21話
-a few minutes ago- <数分前>
グラーフツェッぺリンの拠点のゲート前で、京橋ナギと武装した請負人数人が対峙している。
請負人の一人が、コンビナート内を巡回している仲間に対して、警戒を厳にするように伝えている一方で、もう一人が京橋を見下すように問いかける。
「お嬢さん、うちに何の用かな?」
京橋は、正面にいる請負人を見上げ、口を開く。
「あなた達が持っているギフトはどこにあるのかしら?」
「ギフト? なんだそりゃ?」
京橋は請負人達の嘲笑を気にする素振りを全く見せず、また問う。
「ごめんなさい、質問の仕方が間違っていたわね。あなた達が流している薬物が欲しいのだけれど、貰えるかしら?」
請負人は、きめ細やかで陶磁器のような白い肌をしていて、まるで薬物を使用しているようには見えない京橋に妙な違和感を覚えながらも応える。
「悪いが、街中にいる仲買人から買ってくれ。」
請負人が周囲にいる仲間たちに対してアイコンタクトを送ると、その仲間たちが一歩・二歩と京橋に近づく。
「まぁ、それもここから無事に帰れたらの話だけどな。」
「私は、買うとは言っていない。渡して欲しいって言ったつもりなのだけれど。」
今、自分が置かれている状況を無視するかのような京橋の言動が、
さらに緊張感を増幅させる。
「あぁん! どういうつもりだ。」
「こういうことよ……」
京橋がジャケットの下のホルスターに収めていた、回転式拳銃
【S&W M686】を構える。
バン! という発砲音が聞こえたあと、正面で対峙していた請負人が真後ろにそのまま倒れる。
拳銃弾の中でも強力な部類に入る.357マグナム弾を食らった顔面は大きく抉れている。
「テメエ! なにしやがる!」
請負人達は、多勢に無勢、しかも面と向かって会敵した状態で発砲した京橋に対して感じる恐怖を抑え込むためにも銃口を突きつける。
「もう一度だけ聞くわ。薬物はどこ?」
「ふざけんじゃねえ!」
交渉の余地はもう無いと思った京橋は、ふぅ っと短く大きな呼吸をしたあと、口を開く。
「そう…… なら、戦争をするしかないわね。」
突然、吹いた風に乗って京橋の長い銀髪が、僅かにふわりと靡く。
「戦争だぁ? お前は一人だろうが!」
怒号を挙げた請負人が手にしているハンドガンのトリガーを引く。
銃口から放たれた9mmパラベラム弾は音速を超える速さで、京橋に迫っていくが…
バチン!
直後、弾丸は見えない大気の層に阻まれ、弾速がみるみるうちに落ちていく。
断熱圧縮された弾丸周辺の大気は赤く、弾丸自身も赤熱化していく。
そして、溶けて原型を留めていない鉄の塊は、京橋の眼前で止まり浮遊している。
目の前の非現実的な現象に請負人達は、数秒間、言葉を失う。
「バ、 バリアだと……」
「そうね。その言葉が一番近いかしら…… ?」
殺気を感じた京橋が、その発生源の方角に視線を向けた直後、対物ライフルから放たれた50口径の弾丸が襲い掛かる。
だが、京橋を上から覆う半円の見えないバリアによって、弾丸は轟音を立てながら弾かれる。
「うぉお!」
恐怖に支配された別の請負人は手にしている、機関銃【MK46 Mod0】を連射ではなく、乱射することしか出来ない。
7.62mmの弾丸はことごとく無残に弾かれ、四方八方に跳弾していく。
ありったけの弾を吐き出した機関銃の残弾がなくなり、箱型の弾倉交換に射手がもたつく。
その隙をつき、瞬間的に射手の背後に移動した京橋はリボルバーの銃口を突きつけて、発砲する。
そして、頭を撃ち抜かれた射手が手放して、落ちていく機関銃をキャッチすると、慣れた手つきで、初弾を薬室内に装填して、周囲の請負人達
を一掃していく。




