23話
バン!
瑠璃が持つアサルトライフル【SIG 556C】のエジェクション・ポートから空薬莢が飛び出す。
「制圧出来たかな… 梓は無事? 」
瑠璃は倉庫の壁に身を隠しながら周囲を警戒する。
「なんとか… 瑠璃は大丈夫そうだね。」
銃撃戦で疲労困憊の梓は、倉庫の壁にもたれるように座り込んで、
アサルトライフル【TAR-21】の弾倉を交換している。
「良かった。茅花の援護に向かうから乗って! 」
瑠璃は車体に複数の弾痕が残るセルシオを運転し、梓の横に寄せる。
梓が乗るとアクセルを思いっきり踏み込み、急発進する。
……
「梓、グレネード! 」
「うぇ?! 」
梓はグラーフツェッペリンの拠点を囲う4mの壁に猪突猛進する瑠璃に驚愕しつつも、壁に銃の照準を合わせてグレネードの引き金を引く。
ポォンという軽い音を立てて発射されたグレネードが壁を破壊する。
「行くわよ! 」
瑠璃は自分に言い聞かせるように言い放った後、壁の欠損した箇所に突っ込む。
「あの青いコンテナの山を右に曲がったところだよ。」
梓はノートPCで茅花の現在地を確認し、瑠璃をナビゲートする。
「ハンドル切るから、掴まって。」
瑠璃は遠心力に耐えつつハンドルをきった。
……
「茅花! 」
アスファルトの上に横たわる茅花を見た、瑠璃は駆け寄る。
「う、ウソ… 茅花ちゃん… 」
梓は瑠璃の呼び掛けにも応えず、ピクリとも動かない茅花の様子を見てその場で立ち尽くしてしまう。
「大丈夫、気絶しているみたい。」
冷静さを取り戻した瑠璃は茅花の怪我の具合を診ていく。
「足に刺さっているのは釘… 」
茅花の足は複数の箇所から出血している。
「左腕は骨折しているかも… 茅花、ごめんね。」
瑠璃は茅花のプレートキャリアを外した後、ナイフを取り出すと下から上へとシャツを切る。
「酷い… 」
梓は茅花の腹部にあるいくつもの青アザに目がいく。
「胸の辺りも赤くなっているから、あばら骨を痛めている可能性もあるわね。」
瑠璃が触診する。
「う… うう、瑠璃… さん? 」
痛みで茅花の意識が戻る。
「良かった… 意識がはっきりしてないようだし動かないで。梓、トランクルームから担架を持ってきて。」
「なんで、担架がいるの? っいた…」
起き上がろうとする茅花を全身の痛みが押さえつけた。
「なに、この怪我…… いつ、怪我したの? 」
漠然とした巨大な疑問と不安が更に追い詰める。
「京橋ナギを見つけたことまで覚えてる…… あれ? 思い出せない。いや、なんで…」
恐怖で目が涙ぐむ茅花の手が小刻みに震え始める。
次の瞬間、瑠璃が覆いかぶさるように茅花の上半身を優しく抱きしめる。
「大丈夫だから、記憶が混乱しているだけだから。落ち着いて。」
瑠璃の優しさに諭されるかのように、茅花が冷静さを取り戻していく。
「ありがとう。早く撤退しないとね。」
「良かった。」
そう呟いた梓は涙を堪えて、トランクルームを開ける。
瑠璃と梓は、茅花を乗せた担架を後部座席に固定する。
「ごめんね、瑠璃さん、梓さん。」
「ううん、こっちこそごめん。それより、新手が来るかもしれない。」
「えっ、新手?」
「この騒ぎを嗅ぎ付けた外部からの援軍が来てもおかしくない頃だよ。」
茅花は右手を伸ばし、座席の足元にあるノートPCを手に取る。
トランクルームにあるマガジンクリップを使い、アサルトライフル【SIG 556C】をダブルマガジンに変えた瑠璃が口を開く。
「MIYANO 起動。」
すると、セルシオのスピーカからトーンの高い電子音が鳴る。
「ハイ、西尾さん。ご用件はなんでしょう?」
セルシオに搭載されている、人工知能【MIYANO】は、事前に登録されている声紋データから瑠璃を識別し、無機質な音声で答える。
「自動運転をCQBモードでお願い。」
「かしこまりました。CQBレベルを指定しますか?」
「ええ、無制限でお願い。」
「かしこまりました。なお、事前に急ハンドルまたは急ブレーキを通知出来ない場合があり
ます。」
「もちろん。」
「目的地を設定して下さい。」
「ハイバラ珈琲東京本店へ。」
「…… 通信エラー、GPSから現在地を特定出来ません。車載されている地図データから特定を行うため、現住所または郵便番号を入力してください。」
瑠璃がカーナビのタッチパネルをタッチし、郵便番号を入力していく。
「データベースとの照合完了しました。準備が整い次第、発進可能です。」
セルシオのハンドルが前方に折りたたまれるように自動で内蔵され、前部の座席は180度回転すると僅かに後退する。
「MIYANOは、宮之城HDが開発したAIだよ。」
MIYANOの言動を見つめていた梓に茅花が説明する。
MIYANOが電子音を鳴らす。
「後方の赤外線センサーが複数の熱源を探知しました。」
梓が振り返ると車やバイクのものと思われるヘッドライトが遠くで輝く。
「MIYANO、発進して。」
梓が乗り込んだことを確認した瑠璃が声を張り上げると、セルシオが急発進する。
急速に近づいてきた車とバイクには武装した請負人たちが乘っている
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