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幼児退行  作者: 藤原
裁判と自由
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迷い。

 和人は弁護士に質問をした。


「仮に控訴したとしたら第二審で判決が変わ

ると言うことはあり得るのでしょうか?」


 弁護士は短くゆっくりと言った。


「恐らくそれはない。

 下手をしたら入所の期間が長くなる可能性がある。


 例えば、今日の判決では、16年〜17年年の入所期間だったが、もしかしたら次の判決では17年と決められるかもしれない。


 これは一例だしどうなるかは分からない。

 ただ一つだけ確信を持って言えることは、君の刑が軽くなることは絶対にない、ということだ。これはしっかりと覚えておいてほしい」


 これらを踏まえて判断してほしい。私は弁護士だ。被告人を守るのが仕事だ。

 だからもし君が控訴するのであれば私も全力を尽くそう」


「ありがとうございます。

 控訴するかどうかは少し考えさせてください。

 確か30日以内に決めればいいんですよね?」


「いや二週間だ。

 二週間以内に何もしなければそれで刑は確定になる。

 それまでにしっかりと考えておいてくれ」


 弁護士はこう言うと席を立った。


 そして和人は気になっていることがあった。


 それは美香はどんな判決が下されるのかと言うことだった。


 その美香の判決は明日下される。

 その裁判を和人は傍聴しようと考えていた。

 その夜は色々な感情があってよく眠ることができなかった。


 そして裁判の時間になった。


 美香は少し疲れた表情をしていた。

 何かあったのか?こう思った。


 裁判でいろいろと検察や裁判官それに弁護士から質問されている時もいつものような元気がなかった。


 そして判決が言い渡される時間になった。


「主文、被告人藤野美香を未成年矯正施設に

 入所させるものとする。


 期間については16年から18年。


 ただし態度によっては延長も可能です。

 延長回数に制限はありません」


 和人はなぜ自分より美香の方が重いのかと思っていた。


 そして裁判の後美香に聞いてみると、「私は和人とやった以外に少しだけひったくりをしていたの。だからかしらね」


美香は自嘲気味に言った。その顔は、悲しそうだった。自分の人生の何分の1かは施設で過ごさなくてはいけなくなったのだ。正気でいられる方が少ないだろう。


 そして和人はなぜこんなに長い期間知り合い

 に会えずに過ごさなくてはならないんだと思いこんでいた。


 数日後、学校から正式に通知が来て退学になった。


 分かりきっていたことではあったが複雑な気分だった。


 そしてそのまま、控訴しないと弁護士に連絡をした。


 弁護士はその際に


「本当にそれでいいんだね?


 私がどうこうというよりは、君はその選択で本当に後悔しないんだね?」と聞いたので和人は


「俺は後悔はしません

ありがとうございました」と答えると


「そうかそれなら手続きをしておく」といっ

 た。


 和人はこれで本当に引き返すことができないと思った。


 そのあと美香に会わないか?と連絡を入れた。

 二人とも10年近く外と遮断される。


 出来るうちに思い切り遊ぼうといってきた。

 和人はその誘いに乗ることにした。

 まずは今公開されている、大人気のアニメ映画を観る。


 このアニメ映画は歴代の興行収入の記録に残る大ヒットの映画だった。


 その後にゲーセン行ったり、ボーリングにカラオケで歌ったりした。


 とにかく色々なことを三日かけてやろうと言った。


 美香は承諾した。


 遊んでいるときには、二人ともただのカップルにしか見えなかった。


 それも、仲の良さそうな…ただ一つ違ったのはもう少しで外と二人の若者にとっては途方も無い期間遮断されてしまうことを除いては。


 そしていよいよ施設に入所する二日前となった。


 和人は自分の荷物を整理していた。

 そして予定を確認した。

 明後日の朝一番に、警察署に行く。

 そこから施設に送られる。


 これが予定だった。


 日付をみると恐らく美香と一緒に送られるのだろう。


 そう思った。


 そうしてついに施設に送られる日となった。



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