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幼児退行  作者: 藤原
新たなる生活
19/104

研究

加藤所長は今東京の都心にある料亭である

花鳥風月に来ていた。


その場にいたのは、役人俗にいう官僚と研究

者ともう一人の計4人。


最初に言葉を発したのは研究者である、井上

だった。


「いや本日はありがとうございました。

成果の方も最初にお話ししますのでよろしく

お願いします。

局長もお忙しい中ありがとうございます。

それでは早速報告から参りたいと思います。

これはご存知の通り加藤さんが所長を務めて

おられる、未成年者矯正施設の入所者に協力

をしてもらってデータを集めています」


井上はあくまでも協力と言った。


しかし、実際には許可も何もない。


「そしてこのデータの中に突出して良いデー

タの出ている4人がいました。

加藤さんにご協力を頂き調べた結果この4人は今年の初春の同じ日に入所していました。

これはかなり良い発達をしていると言えます。

薬の方の研究をしておられる鈴木研究員とも連携を取りつつも調査を進めたいと考えております。

私からは以上です。

何か質問があればどうぞ」


「もし施設の職員とデータが必要ならお構いなく言ってください。

我々もできる限りのきょうりょくはしますから」


加藤所長は穏やかな声で言った。


その一言が終わると少し低い声が井上に聞こえてきた。


「一つよろしいかな?」


「はいなんでしょうか?」


「井上君、君はこれからも進めていくと言った。

そして研究を始めて三年経つ。

本当に大きな成果が出るのは一体いつなのか教えてもらいたい」


「…三年前にも申し上げましたが、この研究は人類が誰もやったことのない研究です。

正直我々も手探りでここまできています。

下手をすれば後10年は大きな成果を出すまでにかかるかもしれません」


「それでは遅い!

もっと早くできんのか!?


「無茶です。

現在我々も必死に研究しています。

研究にはそれだけ時間がかかるということをご理解ください」


「井上君もああ言ってるのだから納得したらどうですか?

それとも自分の利権のこととなるとまともな判断がくだせませんか?

岩田先生」


その一言で空気は凍りついた。


「大塚事務次官。

それは良くない。

だがさすがに岩田さんにも面子がある。

謝ったほうがいいと思いますよ」


その場を慰めるように加藤所長は言った。


「…岩田先生すみませんでした」


「大塚君…。

申し訳ない。

特に井上君には謝りたい。

申し訳なかった。

成果が出ないことに焦っていたんだ。

これ以上待つとなると国会でとやかくいう連中がいる。


ここにいる大塚君の手も借りているが彼は後三年で退官する。

それを考えると時間がないんだ。

それをわかって欲しい。

あせらせるようなことを言ってすまないな」


「いえ私の方こそ先生の気持ちを顧みないで発言していました。

研究はスピードアップしていきます」


「ありがとう」


「さてさてそんな話ばかりしに来たんじゃないんでしょう。


せっかくこんな人が集まったんですから様々な話をしながら酒を飲みましょうか。

このままだと飯も美味しく食べられない」


そう加藤所長が言うと他の三人は納得したように頷いた。


そこからは世間話をしながら2時間花鳥風月にいた。


加藤所長は店から自宅に戻るとパソコンを開いて、メールを確認した。


そしてある一通のメールを見ると一瞬口角を上げた。

なんとも不気味な笑みだった。


そして呟いた。


「最終段階に入ったか。

私の目的もすぐに達成されるだろう。

…長かったな」


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