留置
この日逮捕された、被疑者は16歳男名前は、田中和人。
さらにその共犯で同じく16歳女。
名前は藤野美香。
この二人の主な罪状は、放火と窃盗。
窃盗に関しては、田中和人はほぼ無関係で藤野美香が主な主犯である。
放火については二人の共犯であり、さらにかなりの被害が出ていた。
総被害は25軒。
内全焼は13軒。しかし使えなくなった建物を
含めると22軒。
被害額は被害額は約百億円。
冷たい鉄格子がむき出しとなっている、留置所の中に田中和人はいた。
田中和人は留置場の中でしくじった。
俺があんな家に火をつけようとしなければこ
んなことにはならなかった、と思っていた。
和人が火をつけようはしていたのは、国内で
も有数の富豪の家だったのだ。
しかしこの富豪は防犯対策をかなりしていて
火をつけたらすぐに警備員が来てそのまま警察に突き出されてしまった。
きっと今までやって来たことも全てバレてい
るのだろうと思った。
そう思うと、和人はこれから俺はどうなっ
ていくのだろうという不安な気持ちにから
れていた。
暫くすると警官が来た。
そして「おい田中和人出ろ!取り調べだ」
と言った。
抵抗もせず出ると、手錠と腰縄がされた。
そしてそれが結構きつかった。
取調室に入ると手錠は外されたが代わりに鎖
で腹回りと、手を拘束された。
来たくはなかったが、逃走することはまず不
可能だと感じた。
鎖を嵌め終えるなり、目の前にいた刑事が、
口を開いた。
「先に髪を切ろうか。
ここで、長髪で金髪にしている意味はない!」
そう言うなり、バリカンを出して来た。
和人は「や、止めろ!止めてくれ!」と必死
に抵抗したが、それがルールだと言って坊主にされた。
「終わったぞ」
「俺は…俺は坊主という髪型が大嫌いなんだ」
「そんなこと知るか。
こんなところにいる貴様が悪い」
和人に反論の余地はなかった。
「髪もすっきりしていいじゃないか」
「どごがだ…」
その和人の言葉を無視して、警官は続けた。
「それでは取り調べを始めようか」
「まず聞くぞ、なぜお前はこんなことをした!?」
いきなりの怒鳴り声だった。
俺はなるべく冷静であろうとした。
下手に喋るとボロが出るということをよく知っていたからだ。
「俺は、全てを潰したいと思った」
「なぜだ?」
「教えたくない」
「ご両親が悲しむぞ!」
「俺にあいつらはもう存在しないも同然だ!!」
思わずカッとなって叫んだ。