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幼児退行  作者: 藤原
真実の昔
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変革

 出てきた料理は、味噌汁とご飯と言う和食そのものだった。だが、加藤にはそして、勝樹にはそれがとても美味しいものに感じられている。


「ね! 言った通りだったでしょ? 私の料理美味しそうでしょう。美味しいに決まってるよ。だって、翔也君のために沢山練習したんだから」


「朱里ちゃん凄いね。すごく美味しそうだ。やっぱり俺も結婚したほうがいいのかな。そしたら、こんなに美味しいご飯食べられるのかな?」


 勝樹の問いに朱里は少し考えて言った。


「それはあるけど、相手をちゃんと選ばないとはもっとダメだと思うよ」


 勝樹はその言葉に頭を垂れた。加藤はその様子を見て苦笑している。テレビからは相変わらず単調なニュースが流れていた。今日も平和であることを示す唯一のものといってもいい。


「今日も平和だな」


 加藤は言った。その発言に、二人も頷いた。

 と、勝樹の電話が鳴った。


「すまん」


 そう言い勝樹は電話に出た。電話に出て十秒もしないで勝樹の目が変わった。電話の主は勝樹の父親だった。その声は加藤にも少し聞こえてきた。


『すまない。幸せに暮らせ』


 加藤にこの言葉の真意は全く分からない。当然、勝樹もだ。その為に、勝樹は吠えた。


「何言ってるんだ!どういうこと説明しろ! あ、切りやがった。あのクソ親父」


「どうなってるんだ?」


「分からん。ただ、またあの親父どうしようもないことやろうとしてるのかもしれない。嫌な予感がする」


「嫌な予感って大げさじゃなないのか?」


「だと良いんだが……」


「勝樹くんのお父さんって面白い方なのね」


 朱莉はクスリと笑った。


「まあ他人から見たら少し変わった人だとは思う」


 加藤は否定しなかった。そして、三人は談笑している。空気は決して重くない。やはり、加藤と朱莉の結婚という事が重くさせてないことに寄与しているのは疑う余地はない。三人の会話の側でテレビからも音はひとりでに出ている。日々のニュースを伝えているはずだ。


 加藤は立ち上がると窓を開けて外に出た。手慣れた手つきだ。外に出ると、加藤は大きく伸びをして深呼吸をする。加藤の朝食後の日課の一つだった。


「いいよな、あんな気楽なことできて」


 勝樹は頰をついている。傍目から見れば勝樹もかなりと言っていい程にお気楽な体勢だ。しかし、朱莉はあえてそこに触れることにはしない。それが大人の対応というもの。友達付き合いというものだからだ。


「今日はずっとこの天気なのか?」


「あぁ、今日は昨日と違って温度もかなり上がるらしいぞ。いよいよ、夏本番って感じだな。それと、近所の迷惑になりかねながら中に入ってから話してくれよ」


 勝樹は不満気だ。苦情を入れられてその対応をするのは勝樹だから当たり前の反応でもある。

 加藤は申し訳なさげに中に入ると、すまないと言って謝った。


「テレビ変えてもいいか?」


 その後も談笑していた所で勝樹は聞いた。別に朱莉も加藤も異論はないのでそのように応えると勝樹は番組を変えた。


 だが、番組を変えて流れてきたのはその時間帯にその局でやるはずのない番組なのだ。それに勝樹は目を見開いた。


「また芸能人が不祥事でも起こして釈明会見でもするのか?」


 加藤は少しうんざりした様子だった。だが、勝樹は「あれを」と震えながら指を指していた。


 加藤が画面を見ると、そこに写っていたのは見覚えのある人物だったのだ。勝樹が震えるのもわかる。加藤はゆっくりと目線をテロップの方に移した。


『国家級テロ、政府転覆。まもなく声明発表』


 このテロップに加藤は絶句した。朱莉はパニックになっている。


「何……なんなの?」


『我々はこの国の政府を愚かであると断定した。我々には抵抗し、革命を起こす権利がある。確かに法的には内乱罪というものがあり国家転覆、つまり革命は犯罪という扱いになる。しかし、そうであっても我々は選挙をもってしては変えることのできないこの国に絶望しこの革命を起こす決意をしたものである。

 我々は共産主義にも独裁主義にしようとしているわけではない。だが今一度国民には考えて欲しいのだ。今のまま日本が停滞するのか、新しい日本になるために未来のために全てを構築し直すのかを。

 もちろん現状維持という選択肢はあって当然だ。そして、その考えをする国民の方が多いというのであれば我々は身を引こう。

 そこで我々の行いたい事、つまりは公約をここに発表したいと思う。だが、これは国民と我々との契約であり、それを成すための道標になり得るものであるという観点から、ただの見栄をはった人気取りのためのものではない。この国のことを、国民のことを第一に考え、時に未来を優先したりもした。結果として、今の世代に不利になることも多々生じることになるかもしれないという結論に達したものもある。だが、それが数年後、数十年後どのような結果をもたらすのか、そして、他の政策ではいつ効果がでるのか。そこを注視してこの国を任せていただきたい。我々の名は、日本の翼、である。声明は以上だ』


「……なんだよそれ」


 勝樹は声を絞り出すのが精一杯だった。


「勝樹……あそこにいたのはおじさんだよな?」


 勝樹の目は泳いでいる。混乱している。心の中でもグルグルとざまざまな思考が絶えず張り巡らせれている。


 なぜ?どうして?あれはそもそも父さんなのか?


 次々と噴出する疑問。勝樹は声を絞り出すことが出来たのは加藤が声を発してから10秒ほどたってからだった。息を大きく吸う。何の意味もない事は分かりきっている。でも勝樹はそれをせずにはいられなかった。認めたくなかったのだその事実を。

 父親が国家転覆という事をしでかした、という事を。


「多分父さん……だとは思う。でも、確証はない。それに喋っていたのは」


 そこまで言うと加藤も頷いた。彼の表情もまた混乱して事実を直視したくないように見える。加藤の知り合いもそこにはいたからだ。その人物は恩師とも言える。


「教授がいる。俺のゼミの教授だ。俺に様々な協力をしてくれた恩師だ。尊敬もしてるし、ついていきたいとも思っていた。なのに、なのに!!」


 加藤は吠えた。その目には涙が浮かんでいる。

 加藤にとつては那月の意識覚醒の可能性が低くなったに等しいのだ。そして、加藤にも勝樹にも教授も父親の真意はわからない。


「それで何をするんだ?」


 勝樹は意識していないうちに携帯電話を手にとっていた。そして、それの液晶パネルを操作して耳に押し当てていた。何をしているかなど一目でわかる。そして、その相手すらも。


『父さん……なぜだ。母さんはそこにいるのか?

 いきて帰れるんだよな?』


『すまない。いきて帰れる保証はない。母さんはいない。母さんは海外に取材に行っている。

 勝樹、お前は最高の息子だよ』


 それだけだった。


「意味わかんねぇよ……」


 勝樹は笑うも、それは薄気味悪かった。

 “絶望感”が色濃く感じられる表情で顔色も悪い。あまつさえ身体がフラフラしている。今にも倒れてしまいそうだ。傍から見ても非常に危険であることは明白だ。加藤は勝樹の体を支えると、近くにあるソファに座らせた。その時の勝樹は力なく座り込んだ。

 小声で、意味がわからない…、と呟いてもいる。

 加藤も自分の知り合いに連絡をしようと試みる。


『教授、なぜこのようなことをするのですか?』


 繋がり加藤は山ほどある聞きたいことはあったが、それを喉の奥に堪えて一番知りたい部分を端的に尋ねた。


『一言で言えば私は絶望したのだよ。この国に。これが成功したら妹さんには全力で援助しよう。もちろん私も手を貸す。

 すまないな加藤くん。許してくれ』


 そう告げられると、通話は途切れた。

お久しぶりです。

さて、またまた予約投稿であります。この頃の僕はおそらく二次試験前で殺伐としていることでしょう。そして、何もなく、つまり、浪人もなくいけば更新ペースは三月もしくは四月からあげることができるということを意味しています。何だかんだ過去編も長くなってきているので、よろしくお願いします。

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