希望の末路
夢なんてものを俺は持たない方が良かった。
これは仕方ないこと。
そう割り切ることもできる。
でも俺のせいでこうなったかもしれない。
もしかしたら防げたかもしれない。
ずっと考えた。
破壊衝動にもかられた。
しかしそれに応じるのは弱い自分を晒すだけ。
だからやらなかった。
あのことを知るまでは。
「和人さん!」
「どうした。
このクソ忙しい時に」
「実はあの事故のことを調べていたらとんでもないことがわかったんです」
「とんでもないこと?」
報告をしにきたのは後輩の男でガッチリしたやつだ。
俺と五十嵐の護衛みたいな役割をしていた。
「実はあの事故の犯人はある巨大企業の御曹司がやったことらしいんです。
五十嵐さんも名家の御曹司です。
しかしそれ以上の力が働いた。
つまり、この事故は明らかに運転者は酒に酔って運転していたのにも関わらず法の裁きを受けないということです」
和人は目を見開いて驚愕していた。
そして一言、言った。
「ありえない、そんなことがあっていいのか…」
「実はもう少しその家について調べて見たんですが、どうも父親が社長。
母親は主婦らいしです。
そしてここからが犯人が裁かれない理由だと思います。
その犯人の父親の弟つまり叔父は国政にかなりの影響力を持つ議員だったんです。
その議員は総理の椅子も確実と言えます。
裏から手を回すのにはちょうど良い人物でしょう。
さてこれを知った上で聞きます。
和人さんどうしますか?」
弱々しい声で和人は言った。
「少し考えさせてくれ」
「わかりました。
ただ一つ覚えておいてください。
あなたの判断が俺たちの判断になる。
慎重にお願いします」
そう言って後輩は部屋を出た。
一人になった和人は独り言を言った。
「さてと、葬儀屋の手配とホールの手配をしないとな。
あいつの葬式だから人はたくさんくる。
遺書も見つかったしな。
それにしてもあいつはどれだけ用意周到だったんだ。
これじゃまるで自分が死ぬことが分かっていたようじゃないか…
それにしても、名家の御曹司か…俺もそうだよな一応。
兄貴なら何か知っているだろう。
聞いてみるか」
そこに一人の女が入ってきた。
美香である。
「どうしたんだ美香?」
出会ってしばらくしてからはなかなか口を開くこともなかった美香は今では俺と恋愛関係とも言えるような関係になっていた。
「君は少し悩みすぎじゃないのかな?
もっと楽にしていいんだよ。
一度少し楽に過ごしてもいいんじゃないのかな?」
「忠告ありがとう。
考えておくよ」
「相変わらず君はいつも答えをはぐらかすんだね。
ま、それも含めて和人のいいところなんだけどね」
それからしばらく日が経つと五十嵐の葬式の日がきた。
その日は晴れていて、まさに五十嵐龍成という男を送り出すのには最高の天気だった。
「五十嵐くんは、僕を含めた沢山の仲間に囲まれていました。
それが交通事故であんなにもあっさり死んでしまうものなのかと思うと残念で仕方ありません。
人の儚さを感じた瞬間でもあります。
実はその当日これからを巡って僕と彼は喧嘩をしていました。
怒った彼は少し外に出てくると言い外に行きました。
それから彼が戻ってくることはありませんでした。
連絡がありました。
病院からです。
五十嵐くんのおたくですか?と聞かれました。
僕は即座に彼に何かあったのだろうと感じました。
それが分かっていたとしても実際に言われるときついものです。
五十嵐くんが事故で重症です。
すぐにきてください。
僕はこう言われました。
そしてすぐにでも行かねばならない状況で数人そこにいた仲間を連れて病院に行きました。
病院に言ってそこにいたのは全身包帯だらけで、今にも息が止まりそうな普段の彼の姿からは想像もできないほど弱々しい姿でした。
僕はそこが病院だと分かっていても、泣き叫びました。
彼は僕を救ってくれた。
仲間を教えてくれた恩人です。
僕は今日をもって不良と言われる集団は解散したいと思います。
そのグループからただの仲の良い仲間の集まりグループになろうと思います。
何もヤンキーである必要はないのだと思います。
僕はこれ位にしておきたいと思います」
そう言って挨拶を終わらせた。
そのあとは葬儀に参加した人で焼香や挨拶を済ませた。
五十嵐の親はこなかった。
もちろん連絡はした。
しかし、こう言われてしまった。
「私たち家族と龍成は一切関係がない。
家族の縁は切った。
死亡届けは出しておくから墓や葬儀はそちらでやってほしい」
とても家族とは思うことができなかった。
さらに交通事故の加害者も来ていた。
「いやー残念だったね。
君たちのリーダーが死んでね。
でもこれでよかったんじゃないのかな。
だって社会のゴミは排除できたんだから。
ただ一つ残念なのはあんな奴のせいでぼくが傷を負ったことだ。
全く責任を取ってもらいたいものだね」
こう言われ頭に血が上った。
しかしこの場で怒りをぶつけるのはダメだと思いなんとか耐えた。
加害者はそう言うなり去った。
仲間の一人がこう言った。
「あいつ被害者面してますね。
法で裁かれないのをいいことに。
我々も行動を起こしますか?」
「あぁ頼む。
法律に引っかからない程度に、派手にやってくれ。
もちろんあいつの親族もだ」
そう言ったがもはや俺に理性というものは残されてはいなかった。
加害者に言われた一言それのせいで全てを支えていたものが崩れ去り崩壊した。
何がなんでも復習してやると考えた。
そして考えたのが放火だった。
和人の過去編はこれが最後です。




