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幼児退行  作者: 藤原
真実の昔
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 加藤は自宅へと帰ると、計画の策定を始めた。

 パソコンそして、ファイルの資料とにらめっこしている。加藤は頷くと、キーボードを叩き始めた。

 文字を打つのに迷いはなかった。加藤の頭の中に全てがはまった。

 はまったから一気に計画書を作成することができた。

 朱莉は加藤の書斎には入ってこない。気を使っているのだろうか。それとも、その書斎のドア周辺から入りにくい雰囲気が醸し出されているのだろうか。現在の加藤にはそのようなことを考える思考の隙間は存在していない。あるのは計画の概要。それだけだった。まるで何か怪物に取り憑かれたように加藤はキーボードを打ち続けた。加藤が尿意を催しキーボードを打つことを中断させた時には、時計は三時を示していた。加藤が書斎に篭ったのは午後八時なので、都合七時間なににも目をくれず資料とキーボードに向き合っていたことになる。すさまじい集中力だ。

 加藤が書斎から出てトイレに行き、そのついでにリビングにある冷蔵庫のお茶を持っていこうと思ったので、リビングに行くと、朱莉も起きていた。


「やっときてくれた。私ずっと待っていたんだよ? 身体は宝。だから、さ大切にして欲しいんだよ。どんなものを差し置いても、私よりも、研究よりも、命を除く全てよりも翔也くん自身の身体をね。だから、無理しちゃダメ。今日は寝ようよ。だから待っていたんだよ」


 朱莉はホットミルクを飲んでいた。その目にはたしかに疲労の跡もあった。しかし朱莉は起きていた。愛する加藤にたった一言を言うために。


「そんなこと言うなら自分の体の心配をしてくれよ。俺に自分の身体を優先しろっていうのなら、朱莉だって自分の身体を優先してほしい」


「なら、寝ようよ」


 朱莉は加藤の手を掴んで寝室へと加藤を引っ張った。

 加藤はそれになされるがまま従った。加藤は最低だ。なぜなら朱莉と約束したことを忘れているからだ。そして、手を引かれている段階でそのことに気がついた。


「朱莉ごめん。夕飯作れなかった、今からでも食べる?」


 朱莉はやっと気づいたと、頰を膨らませてしまった。


「いや、今日は遅いしいいよ。朝ごはんを作ってくれると嬉しいかな。君の料理は心に響くんだよ。最高のスパイスは気持ちとも言うけどさ、君の料理は素材とか作り方がどうとか言うことじゃなくて凄く暖かいの」


「光栄だね。朱莉にそんなに褒めてもらえるなんてさ特に料理でね」


 朱莉はいつのまにかか頰を膨らますのをやめていた。代わりに顔がほんのり赤くなっていた。


「ありがとう朱莉、これからも一緒に……ね」


 朱莉は尚のこと顔を赤くして目を加藤から逸らした。そして小声で


「ずるいよ。君のそんなところすっごくずるい」


「俺はいつまででも俺だよ。朱莉だっていつまでも朱莉でいればいいんだ」


「そんな言葉を言えるところずるいよ。なんで私の心をそんなに持っていくの? やっぱり君には勝てないなあ」


 朱莉は諦めの言葉を垂れ流したか、悲観はしていないし悲しんでもいない。むしろ加藤に対してより恋しく愛おしく思うことができているほどだ。


「俺だって朱莉にはいつもドキッとさせられるし、ずっとそうでありたい」


「うん……ありがと。行こうかベッドにさ。落ち着いた状態で一緒に寝るのは久しぶりだよね。ゆっくりとできそうだよ」


 朱莉は顔を下に向けたまま。そんな朱莉を加藤は顎をクイっと上に持ち上げた。

 

「つっ!?」


 朱莉の声なき声だった。


「ごめん先に謝っておく」


 と加藤が朱莉の耳元で囁くと、朱莉の顔に近づいてゆっくりと己の唇と朱莉の唇とを近づけた。そして目を閉じるとゆっくりと接触させた。

 加藤に朱莉の柔らかい唇の感覚が伝わってくる。これは朱莉も同様。

 次に体温。そして、互いの唇の感覚が同化すると、互いに息をゆっくりと吸う。

 そのまま唇をゆっくりと開けていき、加藤からだった。朱莉もここまで強いものは初めてで戸惑っていた。しかし朱莉は加藤に身を任せた。加藤の近くにいられることが嬉しかった。一緒にいることに意義を感じた。

 深夜だと言うのに、寝たいはずなのに、頭など疲労で回っていないはずなのに、朱莉は様々な考えが巡っていた。

 加藤も緊張しているが、頑張ってる。

 互いの口に互いのものが入り込み、互いの感触を完全に理解した。 これだけで、二人は結びつき以上のものを手に入れた、ような気がしていた。


「行こうか、ベッドに」


「うん」


 二人は短い会話とともに、 ベッドルームに向かった。階段を登る前に、加藤は朱莉をお姫様抱っこして登った。

 ベッドルームに入り互いにベッドに着くと、そこからは大人の時間だった。




















 ここから全てが始まる。俺も、いや威厳を出すために一人称だっていつまでも「俺」のままではいけない。

 俺は、いや私は那月を絶対に目覚めさせよう。目覚めさせなければならない。たとえどんなことがあっても。どんな批判に晒されようと、殺されかけてもだ。私は止まらない。全てを踏み台にして最愛の妻を守りーーそして、那月を救ってもう一度笑って過ごす。もう二度と後悔などしたくないし、しないように努力しよう。

予約投稿は本当に便利です。重宝していますよ。今回の話は実は本年度の三月に書いているんです。

さっさと投稿しろという意見があったら謝罪します。ですが僕としては更新を途絶えさせない方が大事であると考えましたのでこのような状態になっております。

さて、そろそろ……というか、この話で過去編は一応終わりです。全くもって締まりのない過去編だったかもしれませんが(笑)次回からはいよいよ現実に戻ってきます。やっと主人公が出てくるんですよ。和人君ですね。そして次の章が終わりますと完結となる予定です。文量は未定ですが、最後までお付き合い頂けると幸いです。

次回の投稿についてですが、クリスマスに一つもしくは二つの特別エピソードをあげる予定です。残念ながらリア充ではない作者の書いたリア充の物語です。どうぞご期待ください。

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