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幼児退行  作者: 藤原
情報と学校と
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挫折と失敗

「君たちなどに私は負けないし負けるつもりもない。

 もっと頭を使って考えてください。

 単純な手ではこの施設のことを知ることもできないし私を止めることも失脚させることもこの施設を潰すこともできません。

 次はどのような手口なのでしょう。

 楽しみに待ちますよ」

 

 一人の男の低く穏やかなしかし、威圧感のある声が所長室にずっしりと響いた。

 そう加藤所長の声だ。


 和人達の映るモニターを見ながら加藤所長は言った。

 まるで和人達にかかってこいとでも言わんばかりに。



「やられたな」


「そうね」


「どうする?」


「わからない。

 ただ私たちはあいつの掌で動かされていたということね…」


「俺も想定していなかった事態が起きた。

 ごめんもうすこし予想しておくべきだった」


「いや、紀基君は悪くないよ。

 悪いのは私だ。

 こんな危険なことに巻き込まれてしまった。

 もう言い表しようもないくらい愚行だったのかな…」


「いや、そんなことはないと思うぜ。

 もし本当にやばいのなら所長はこんな優雅なことしないだろう。

 むしろあの人は俺たちに来て欲しいわじゃないのかな。

 そして、返り討ちにする。

 多分あの人はそうしたいんだろうな。

 俺たちにはきっと強さと知恵と両方求めているんだろうね。

 だから今失敗してもいい。

 次また、戦略と計画そして、知識を身につけてまた挑もう。

 時間はあるんだ。

 この施設を潰すことができればそれでいい。

 終わり良ければすべて良しだ。

 そう思わないか?」


「確かにそうね。でも…」


 稲村はそう言い田村や義孝の方を見た。


「俺は構わないぞ。

 ここまで来たなら俺も全面的に協力する」


「私も何ができるかはわからないけどやることはやるよ」


「だそうだ。後はお前だけだなどうする?」


 稲村は笑った。

 何が一皮向けたように和人は感じた。


「ありがとう。絶対にあの所長に一泡吹かせてこの施設を潰そう!

 絶対に」


 そう言った稲村はいい顔をしていた。

 清々しい顔というのは当てはまらないかもしれないしかし、それに近い顔をしていた。


「とりあえず各自なにかいい案を考えること。

 知識を身につけることを最優先にしましょう。

 意見な一週間ないしは二週間に一回誰かの部屋…交代で回していけばいいかしら…とにかくそれでどうかしら?」


 稲村は提案をした。

 この提案を断る理由は特にはなかった。何か自分にそれ以外の案があるわけでもなかったからだ。

 グルりと周りを見ても同じらしく同意をしていた。


 そして、その日はお開きとなった。

 自室に戻ると、和人は徐に携帯を取り出すと自分のポイントの残高を確認した。

 その画面には五万ポイントと表示されていた。

「案外溜まったな」


 一人寂しく小さな声で呟いた。

 和人はそこまでポイントを使うこともなくさらに日常から成績も良いことからポイントは月に12万ポイントほどを6月には受け取っていた。

 しかし、美香に美味しいと言ってもらうために大量の調味料を購入していたため思うようには溜まっていなかったのだ。


 そのまま和人は寝てしまった。

 この日様々な出来事がありすぎたのだ。



 そして、翌朝和人が目覚めたのはいつもより少し早い時間だった。

 いつものように和人は朝食の準備をして、学校に行く準備をする。


 また、1日が始まる。

 学校ではよく美香とも話をしている。

 でも、まだ完全に美香が戻ってきたわけではない。

 時間は数ヶ月ほど経っているのに、心の傷はまだ、癒えていないのだ。

 それほどにまで時間がかかることだった。



 俺はどうすらばいいんだ…。

 昨日みんなの前では知恵を蓄えるとか色々とカッコつけたこと言った。

 でも、実際そんなに時間はないかもしれない。

 あの所長は何がしたいんだ。

 何が目的なんだ。

 なぜ俺たちに期待をするような行動をするんだ。



 なせだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ。



 これだけなぜと思っても答えは出てこない。

 考えがまとまらなくなりショート仕掛けていた時教室のドアが開く音がした。

 思わず振り返るとそこには宿敵、因縁の敵さまざまな表現で呼べる相手。

 そう、加藤所長が教室に来たのだ。

 正直驚いた。

 驚きすぎて周りを見ると周りも唖然としていた。

 しかし、その中でただ一人違う感情を持って加藤所長を見ている人がいた。

 ーー紀基義孝その人だった。

 なぜここまで強烈な殺意が溢れ出ているのかは分からない。

 その殺気は和人を震えさせるほど強烈なものだった。


 しかし、加藤所長はそんな義孝をよそにまるで君たちは私の好きにできると言わんばかりの自信たっぷりの表情で授業を見学していた。

 授業の最後に先生に発言をさせてくれと言った。

 何を言うのか想像も付いていない。

 しかし、和人はろくなことを言わないだろうと考えていた。


「皆さん授業お疲れ様でした。

 今日この時間を使って話をしているのは他でもないみなさんのためなのです。

 私は、皆さんがキチッと更生してくれることを祈ってこのシステムを施設を作り上げました。

 しかし、私も人間です。

 もし何かみなさんにとってこれはどうなのだろうか?などと思ったりした時には遠慮せずに私のところまで来て提案をして欲しいのです。

 可能な範囲ですぐに改善をしようと思っています。

 私は大体管理棟の最上階にいます。

 今君たちの端末に私のアドレスを送りました。

 訪問する時にはそれを使ってアポだけ取ってください」


 まともなことを言った。

 しかし、義孝の殺気はまだ感じ取れる。

 そして、加藤所長は僅かに口角を上げてゆっくりと息を吸ってゆっくりと自信たっぷりに付け加えた。


「もし、不満があってこの施設を壊したいとか、恨みがある。

 そんな人も中にはいるでしょう。

 いつでもきなさい。私は待っています。

 常に待っています。

 君たちにその覚悟があるのならば私はいつでも勝負を受けましょう。

 …しかし、勝てるとは思わないでください。

 私にも考えはあるし君たちにはないものを私は持っているのですから。

 もし勝ちたければ考えてください。

 考えて考えて私に思いつかないような手段で来てください。

 おっと、長話も過ぎましたね。

 今日は見学させていただいてありがとうございました。

 それではこれからも頑張ってください」


 謎めいた発言を残して加藤所長は去っていった。


 和人が義孝を見ると、義孝は殺気を収めていた。

 しかし、和人にはなぜ殺気を放ったのか聞く気にはなれなかった。

 触れてはいけないような気がした。


「義孝は今のどう思う?」


「今のは俺たちに対するメッセージと捉えていいだろうな」


「そうだな。

 ただまだ俺たちは道筋も決まっていない。

 とにかく今は知識をつけること。

今はそれを優先しよう」




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