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幼児退行  作者: 藤原
目的の旅
52/104

己の目的 中編

「久しぶりだね。田中和人君」


 この一言に衝撃を受けた和人。当然だ。いきなり現れたからだ。驚くなという方が無理があった。


「君は今なぜ、と思っているだろう。答えは簡単だよ。私の研究に役に立つからだ。そして、計画に役にも立つ。そもそもこの施設はそのために存在しているのだから。

 長話もなんだから早速初めようか」


「まて、何をするんだ?」


 和人は色々聞きたい衝動を抑えて一番かになることを聞いた。


「何をするか…それは君自身で確かめるといい。

 君がしたことの代償は体で覚えてもらわなくてはならない。これは、加藤所長の言葉でもある。あの人には色々反論したいこともあるが、この言葉に関しては賛成だ。さて、懲罰を始めよう」


 そして始まったのは懲罰とはとても言えない代物だった。


「どうだ?体を持って償うとはこういうことなんだよ」


 冷酷なまでに鈴木の声が響く。その声は和人を恐怖という名の絶望に突き落とすには十分すぎるほどだった。


「さて、まだ何か喋れるのかな?喋れるなら感想を聞きたいな」


 軽い笑顔を見せて鈴木は言った。平然としたその姿は何も感情を抱いていない。和人は意識は朦朧としていたものの加藤所長よりもヤバイ雰囲気を醸し出していることは感じることができた。


「あ…お、おれ…をこん…なことして……なに…したい?」


 掠れた声だった。しかし、今の和人の状態ではその声を出すのもやっとだった。


「私は感想を聞いているだけれどね。それにしても本当に声を出せるとはね。その状態で。驚きだよ。やはり君の精神力は本物のようだ。

 それだけでも研究としては上等。いいものが見られたよ。ありがとう」


 鈴木はそう言った。しかし、その言葉は人間にする感謝というよりも、実験で使用されるモルモットに対する感謝しかないようなものだった。


「さて、私の懲罰も終わりだ。すぐに回復はするから安心したまえ。それではまた会えることを楽しみにしているよ」


 そう言って鈴木は満足そうに部屋を出て行った。和人も鈴木が部屋を出て間もなく意識を失った。




「…ここは?」


「やっと起きたか。俺を2時間も待たせるな。お前大丈夫か?体に何も問題はないか?」

 

 義孝は和人の意識が戻るや否や質問責めにした。しびれを切らした和人は言った。


「俺の質問に答えろ」


「すまない。そうだなまずは現状を知りたいよな。ここは病院のベッドの上だ。お前放課後懲罰だとかなんとか言ってどっかに連れてかれたろ?それから時間的には5時間。今は夜の9時をちょうど回ったくらいだ。

 それでこれには答えてほしい。

 何をされた?」


「痛かった。それだけは覚えてる。でも、それ以上は何も…」


 そう言って和人が立ち上がろうとすると和人は自分の体に起こった異変に気がついた。


「義孝…足が動かない」


「え?そんなバカなどういうことだ?」


「田中君の言った通りですよ」


 義孝でも和人でもない声が病室にした。


「なぜこんなところにあなたが?」


 義孝は驚いた表情をして聞いた。


「そんな驚いた顔をしなくてもいいですよ。君には一応言っておこうと思いましてね田中君」


「何を?この動かない足と何か関係あるのか?」


「ええそうです。君には懲罰を受けてもらいました。おそらく記憶はないはずです。それもそのはずです。今回君に懲罰を加えたのは脳なのですから。脳を直接刺激することによって物理的にではなく神経から直接ダメージを加えさせたのですよ。だから体のダメージは最小限になるはずでした。

 しかし、鈴木君が少しばかり調子に乗りましてね、すこしばかりやり過ぎてしまったようなんです」


「それはつまり?」


「もっと噛み砕いていうと君の足を動かしている部分の脳を傷つけてしまった。いや、脳というより脊椎といったほうがいいのか…。

 いずれにせよそこを傷つけてしまったのです」


「そんな…それじゃ俺はもう一生歩くことは…」


 和人は涙が溢れて出そうだった。

 

「そんなことはありません」

 

 加藤所長は断言した。


「それを回復させる薬はあります。君たちから得た大量のデータを基に開発した薬です。一応モルモットでの実験は済んでいます。しかし、人間ではまだ…それでも飲みますか?」


「飲みます。飲ませてください」


「わかりました。おそらくこれを飲めば明日には機能も戻っていることでしょう。それで話はお大事に」


「まて、それだけを言いに来たのか?」


 義孝が濃厚な殺気を放って聞いた。加藤所長は平然と扉を向いて答えた。


「はいそれだけです」


「ならもう一つ。脳にまで手を出してここでは一体何を研究しているんだ?」


 加藤所長は口角を微妙にあげて答えた。その顔からはなんとも不思議な気が感じられた。悲しみ、絶望、希望、安らぎ、不安、喜び、憐れみ…数えたらきりがないほどに。


「それは君たち自身が確かめるといい。そうすれば全てがわかる」


 そう言って去って言った。


「どう思う?和人」


「どうも思わない。とりあえず俺は治るということがわかっただけで今はいいのさ。

 とりあえず今日は休みたいよ。なんだか疲れた」


「そうか…明日には良くなっているといいな」


 義孝は和人とのやりとりを終えると足早に自室に戻った。


今年最後の投稿となります。

来年もよろしくお願いします。

そして、この話で10万字を突破します。長かったですが、これからも続いていきますのでどうぞよろしくお願いします。

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