18話
チーン♪ っとハイバラ珈琲東京本店のバックヤードに設置されているエレベーターの扉が開く。
「ん、この部屋は書斎? 」
エレベーターを降りた梓の目の前には赤を基調にしたペルシャ絨毯が敷かれ、部屋の壁に沿うようにして設置している巨大な本棚にはぎっしりと本が詰まっている。
「書斎じゃないよ。」
梓と一緒にエレベーターに乗っていた瑠璃は正面の本棚に足を進める。
そして、本棚に収納されている本のなかである1冊を押し込むと全ての本棚がギィーっと音を立てながら回転し始める。
ガチャン!
「す、凄い量だね……」
梓は全ての本棚が180度回転し書斎が武器庫に様変わりする光景に驚きを隠せない。
壁には、アサルトライフルやらサブマシンガン等様々な銃が全面に掛けられている。
「この中から、アサルトライフルを1丁選んで。」
梓に銃を選ぶように伝えた瑠璃は6.8mm口径の弾薬を使用する自動小銃【SIG 556C】を手に取り、通常分解し始める。
「うん、 じゃあこれで。」
梓は黒い自動小銃【TAR-21】を手に取る。
通常分解を終えた瑠璃は、銃身を通常の物から、射撃精度を向上させる為に重銃身に交換する。
そして【SIG 556C】をIAR仕様に組み直したところで、書斎の奥へと繋がる扉が開く。
開かれた扉からは、玲香と茅花が出てくる。
セーラー服姿の玲香とは異なり、茅花は
黒のブラウス、紺のスカートに黒いタイツと、闇夜に溶け込み易い装備を整えている。
玲香は2人に挨拶を交わし、依頼内容を再確認する。
「今回の潜入先は神奈川県の海に面したコンビナート群に隣接しているPSC Graf Zeppelinの拠点よ。」
「えっ、 PSCがドラックをバラ撒いてるの?」
「ええ、コンビナートとその近海の警備を一手に担っていることを良いことに各地への荷物に紛れ込まさせて流しているみたいなのよ。」
玲香はそう言いつつ、ガンラックに掛けられている自動小銃【SCAR-H】に手を伸ばそうとするが……
茅花の視線がその動きを捉える。
「玲香ちゃん、何しているの?」
「い、いや…… ガンラックを展開したついでに、銃の整備でもしようかな〜なんてね。」
「玲香ちゃん、言い訳が苦しいよ。今回は後方支援でしょ。」
はい…… っと応えた、玲香はシュンとなる。
「オホン、グラーフツェッペリンはドイツに本社があって、暗殺や拷問とかダーティーな仕事もガンガン引き受けている会社なんだよね。」
茅花は手にしている【PPQ M2】の銃口にサイレンサーを取り付けると、ガンラックからPDW【MP7A1】を取る。
「えっ…… 」
いつもの明るい声色とは違い淡々と話す茅花の様子を見て、言葉を失う梓。
「茅花、無駄に恐怖心を煽らないの。伊賀さんはバックアップだし、私もいるから大丈夫。」
「瑠璃さんは少し離れている所から見ているだけだしね。」
茅花が皮肉を返す。
「私と伊賀さんじゃあ、茅花の俊敏さに追いつけなくて、あなたの長所を妨げてしまうからこの役回りにしたんじゃない。」
「ふふん、まぁね♪ 」
瑠璃がドヤ顔を見せる。
「全く緊張感があるんだか、無いんだか…… そろそろ出発して頂戴。あと、伊賀さん、これ着といたほうがいいわよ。」
「うん、ありがとう。」
梓は、玲香からケブラー製のボディーアーマーを受けとり、服の上から装着する。
チーン♪
武装した3人と玲香を乗せたエレベーターはガレージに止まり扉を開ける。
瑠璃が停車している防弾仕様のセルシオの運転席に座り、助席に【SIG 556C】を置き、エンジンを掛ける。
梓と茅花が後部座席に座ると、ガレージの自動ドアが開く。
「状況の報告は逐一、お願いね。」
「玲香ちゃん、分かってるって。」
「宮之城さん、行ってきます。」
「じゃあ、車出すね。」
セルシオを見送った玲香は、エレベーターに乗ると、状況を確認するために情報端末の設備がある階に直行する。
ーーーーーー
3人を乗せたセルシオは車が疎らな首都高湾岸線を走っている。
車窓からは、コンビナート群を照らしている様々な色の水銀灯が水面に反射している幻想的な景色が見える。
目的地の最寄りのインターチェンジを通過しようと瑠璃がスピードを落し、ゲートに差し掛かる。
「すいません、こちらの地域は一般の方は進入禁止です。本線に乗り直して下さい。」
車の窓が完全に開く前にゲートを警備している警察官が注意する。
「宮之城民間警備ホールディングス、依頼内容は要人警護です。」
「チッ、確認する。 」
闇夜で目立ちにくく、尚且つ動きやすく武装した3人を視認した警察官は、ゲート内に設置されている情報端末機を確認する。
「ああ、通っていいぞ。」
依頼内容を照合した警察官は許可する。
「ありがとうございます。」
瑠璃はアクセルを踏み、走り出す。
「ふふん。あの警官、まんまと偽情報に騙されてたね。」
茅花がほくそ笑む。
「えっ? 」
「私達の会社が国土交通省と契約して、首都高の監視システムを管理しているから出来る芸当みたい。」
瑠璃が状況を掴めていない梓に説明する。
「そろそろ、着くから準備して。」
「了解。」
「うん。」
ジャキン!
梓と茅花は各々の銃の薬室に初弾を装填する。




