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自炊も冒険の基本です

予告どおり飯テロ回です。

読む前に食事を済ませておくか、間食を用意してから読むことをオススメします。

「じゃあそろそろ日も暮れそうだし、野営(やえい)の準備をしましょう。」


 ジェシカの提案によりボクたちは野営の準備に入るのだが。


「じゃあ、アタシとタイガで食糧を確保しましょうねン。さあタイガ、一緒に行きましょう」

「だが断る」

「何でよ! っていうか『だが』って何よン」

「いや、普通に嫌だし。ボクは向こうで火にくべる枯れ枝とか山菜とか採ってくるから。ヤスエは獣狩ってきて」


 ボクはヤスエにそう言ってさっさと出発する。

 後ろでヤスエが何やら騒いでいたが気にせず自分の仕事に専念することにした。


 大体いつも野営の際は拠点(きょてん)の設置と料理をジェシカが、枯れ枝や山菜の確保をボクが、そして獣を狩って肉を確保する役割をヤスエが担当する。


 拠点の設置くらい男のボクがやるべきだという意見もあるだろう。だけどジェシカが料理を担当する以上、この役割分担が一番無駄がないのだ。

 そしてこの中で一番料理が上手いのがジェシカなのだ。


 ボクも料理は作れるし、ヤスエも作れなくはないが、ボクは家庭料理のようなある程度材料が揃った上での料理しかできないし、ヤスエの料理は豪快(ごうかい)かつ大味で毎日食べると飽きがきてしまう。

なのでジェシカが自然と調理担当になり、一人だけ残る関係上、拠点の設置も任せているのだ。


 そんなことを考えつつ、今日の料理をあらためて眺める。今日はキノコと鶏肉のシチューと鶏の香草焼き、それと旅のお供のパンの三品だ。

 ヤスエの捕ってきた脂ののっていそうな丸々と太った鶏とボクが採ってきたキノコ類と香草をふんだんに使った逸品(いっぴん)だ。


「いただきます」


 みんなで声を合わせて合掌した後、まずボクはシチューに手を伸ばした。


 メイン料理が香草焼きなのでその香りに負けないようにだろう。かなり濃厚なスープに仕上がっている。スプーンを入れたときに感じるズシリとした感触に心を躍らせながら口にする。


「アッヅァ!」


 しかし思ったよりもまだ熱く、思わず叫んでしまった。


 ハッフハッフと口の中で必死に冷ます。ようやくシチューが冷めてきたところでゆっくりと味わって咀嚼する。クリームの濃厚な味と具材の野菜の触感が旅の疲れを癒してくれる。


 具材はシンプルに人参、玉ねぎ、じゃがいも、それと香草焼きにも使った鳥とキノコだ。野菜はどれも一口大にカットされているが、じゃがいもだけはわずかに大きめにカットされている。煮込む際に崩れるのを考慮に入れての大きさだろう。しかしその分ホクホクとした口当たりがまた心地よい。


「ふふ、実はちょっとだけ変わった調理してみたんだけどわかるかしら?」


 ジェシカがそんなことを言うのでもう一口ほおばる。今度はやけどしないように一度スプーンの上でふーふーと冷まして、熱がとれてから口の中へ。やはり濃厚で少しドロリとしているが、それほど変わった味はしないが……ん? もしかして……。


「もしかしてシチューの中に潰したじゃがいもが入ってたりする?」

「大正解! よくわかったわね」


 ジェシカはそう言って嬉しそうに破顔する。


 おそらく、ふかして柔らかくしたジャガイモをペースト状になるまで潰して、そこにシチューを少しずつ加えて伸ばしていったんだろう。そのおかげで見た名以上に腹持ちがよくなり、スープに独特の舌触りが生まれるのだろう。それに、スープの粘度が増すことで、冷めにくくなっている。こういったちょっとした配慮がまた嬉しく思う。


 次にパンを少量ちぎり、シチューにつけて食べる。小麦の香りが鼻を抜けた後に、シチューの旨味が口の中を満たす。単体だとちょっとしたおかず感覚のどろりとしたシチューも、パンと一緒に食すことで自分はシチューであり、すなわちスープ、汁ものなのだと主張してくる。


 そしてシチューをひとしきり楽しんだボクは鳥の香草焼きにも手を伸ばす。


 香草焼きの方は鳥から溢れ出た脂が鳥をキラキラと飾り立てている。そしてナイフで切り込みを入れて一口大に切ろうとすると、ジュワッと肉の中から肉汁が溢れてくる。そのまま切り取り、口の中へ。

 まず香草の香りが鼻を蹂躙する。そして香草の力強いジャブに戦線を乱された口の中に鳥の旨味が広がる。淡泊なはずの鶏肉にも関わらず、野生の動物らしいワイルドかつ力強い食感がその存在を主張する。そしてその肉の感触を十分に楽しみながら咀嚼すると口の中を香ばしい香りが吹き抜け、鳥の旨味が後を追う。特にローズマリーの香りが目立ち、肉がのどを通った後にその後を清めるかのようにのどを駆け抜ける。


 素材の味を心ゆくまで堪能したら、今度はパンに載せて食べる。単体だとパサつきやすいパンが力強い肉汁を吸う。それによって肉の旨みが口にいつまでも残るような錯覚さえ覚える。うまい。純粋にそう思える味だった。


 ちなみにヤスエの方は熱さをものともせず、食べ終わるどころかすでにおかわりまでしている。相変わらず食べるのが早い。


 三人が食事を終えて、ジェシカの淹れてくれたお茶を飲みながらしばらくまったりとした時間を共有する。本当ならデザートでもあればさらに良かったが、さすがに野営中だし贅沢は言えない。何より意外と量があって満腹に近いし。


 そうだ。せっかく作ってくれたんだからジェシカにもお礼を言わないとな。


「ありがとう。ジェシカ。とても美味しかったよ」

「そう」


 そっけない返事だったが、口の端がわずかに持ち上がっている。本人はすましているつもりだが、ああ見えてすごく喜んでいるのだ。もちろん、そんなことを指摘すればムキになって否定するのだが。


えー、今回食べてるだけです、すいません。

次回は町に繰り出します。

いよいよちょっとだけ物語が動くかも(違ったらごめんなさい)

ただ、次回の更新も未定です。すみません。


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