトブルーのポニーテールをしている19歳の女性『ベル』は上半身裸のマッチョな男性を横目でチラチラと見ながら、頬を少し赤くして使い終わった食器をそそくさと奥の厨房へ持っていく。


「お会計は7yになります!」


オレンジのジャンパースカートを着ており、スカートに白いエプロンをしている茶髪のセミロングの17歳の女性はレジで、食事を終えて会計待ちをしていたナイスバディな金髪女性に、そろばんみたいな道具で出した合計を見ながら金額を言う。

金髪の女性はすでに出していた財布から7yを出してレジの女性の前に置いた。そして、財布を短パンの後ろポケットにしまうと、帰るために店の出口へと歩いていた。女性が数歩歩いた時であった。さっきまでレジ打ちをしていた女性はいつの間にかその金髪女性の後ろに立っており、素早く両手を女性の胸のところに持っていった。


「ひゃんっ!」


とても美人でナイスバディな女性の声は無意識の内に出ており、声を出した女性は何が起こったか分からなかった。しかし、ハッ!と自分が胸を揉まれていることを理解し、揉んでいる手を振り解く。そして、自分の胸を押さえて胸を揉んでいた犯人を恥ずかしそうに赤面しながら睨んだ。


そう女性の胸を揉んでいた犯人、オレンジのジャンパースカートを着て、両手をパーにして自分の顔近くまで持ってきている健全な(?)女性が今回の主人公。名は『フラン』という。


フランは女性でありながら、巨乳な女性は胸を揉むのが好きなのだ!


『決して自分の胸がないから羨ましい訳ではない!決っっっして自分の胸がないから羨ましい訳ではない!』と、フランに胸を揉むことを聞くと必ず言う。


ただ、女性の大きな胸の触り心地がとてもいいらしい。


「ゲヘヘヘ!ネェちゃん、いい乳してるねぇ。」


そう言いながらフランはゆっくりと一歩、一歩踏み出した。顔近くまで上げた手の指、1つ1つが違う動きをしている。


「ち、ちょっとぉ。誰かこの状況をどうにかしてよぉ。」


困った顔の金髪女性は周りをキョロキョロと見渡す。すると、食事やビドゥを飲んでいた男性達は真剣な顔をして全員立ち上がり、フランや金髪女性の周りに集まる。金髪女性はこれで助かると言わんばかりの万勉の笑みに変わる。


「「「「「可愛い女性と美人女性の絡み。本当にありがとうございます!!!」」」」」


と男性はまるで打ち合わせをしていたかのような(勿論、打ち合わせはしてない。)息ぴったりに台詞をはき、90度頭を下げた。


「なんでよー!!!」


金髪女性はその男性の行動に怒りながらつっこむ。どうやらフランと女性の絡みは好きみたいだ。


「さぁ!その胸を揉ませてくださーい!」


周りの応援も(?)あり、フランは調子に乗り金髪女性に近付く。


「い、いやぁ!!」


店の出口へと歩いていた金髪女性は、いつの間にか出口近くの壁まで誘導されていた。もはや逃げ場などない。絶体絶命のピンチである。


パァ~ン!


と、とても薄い鉄製の物がぶつかった音がした。そうそれは、フランの頭に銀色のおぼんが当たった音である。フランは少し涙目で頭を押さえる。


「なにをしているんですかぁ~?フラン様ぁ~?まさか、お客様の胸を揉もうとしてませんよねぇ?」


フランは後ろを振り向くと、フランの頭にぶつかったおぼんを持ち、黒い笑みを浮かべているベルの姿があった。


「あっ、いや・・・ちょっと待って!私は別になにもしてないよ。」


フランは顔を真っ青にして自分の無実を証明するかのように両手を真上にあげた。


「そうなの~?じゃあ、何で女性のお客様は涙目で男性のお客様は顔を真っ赤にしているのかなぁ~?」


そう言いながらベルは黒い笑みのまま、周りを見た。すると、さっきまで赤くなっていた男性のお客の顔はみるみる青くなり無言で各々自分の席に戻り座ってまた何事もなかったかのように飲食を再開した。


「ああ、もう!私は女性の巨乳が好きなんだ!そうだよ!揉みたいんだよ!別に女性同士じゃん!何が悪いんだよ!?」


フランはベルの言葉に逆ギレをして自分の巨乳好きをアピールした。


「お客様に手を出したらいけないって言ってるの!!」


ベルはそう言って再び銀色のおぼんでフランの頭を叩いた。(※さっきはいい忘れていたけど、おぼんは叩くものではなく食べ物など運ぶための道具です。良い子のみんなは真似をしないでください。)


ベルのおぼんがヒットした直後、フランは目を回してその場に倒れてしまった。


「不快な思いをさせて申し訳ございません。こちら、お詫びの一泊無料券になります。どうぞ、次回ご利用ください。」


ベルは何度も頭を下げ、無料券を差し出す。


「いえいえ、そんなご丁寧に・・・。ありがとうございます。」


さっきまで嫌がっていた金髪女性の顔は、ベルの完璧な態度で笑顔になりついお礼を言った。

そして、何事もなかったかのような感じで店を出ていくのであった。


「ラジル。店の仕事を任せてもいい?」


お客さんを見送ったベルは振り向いて笑顔で言った。


「大丈夫だ。任せろ。」


ラジルはそう言って親指を立てた。それを確認したベルは倒れているフランの襟を掴むとズルズルと引きずって奥の方へと消えていった。

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