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妹が逆ハー状態になってました。

作者: 雪鈴空斗

恋愛っていうジャンルですが、恋愛要素はほとんどないです。すみません…。

 私、葵には双子の妹がいる。

 名前は梓。身長は大体同じくらいだけど、梓は私と違って可愛い。なんかこう、ふわふわしている。髪が癖毛だからクルクルしてたり、動作が小動物みたいだからか、お姫様みたいに思える。

 そんな妹は、モテる。そりゃもうものすごく。姉妹なのになんでこんな…って思うくらい。一日に平均三回くらいは告白される。

 何故そんなことを知ってるか。別に妹をストーカーしてたわけじゃない。だって高校別々だし、大事な妹だからといってなにもストーカーするほどじゃない。

 じゃあどうしてかっていうと。


「…うわあ、またか」


 見慣れた教室から、見覚えのない教室に変わる。

 ついでにいうと、教室にいる人も全員見知らぬ人だ。名前くらいは知ってる人はいるけど、それでも見覚えのない人ばかりだ。


「? どうしたの?」


 キョトンと、目の前にいた女学生が首を傾げる。

 梓とはまた違った可愛さがある子だ。名前はたしか、比奈。

 私は、できる限り優しくて甘い笑みを浮かべながら首を横に振った。



「ううん、なんでもないの。気にしないで」

「そう? なんかあったら気にせずに言ってね。梓」

「…うん。ありがとう」


 もう一度言おう。私の名前は葵だ。梓とは、双子の妹の名前だ。私と違って料理はちょっと苦手で、ほんわかとした雰囲気をまとう、超可愛い私と別の高校に通って、そこで平均三回は告白されるのは、妹の梓だ。


「梓、あたしちょっと職員室行ってくるね。昼休み終わった頃に帰ってくることになりそう」

「そっかぁ。いってらっしゃい」

「うん。じゃあいってきまーす。梓」


 そう言って、比奈は教室を出ていく。私は梓のように優しい笑みを浮かべながら手を振る。

 だって、私は梓だから、梓みたいにふるまわなきゃいけないんだ。





 私たち双子は時々入れ替わる。

 見た目は梓。でも中身は私。見た目は私。でも中身は梓。そういった現象は、幼稚園くらいから起こっていた。

 当時は私たちも、悪戯かと思っていたけど本当に入れ替わったと思った両親たちも混乱。幼稚園はお休みして、どうしたらいいものかと皆で悩んだ。

 しかし何日か経ったら元に戻ったので、ああよかったで終わったのだ。そして、しばらくして入れ替わりは再び起こった。幼稚園にいるときに。

 当然私たちはまた混乱した。そして周りの人には私がまるで梓みたいに、梓がまるで私のように見えたせいで怪訝な顔をされた。その入れ替わりは、幼稚園のバスに乗るあたりくらいで元に戻った。

 そうやって、入れ替わりは何回も何回も起きた。ある時は数日間。ある時は数分。私たちは互いになった。そうしていく内に、私たちは周りを混乱させないためにも互いを演じるようになっていった。

 幸い私たちは双子で、いつもよく一緒にいたからお互いの好みや喋り方を真似るなんて簡単だった。今では親すらも見抜けないことがある。


「だからといっても、さすがになぁ…」


 ポツリと呟いた言葉は、誰もいない空き教室に響いた。

 いくら梓を上手く演じてれても、ボロを出す可能性がある。だから私たちは入れ替わったらできる限りこうして人から離れるようにしているのだ。きっと今頃、私の見た目をした梓も人のいない場所へ向かっているだろう。

 それにしても、いい加減入れ替わるのは勘弁してほしい。小学生頃になると楽しんでいたが、中学三年頃になっていくとその逆だった。もしもテスト中に入れ替わったらって思うと、ぞっとした。梓はあまり気にしていないようだったけれど。

 幸いなことに今のところ、大きなテストの最中に入れ替わったことはない。小テストの時ならあったけれど。あの時は、普通に授業受けてたらいつの間にか小テストやってる最中になって驚いた。しかも、全然予習していない場所をテストしていたからテストの点も散々なことになってしまった。梓は笑って流してたけれど。


「…ハア」


 大きく溜め息をつく。すると、教室のドアが開いた。


「あ、やっぱり梓だ!」

「風原君」


 入ってきたのは、梓のクラスメイトである風原君。

 風原君は、美形またの名をイケメンという容姿と明るくて爽やかな性格のおかげか、クラスの中心的存在だ。梓とも仲が良いらしく、私が梓に入れ替わってる最中にも何度か話しかけられた。たぶん、普段から結構梓と話していると思われる。

 私は人が来てしまったことに顔をしかめそうになり、慌てて笑顔を取り繕った。


「どうしたの? こんな空き教室にまで来て」

「梓を探していたんだよ。あ、そうだ。どうせならここでやっちゃうか。ちょっと待って、皆を呼び出すから」

「へ?」


 予想外のことに、私は目を丸くする。

 すると携帯を取り出した風原君は、私の顔を見て爽やかに笑った。


「昼休みに部活について話そうって言ったの、忘れちゃった?」

「え…あ、そうだったね。話そう話そう!」


 部活? なんだそれ。梓部活なんて始めたの?

 慌てて私は「あ、友達にメール送らなきゃ」と言って携帯を取り出し、梓に部活について簡潔に問う。

 すると、返信はすぐにきた。


『ごめん葵! うっかりしてたよ

 鈴原君とあと何人かで部活作ってやることしたんだ。社会科研究部っていう名前で始める予定なんだけど、本当はただ皆で遊びたいだけなんだよね(笑)

 とりあえず適当に話合わせといて! お願いしまう!』

「……」


 相変わらず返信早いなー梓。

 …って、そんなことはどうでもいいんだ!! うわあ部活!? しかも今から話すだと!? ボロ出さないように気をつけなきゃいけないじゃん!

 あ、でも待てよ。昼休み中だから、昼休み終了時刻までしか話さないってことだよね。それだったらいける! ボロは出さないように気をつけなければ!

 と、心の中で決意していると、来た! という風原君の声が聞こえた。


「梓さん、おはようございます」


 最初に教室に入ってきたのは、礼儀正しい美形。またの名をイケメン

 何回か廊下ですれ違った時に挨拶した人だ。たしか名前は、土井君。同学年なのに誰に対しても敬語口調アーンド礼儀正しい人だ。ちなみに、とても優しい人である。


「お、梓! ようし流石風原! よく見つけた! さすがは俺の後輩!」


 次に入ってきたのは、ハイテンションな美形またはイケメン。またはメガネ美形かメガネイケメン。

 ええと…たしか名前は、夢丘とかそんなだったっけ…? たしか一学年上の先輩だ。廊下などで時々会うのだが、そのたびにやたらとうざった…元気だなと思うハイテンションで話しかけてくる。


「火乃村先輩そんな褒めないでくださいっスよ~」

「なにをいうか! 自慢の後輩を褒めてなにが悪い!」


 ああ違った。火乃村だった。火乃村先輩だ。

 それにしてもなんだこのやり取り。なんか溢れ出るバカ臭がするのは気のせいか。

 私と同じことを思ったのか、二人の後ろから大きな溜め息が聞こえた。


「どーでもいいから、さっさと教室に入ってくれない?」

「ん、ああ悪い悪い」


 慌てたように火乃村先輩が退くと、その人の姿が見えた。

 やや華奢な容姿である中性的な美形だ。語感的に、イケメンより美形の方が合う。

 こっちも廊下ですれ違ったことがある。下級生でありながら上から目線である水宮君だ。

 会うたびに思うのだが、こいつ絶対に梓に気があると思う。普段は素っ気無いか意地悪な発言ばかりだが、あれだ。好きな子ほどいじめちゃう的なあれ臭がする。


「梓、なんでどっか行っちゃったの? 昼休みに部活のことで話し合おうって言ったのに」

「落ちついてください水宮君。梓さんですからこういう事態は予測してなかった訳じゃないでしょう」


 私の姿を見るなり責めたてる水宮君を、私の近くの席に座る土井君が宥める。ナイスだ土井君。今度なにか奢ってあげよう。

 そう思いながら、私は梓の真似をする。


「ご、ごめんなさい水宮君…あたし、うっかり忘れちゃって…」


 シュンとしてみせれば、一瞬の間を開けて水宮君は勢いよくそっぽを向いた。チラリと見えた顔には、罰の悪そうな色があった。


「べ、別に、反省してればいいんだよ反省してれば」


 ふ。梓ほどの容姿となると、ちょっとシュンとされただけでかなりの罪悪感を感じるからな。引っかかったな水宮君。

 見た目はこれでも中身はまったく反省していないことを見抜けないだなんて、君もまだまだだなぁックックック。…って、反省するもしないも知らなかったっていうだけなんだけどね。


「っと? オレが一番最後か?」

「闇丘先輩、遅いよ」

「といっても、お前が最後から二番目だから安心したまえ! まあ遅かったっちゃあ遅かったが!」


 そこで、再び人。

 教室の入り口を見れば、これまたイケメンまたは美形または残念なイケメンの姿が。

 一学年上である彼の名は、闇丘という。もう一度いう。闇丘だ。人の名前を笑う趣味なんてこれっぽっちもないが、彼の名前はすごい。

 ところがどっこい。そんな闇丘先輩と一部の人からはカッコイイと思われそうな名前だが、残念なことに彼はよく転ぶ上によく壁にぶつかるし、失敗して先生に怒られていることもあったし、失言して女子の怒りをまともに食らっていることがある。とても残念な人である。

 ちなみに、彼が転ぶ場面を見たのが三回。壁にぶつかったところを五回。なんか知らないがどっかを爆破したらしく先生に怒られている場面を二回。女子からの怒りを食らっているところを八回ほど見たことがある。


「最後から二番目? それじゃあ、あとは誰が…ああ、光野か」


 教室内を見まわし、闇丘先輩は納得する。

 光野…!? その名を聞いた瞬間、私は顔を青くする。光野。彼のことも知っている。

 可能ならば会いたくない人だ。姿を見た瞬間に回れ右をしたくなる衝動にかけられるが、梓の性格上なんらかの声をかけていくのが普通なので、姿を見るたびに声をかけなければいけないのが非常に辛い。


「や。お待たせ。俺が一番最後みたいだね」


 柔らかな声が聞こえると同時に、姿が見える。

 美形、イケメン、美しい、カッコイイ。どれにも当てはまるような容姿の彼は、私と同学年である光野という。

 彼は、風原君や火乃村先輩に水宮君、闇丘先輩や土井くんから話しかけられながら私の前までやってくると、


「やあ。こんにちは。相変わらず美しいね」

「っ!! …やだ、光野君てば。相変わらずだねー」


 近くで言われて思わず近いと、なんでそんな恥ずかしい台詞言えるの!? と叫びたくなるのを言いたくなるのをこらえ、私は梓として振舞う。

 すると、光野君は風原君に首根っこをつかまれる。


「こら光野。なーに抜け駆けしてるんだよ」

「ああ悪い悪い。謝るよ。…だから水宮もそんなに睨まないでくれるかな? 嫉妬してしまう気持も分かるけど、とりあえず部活について話そうぜ」

「なっ!? べ、べべべべべつに嫉妬なんてししししててないに決まってるだろう!」

「あー…水宮君。君、自覚してる?」

「なにをだ!!」

「…してないのか。うん、まあそれはそれで楽しいからいっかなー? ねえ闇丘もそー思うっしょ?」

「…???」

「あ、お前もか」

「とりあえず、部活について話しましょう。活動場所とかそういうのを決めなければいけませんし。皆様席についてください」


 土井君に促されて、皆が席に座る。

 私の右隣には風原君が。左隣には、光野君が座る。

 その左隣に座ろうとしていた光野君が、周りには聞こえないように小さな声で呟いた。


「それで、君は一体誰なのかな」

「…っ」


 反応してしまいそうになるのをこらえて、私は聞こえない振りをする。肩をすくめる光野君の姿が視界の端に映る。

 ああ、もう。

 この光野という人間は、相当勘が良いらしい。人のことをよく見ていて、おまけに勘が無駄にいいんだから私が梓ではなく別の誰かであるんじゃないかと疑っているのだ。なんていうエスパー。お前は心でも読めるのかと何回思ったことやら。

 ただ確信的なことがないせいか、はたまた入れ替わりだなんてそんなことまさかという思いがあるのか、ハッキリとお前は誰だと言われたことはない。時々、今のように誰にも聞こえないように呟くだけだ。

 ただそれだけなのに、心臓が飛び出しそうになるくらいにビクる。めちゃくちゃ緊張する。

 ああもう。なんで梓は光野なんていう人間と交友をもつんだ…!


「それじゃ、まずは活動場所だけど…ここはいっそ派手に校庭のど真ん中とかどうかな?」

「おお! 派手だねー! …でも火乃原先輩。それじゃ運動部の邪魔になっちゃうよ?」

「それに、教師がそんなとこを活動場所として認めてくれる訳ないでしょ。ここは適当な空き教室とかが妥当だよ」


 皆が話し合いを始める。

 ていうかあれ? 部員こんだけ? 女子が梓しかいないのだけど!? ちょっとどゆこと?

 これなんていう逆ハーレムだ。しかも全員美形だし、その内の何人かは梓に気があるっぽいし、更に一名私たちが入れ替わっているという事実に気づいてるっぽいし!

 つーかこんなに男の子に囲まれたことないから、なんか緊張してきた! 単体だけならまだしも一気に来られるとすんごい緊張する! せめて女子こい!


「…ね、梓はどうする?」

「…え」


 ふいに話題をふられる。


「梓はどうしたい? 唯一の女子部員の意見をきかせてよ」

「…あー…えっと…得にないかな」


 私はニコリと微笑む。

 どうしたい? そんなの、早く元の自分の体に戻りたいに決まってるよ!

 ああもう、早く元に戻れ!!

 そしてさっさとこの逆ハー状態から開放を望む! ここにいるのは、私じゃなくて梓なんだよ!!

 逆ハーレム主は、私の妹なんだよ!!!

主人公である葵が、双子の妹である梓と入れ替わって、そこで男の子たちと恋愛していくのが書きたかったのですが、そこまで書く気力がありませんでした。

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[一言] とても楽しかったです! もし、あればぜひ、続きを読みたいです!
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