自由欲しい
留置されている以上自由はなかった。
しかも風呂は五日に一回…。
和人はまだ耐えられるとしても、女である美
香にとってはキツイことだった。
さらに留置場ははっきり言えば牢屋だ。
でられるわけがないし、逃げようとも考えな
かった。
その中では排泄さえも監視されていた。
そんな環境で二週間いると感覚が麻痺してく
るのか、恥ずかしいという感覚もなくなった。
その代わりに今は強烈に外をブラブラと歩き
たいという感覚に見舞われていた。
二人ともに…。
しかしそんなこと叶うわけがない。
少なくともあと一週間は外にはでられない。
その一週間も地獄のようだった。
刑事に厳しく取り調べを受けていたからだ。
一週間が過ぎると裁判のために起訴、送検さ
れた。
検察でも警察と同じようなことが二週間続い
た。
二週間が経ち、二人は釈放された。
釈放された時に二人で話した。
先に話し始めたのは美香だった。
「和人、私達これからどうなるの?」
美香は裁判でどのような判決が下されるのか
とても不安になっていた。
それに和人はこう答えた。
「それは誰にもわからない。けど俺らがやっ
たことは、犯罪だ。
ヘマして逮捕されたんだ。自業自得としか言
いようがないな。
もしどんな判決が来たとしても俺らはそれを受け入れるしかない」
裁判は、釈放された日から二週間後に第一審
があった。
弁護士に聞くと大体そこから一月ないくらい
で、判決は出るらしい。
その間に和人は友達のところに謝ったり色々
なことをした。
法律や刑務所のことについても調べていた。
意味は特になかった。
しかし自分がこれから収監される可能性のあ
る施設を調べるのは損はないとも思っていた。
そのようなことをしながら過ごしていよいよ
運命の日がやって来た…と思っていたら判決
は、まだだった。
裁判では弁護士と検察が言い合い、普通の裁
判と何ら変わりはなかった。
そのまま第一審が終わり、その一週間後に判
決が言い渡されると弁護士から聞かされた。
それから一週間落ち着いていられるわけがな
くかと言って外に出歩くことも躊躇われた
結局、和人は何もしないまま、判決の日をま
った。
そして本当に判決が下される日が来た。
裁判は普通に進み最後に裁判長が口を開いた
そう判決だった。
「主文、被告人田中和人を未成年矯正施設に入所させるものとする。
施設への入所期間は16年〜17年
ただし態度によっては17年以上もあり得る
尚その期間は態度により最短で16年で出所で
きるというものである。
もし態度が非常に悪いとされた場合には裁判
所の判断により期間を延長することもできる。
延長回数に制限はない。
以上が判決である」
そして裁判長はこのように締めくくった。
「田中君、君はたくさんの人の夢を財産を奪
った。
これは深く反省して欲しい。
だが、この時間で一番悲しんでいるのはご両
親と友達ではないのか?
その友達やご両親を二度と悲しませないよう
にしっかりと罪を償って欲しい。
この施設に入所させたのはこれが一番田中君
が更生できると判断したからです。
私を恨んでも構いません。
君が更生してくれるのなら」
その言葉に和人はただただ衝撃を受けそして最後の言葉に思わず頭を下げた。
それを見ると裁判長はどこか穏やかな表情で言った。
「以上で裁判を終わります」
これで第一審は終了した。
和人はかなり混乱していた。
何を言われたのかよくわかっていなかった。
和人は弁護士とこれからを話し合うことにし
た。
弁護士は和人が何か言おうとしているのを止めて言った。
「田中君が聞きたいのは未成年矯正施設についてだろう?
正直に言うよ。
分からない」
「分からないって…どういうことですか?」
「そういうと思ったよ。
だからまず理由から説明する。
この施設は極端に情報を出していない。
その上に取材を受けたこともない。
つまりマスコミのカメラが、入ったことはな
い。
面会についてもできなくはないが行く人はま
ずいない。
なぜなら手続きが非常に時間がかかる。
戸籍謄本やその他色々必要で、我々のような
法律家であっても許可がおりるまでに3ヶ月
はかかる。
ましてや一般人なら許可が降りるまでに大体
半年長ければ一年位はかかる。
場所だが、長野の山奥にある。
行くのにそこまで時間はかからない。
これが施設についての説明だ。
他に聞きたいことはあるか?」
和人は頭の中で一旦整理をしていた。
しかし、いまいち理解することができなかった。
そして一つ疑問が出て来たので弁護士に質問をした。
「その施設ではどのようなことをしているんでしょうか?」
「それは私にもわからない。
ただこの施設は国が関わっている。
何か普通と違う可能性はある。
ただそこまで心配する必要はないと思う。
こんなもんで大丈夫かな?」
「はい、ありがとうございます」
和人は腑に落ちなかったがそのまま帰ることにした。