請負人- GUN OPERATOR -
「では、最後の質問です。」
どこにでもありそうな会議室にある椅子に座る金髪の女性が長机を挟んで、向こう側の椅子に背筋を伸ばして座っている女子高生に問いかける。
「はい。」
通っている高校の夏服を着ている女子高生は緊張した面持ちで応える。
「伊賀梓さん、あなたは当社の請負人として働く覚悟はありますか?」
金髪の女性は視線を鋭くする。そして、身振りや手振りは勿論のこと、瞬きさえも見逃さないくらいの気持ちで梓を観察する。
「はい。私には守りたいものがあって、それを守る手段として【請負人】になりたいです。」
梓は金髪の女性に負けじと強い視線を返す。
「分かりました。」
金髪の女性は短く返事をする。そして、梓自身が書いた履歴書と会社の調査部による梓に関する報告書に再度、目を通す。
「それでは、今回の面接結果を伝えます……」
― after two years ― 〈 2年後 〉
梓は待っていた。
久しぶりに会う友達でも、恋人を待っているわけでもないが落ち着きがない。
「あっちぃ…」
遠目に見えるガラス張りの高層ビルがギラギラと日光を反射し、梓がいる雑居ビル屋上も照り返しがきつく、額から汗が落ちる。
「あぁ〜もう!早く終わらせて、冷たい甘いものが食べたい!」
自ら引き受けたとはいえ、今回の依頼をこなせるか不安になる梓。
「はいはい、無駄口叩かない〜。目標、距離500m。」
装着しているインカムからユリカの檄が飛ぶと、梓は伏射の体勢になり狙撃銃 【HK417】のグリップポッドを展開し、銃を構える。
―a few minutes ago― 〈数分前〉
「くそ…」
マンションの3階から飛び降りた衝撃を受けたはず男の足は何事も無かったかのように地面を蹴り返してくれている。
「おい!止まれ!」
男はどんどん警官2人を引き離し、警官達の視界から消え、雑居ビルが建ち並ぶ路地裏で息を潜める。
快調だった足を見ると大きく腫れているが痛みを感じない男。
…
「こっちにいるぞ!」
「っ!」
梓はHK417に取り付けているスコープを通して、狙撃ポイントである開けたT字路に視線と銃口を向ける。
「……. ふぅ。」
呼吸を整え、集中していく梓。
「…距離450。」
ユリカは小型の無人偵察機(UAV)に映る映像から男の位置を割り出す。
「…440、…430、…420…」
梓はユリカのカウントに合わせて、HK417のトリガーガードを人差し指で軽く叩き続ける。
「…… 400!」
梓は背を向け走り去っていく男に、瞬時に照準を合わせトリガーを引く。
パァン!
発射された7.62mmの弾丸は男の背後から左脇腹を抉り掠めた。
「うっ!?」
男は弾丸を受けた衝撃で片膝を着く 。
パァン!
すかさず、梓が第2射を放つと、男の頭が飛び散るように転げ落ちた。
…
「はぁ…終わった…終わった…」
自分に言い聞かせるように呟いた梓は、立ち上がり周囲に落ちている2発の空薬莢を拾うと、ブラウスとスカートに着いている土埃を軽く払う。
男が倒れている方に振り返ると、警官達が近寄り情況を確認している。
「請負人でしょうか?」
「だろうな…守銭奴共が…」
後輩の新人に愚痴をこぼすように応え、哀憐と侮蔑を込めたような冷たい目線で、弾丸が放たれた方角を見つめる警官。
「お疲れ様!無事に終わったことだし、何か奢るよ♪」
「じゃあ…ランチとデザート奢って貰おうかな♪」