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幼児退行  作者: 藤原
新たなる生活
17/104

意味

加藤所長は「君達は完璧になる」と言った後

こうも言った。


「そして全てを知ることができる」と。


この言葉の本当の意味を和人も美香ももちろ

ん翔も理解することはできなかった。


加藤所長が通り過ぎた後は、何事もなかった

かのように施設内を散歩し始めた。


この日は春だった上に晴れていたので和人は

「気持ちいいな」と感じていた。


人間ならば誰しもが感じるような気持ちであ

る。


小林はそんなことを思っている間にも三人に


「今日は気持ちいいね。

この後何しよっか?

お昼寝がいいのかな?

それともおやつ?」


などと言っていた。


まるで何かを隠しているかのような雰囲気を

小林からは感じ取ることが和人はできた。


それが何故かは分からなかった。

「というかそもそもそれが普通なのかもしれない。

自分たちが知ることのできる情報などは、かなり限られている。

つまり自分の知ることが可能な情報などないということだ」


美香は気持ちよさそうに寝ていた。


小林はそのまま三人の乗ったベビーカーを押


して、建物の中に戻って保育室に行った。


そして飲み物とおやつを用意し始めた。


「さぁ〜美香ちゃん、和人君、翔くん〜おやつの時間だよ〜。

美味しいよ」


そう言って、出てきたのは小さいシュークリ


ームだった。


元々甘党である、和人にとってはかなり嬉し

い代物だった。


飲み物はミルクではなく、麦茶だった。


「和人君嬉しそうな表情をしているね。

シュークリームが好きなの?」


小林が尋ねると思わず和人は大きく首を縦に


ふった。



とびっきりの笑顔とともに。


この笑顔が出たのは仕方ないことだった。


この施設に入所してから数ヶ月久しぶりに見た甘いものだったのだから。


それを食べ終えると和人は散歩中に加藤所長の言っていたことの意味を考えた。


「普通に考えたら、完璧になるとは俺達が更生して普通の生活を送ることもしくは教育を施して頭が回るようにすること。

だが全てを知るとは一体なんなんだ?

加藤所長の秘密?

例えば、所長の部屋に大量の如何わしい本が置いてあるとか…。

いやいやいや、そんなことあの所長に限ってありえない…。

いや待てよ、意外とあんな人ほどムッツリだったりするしな。

あぁ〜何が何だかわからん」


「和人君今からお昼寝だよ!

皆んなとお寝んねしましょうね〜」


小林の一言で周りが暗くなった。


電気を消したのだとすぐにわかった。


その頃所長の部屋では会議が行われていた。


「それでは定例会議を始めたます」


所長のこの一言で会議は始まった。


「それではまず財務状況の方から報告をさせていただきます」


財務の報告から定例会議は始まることになっていた。


そしてその報告をするのが森だった。


肩書きは未成年者矯正施設財務部長というものだった。


「まず入所者ですが今月は十人増えました。

それにより増える支出は施設にいるは間の十数年で平均で約三千万円。

これからも人数が増えていくとを考えると

早めに手を打った方が良いと考えます。

そして合計の支出でさすが我々の人件費を除くと入所者約百人で、月三千万円です。

しかしここに人件費を入れると、一気に三億に跳ね上がります。

しかし人手に関してはもっと増やしていくべきでしょう。

あと数年もしないうちに教員免許を持った人材も必要になりますし…」


「わかりました。

それでは人手に関しては、現場の状況で決めていきましょう。

それに関しては現場担当も見ておられる西村副所長に一任します。

森部長それでよろしいですか?

そしてあと何人くらいなら雇うことができますか?」


「それを説明する前に、収支を全て説明いたします。

今月の全ての支出の合計は三億五千万円です。

収入に関しましては、国から三億、企業からも三億受け取っています。

しかしこの中から積立もしていますので、雇うことができるのは、多くてもあと十人というところです」


「西村副所長何か意見はありますか?」


加藤所長がたづねると西村副所長は手短に


「いえ、特にはありません」


と答えた。


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