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幼児退行  作者: 藤原
真実の昔
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解析

「……教授、貴方ですら那月を見捨てような真似をするのですか」


 半ば絶望に近い声を出した加藤の表情は、曇っているようで、一寸先は闇である事を感じさせる。もちろん、加藤本人もそう思っているし、信頼の厚い教授に裏切られたという感情も加藤の心の中に渦巻いている。


 それは、勝樹も同じで、勝樹の場合は、家族である父親が一歩間違えれば、命を落とすどころか、国家級の大犯罪者として歴史に名を刻む事になりかねない事をしているのだから、錯乱しているのだ。


「私たちにできることはないの?」


「あると思うか?あるなら聞かせてくれよ……」


 勝樹は声を絞り出した。これでもかというほど暗いものだった。


「成り行きに任せるしか無いのか。くそっ!!」


 加藤は声を荒げ、机に拳を振り下げた。机からドンッと音がなり上に乗っている食器からも甲高い音が鳴った。

 朱莉は、気持ちが高揚している加藤を落ち着かせようと、後ろからそっと、そして優しく抱きしめた。加藤はなされるままだ。そして、力が抜けたのか、椅子に座り込むと、顔を伏せて涙を流し始めた。


「ええいままよ!!!」


 勝樹は突然叫んだ。その一言に加藤は涙も止まり勝樹の方に振り返り、呆然としている。


「ええいままよ、ってお前そりゃこんな時に言う言葉じゃないだろう!なんでこんな時になるようになる的な自暴自棄な表現使ってるんだよ」


「俺にも分からん。だが、なんか大丈夫な気がしたんだ!」


 勝樹はある種の開き直りを見せているのだ。それは気丈な振る舞いというわけでもなく、一周回って思考が少し残念になってしまっただけ。だが、事態はそれほどにまで悪いことを示したということでもある。

 そして、朱莉は笑ったのだ。勝樹の突然の発狂に対して。ついさっきまで、悲痛な顔をしていたのにである。加藤もそうだ。そういった意味では、勝樹の突然の行動は間違いであったとも言い切れない。

 無論、勝樹の思考が若干おかしくなったということは否めない。

  であっても場の雰囲気を多少なりとも改善させたのだから、冷静なろうという意味では良いことである。果たして、勝樹がそれを意図して行ったのかは加藤にはわからない。ただそのように感じた加藤はただただ、勝樹に心の中で感謝をしていた。


「さて、勝樹が突然叫んで俺も冷静になれそうだ。とりあえず、大学行くか?」


「でも、大学に行っても何をするのかな?」


「勝樹、教授のパソコン解析可能か?」


 勝樹は腕を組んで天井を見上げ、何かを思い出しているようだ。


「……俺の知り合いにそういう電子機器の扱いに長けた奴がいる。だけどそいつが協力してくれるかは分からない」


「それってあいつのことか?」


「あー、多分翔也の想像している奴で間違いない」


 加藤は一瞬表情を曇らせた。


「あいつか……ちょっと大変そうだな」


「ねえ、その知り合いの人って誰なの?」


 朱莉が頭の上に疑問符を浮かべて聞いた。すると、勝樹が苦笑いしている。


「そいつはな大学の一部の人間には有名なんだよ。工学部の研究者で、プログミングの専門家みたいなもんなんだよ。本業はプログミングじゃなくて、金属なんだ。でも、多分プログミングの方は天才的らしい。趣味でかなりクオリティの高いゲームを簡単に作るくらいにな」


「そこまでならそこまであなた達が苦笑いすることはないと思うけど?」


 朱莉は疑問の表情を浮かべた。


「そこまでならな。問題はここからだ。そいつは、屈指の変態兼オタクでもあるんだ。それでゲームを同人活動を通じて売ってるんだが、それが面白くて、大学の生徒でゲームにも通じるオタクは必ずそいつを信仰しているんだ。そして、教授のパソコンの解析依頼を出したら、今回は緊急だからすんなりとやってくれるかもしれないけど、そうじゃなかったら、少し朱莉さんに迷惑かけるかもしれない。だけど頼む!絶対体には何もないから。気持ち悪いだけだからその時は頼む!」


 勝樹は頭を下げて、頭上で手を合わせている。加藤もそれを見て、


「俺からも頼む。その時には朱莉に協力し来てもらわないと、俺たちも大変なことになりかねない!」


 と必死の表情であった。加藤は内心怯えている。何度もあのような事はしたくないと。


「なんか分かんないけどわかった!」


 なんとか納得した様子の朱莉に二人は安堵した。


「それなら、今から行くぞ。連絡はしなくてもあいつはどうせ今も研究室にこもって研究しているだろうからな」


「そうじゃなかった時のために一応俺の方から連絡しておこう」


「すまん翔也。助かるよ」


『今から少し会いたいんだが、時間は大丈夫か? 用件? その場でないいいたくない。……そうか、すまない。場所は何時もの所でいいんだよな?

 そうか、分かった』


「少しは俺の話も聞けよ」


 勝樹は口を尖らせた。だが、加藤はその言葉も無視した。


「今からは俺の車で行くぞ」


「なんかあったのか?」


「そっちの方が、セキュリティ的に安全だというだけだ。一度行ったことがあるからすんなりと通してくれるだろう。通ったことのない車だと通るよが大変なんだよ。それで、今から向かうのはあいつの家だ。今そこにいるらしい」


「そんなに、すごいのか?」


「一度大学の教員関連の事で招かれたことがあるが、まあなんというか一般人ではない事はすぐに分かったよ」


 それだけしか加藤は言わなかった。


「それじゃ行くぞ」


 その言葉に二人は立ち上がり加藤の家に向かい、そこに停めてある加藤の車に乗り込んだ。

 その車は、セダンでそこそこ値段も張るものであったので乗り心地も良い。だが、加藤はサングラスをかけている。朱莉はニコニコしている。勝樹は溜息をついている。ここから想像できることは一つの事象しかなかった。


「それにしても車運転するときは何でサングラスなんだよ」


「眩しいからな。目が開けられないんだ。それよりも少し飛ばすからあまり話しかけるなよ」


 そう言うと加藤は、アクセルを踏み込みスピードを上げる。周りの車を次々と追い越して行くために、勝樹は警察に捕まられないかと少し不安にもなってにいた。それは加藤らしかぬスピードの出し方であったのも又事実であった。

 10分程で目的の場所には到着した。車の目の前には大きな門、そして建物があった。洋館、数奇家作りというわけでもない。ただ豪邸ということだけははっきりと勝樹にも分かった。そのまま通り、三人は車から降りた。達樹は迷うことなく進んで行く。

 どんどん地下に潜っている。そして、一枚の重厚感のある扉の前に来ると立ち止まった。


「ここだ」


「ここの先にあいつがいるのか?」


「間違いない。よければ入るぞ」


 加藤は扉をノックして入った。そして、その部屋は驚きの空間でもあった。正面はモニターで埋め尽くされている。そばにあるテーブルには、大量の紙やノートで埋め尽くされて、その隣を見ると、顕微鏡や薬品がある。壁には大きな本棚が据え付けられており、中には所狭しと専門書や研究に関連する資料が並んでいる一方で反対側の本棚にはザ・オタクということを強調するように、ライトノベル、画集、円盤が置いてあり、その横の小さな棚にもラバーストラップなどのグッズが並べられている。百人いたら百人とも異質な空間と回答する空間であった。


 モニター正面の椅子に座っていた男は加藤たちが入って来ると立ち上がり方加藤たちの方を向いた。


「ようこそ、僕の研究室へ。要件はもう聞いているよ。要求は……」


 そう言って男は朱莉をちらりと見た。見られた朱莉は悪寒を感じていた。何か嫌な予感がすると本能的に訴えていた。たが、そんな朱莉には目もくれないで近くにある棚を開けると、一着の服を持ってきた。


「これをきてほしい。そしてら、隣の部屋に来て写真を撮らせてほしい。それが今回の要求だよね。あ、写真は個人情報的にダメって言うのならそれでも構わないよ」


 気遣胃と言えるものをしたが、朱莉の表情は明らかに引きつっている。というのも渡された服に問題があるのだ。ーーメイド服。

 それが、朱莉の渡された服だったのだ。


「えっと……私にきてほしい服というのはそれ…ですか?」


 言葉を詰まらせ顔の筋肉をなるべく動かさないように感情が露わにならないように言っているが朱莉が不快であるのは明らかだった。


「二人とも……後でゆっくりと話そっか」


 笑顔で加藤と勝樹に言うが、その笑顔が得体を知れないオーラを出しておりそれが二人を萎縮させている。


 朱莉は渡されたメイド服を手に持つと、ゆっくりと歩みを進め隣の部屋へと移動した。


「さて、とそれでその仕事のブツは?」


「ここだ。全くあんまり朱莉にはしないでくれよ。で、紀基それはうまく解析できるのか?」


 ーー紀基。それが彼の苗字だった。


 紀基は渡されたパソコンを見ると、電源を押しコードを繋いだ。すると、モニターに様々なプログラムが表示されている。そこに書かれていることは加藤には全くわからないことでもあった。

 紀基はそれを見ると二人には目もくれず言った。


「おそらく可能だね。だけど、いいのか?これをみたら平和な世界には戻ってこれないかも知れないんだぞ?」


「そりゃお互い様だ。そんなものの解析を引き受けている時点で十分紀基だって普通の世界に足ついていないだろう」


 勝樹は鼻で笑った。


「確かにその通りだね。僕はもう普通の何も知らない無垢な一般人には戻れないだろう。だけどね、それは使い方次第でもあるからね。ま、何を言ったとしても僕は君たちには協力しようとは思っているからそこは安心していいよ」


 紀基は実に軽快な口調であった。

お久しぶりです。例によって僕はこれが更新されている時どのような状況に置かれているかは分かりません。幸せだといいんだけどなあ。そして、このあとがきを書いているのは2018年十一月初頭です。予約投稿って本当に便利で助かってます。今もちょくちょくと息抜きに書いてあたりするんです。一体いつまで過去編は続くのか分量は未定です。ただしそれが終わらば最終章となります。ここも長くなってくるでしょう。当初百話乗るかなと思っていたんですが、今の調子だと超えそうです。

さて、本編と長い後書き兼生存報告(2018年11月現在)を読んでいただきありがとうございます。これからも奮迅して参りますのでどうかよろしくお願い申し上げます。


追伸

本日(3月2日)更新分で昨年予約投稿した分がつきました。しかしとりあえず数話分はストックがあるのでご安心ください。

そしてペースを上げられるか否かの報告はもう少しお待ちください。

最後にこれからも今作をよろしくお願いします。

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