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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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聖水転生者は許せない

作者: 円女イゼイ
掲載日:2026/10/04

下ネタですよ!気をつけて!

「あっ」


もしそのシステムに思考と声帯があれば、そんな声が出たに違いない。

だが、生憎とそれはシステムでしかなかった。

ただ世の狭間で淡々と遥か膨大な処理をしていた中のほんの一瞬、輪廻と概念の処理が混ざっただけのことである。

彼にしたらその些末なうっかりが、一つの小さな世界にちょっとしたさざ波を生んでしまったという程度でしかない。そもそも思考も無いので、そのまま彼は常の作業を継続する。


そして一人の人間が、意識など持つはずもないとある概念に転生してしまったのだった。





***

(あ……)


私が目覚めたのがいつなのかはわからない。

ただふと意識を持った感覚があった。

それで、いつものように何の気なしに「あ」と声を出したつもりだった。もちろん、発声の言葉など何でも良かった。たまたまなんとなく「あ」だっただけだ。

しかし、声らしき声は出なかった。私の中で(あ……)と響いただけだった。

自分がどんな状態なのか。何が起こったのか。

戸惑い、意識を自分に向けた。そこで私は、弾けた。


【弾けた】といっても爆発四散したわけではない。

意識が偏在していることを知覚したというのが正しい。

様々な場面に私がいて、私はいろんな状態だった。

ある場所では、壺の中に溜まっていた。

ある場所では、赤子の額に接触していた。

またある場所では、何か獣や謎生物にぶちまけられていた。

時に小さな瓶の中におり、時には体調の悪そうな男に飲まれていた。

そんなありとあらゆる私が存在する場所を自然と知覚したのである。


(どうも私は液体のようだ)


何を言っているのかわからないだろうが、もう事実としてそうだということしかわからなかった。

そしてそれに激しく違和感を覚えている自分もいた。


(私って、元々液体じゃなかったような???)


絶対違う気がする。

何かは思い出せないが、絶対違う気がする。

大事なこと過ぎて、二回も繰り返した。

そんな激しい違和感と葛藤している間にも、あらゆる場所で私は使用され続けている。

現実的にそう生まれついているので、偏在していることや使用されることに反発はない。何なら痛くも痒くもない。

そもそも痛覚とか無いし。


(いや、痛覚ってなんだ。前は私に痛覚があったのか)


あった気がする。

なんなら、私を使っているのが『人間』ということやそこで何が起きているのかも、場面の状況からなんとなく理解できている。

前の私に関係あるからなのだろうか。そもそも教えられずともそういうのがわかるのが当たり前なのか。


あまりにもわからなさすぎて、私はもう前の自分について考えるのを止めた。

何かわからないが、液体生を受け入れるしかないと観念するしかなかったのだ。


そうこうしているうちに、どれほどの時が経ったのか。

どこかで国と国が戦争をし、はたまた村が謎生物の群れに襲われ、人間同士が呪いをかけたりかけられたり。

その時々により私は様々な使われ方をしたが、どの場面でもありがたがられているのはわかっていた。

その間、時間はたっぷりあったので彼らの話す言葉を覚えるように努めた結果、私は『聖水』と呼ばれる液体で人々に望まれる効能があることがわかった。

私を使用すると浄められ、状態異常が回復するらしい。時に不浄な場所に撒かれることもあったが、私が触れるとキレイになるのでまあそれほど不快感は無かった。



だがある時、私はおぞましい体験をした。


その男は、おもむろに全裸になった。

そしてこともあろうか、私を男の下半身にぶら下がるゴールデンなボウルになすりつけたのである。


(は?????????????????)


最初は理解が追いつかなかった。

なんなら、私が聖水だと知覚した時よりも理解不能だった。

次に殺意がやってきた。大憤怒である。なぜかわからないが、(よくもそんなもんに私を揉み込んでくれたな)という憤怒で私は我を忘れかけた。


(こいつ、殺……!??)


次の瞬間、私は恐ろしいスピードでボウルに吸い込まれていた。


「すっげ!浸透すっげぇ!これで俺も子どもを持てるはず!」


男はバシャバシャと私をたっぷりそこにまぶした。

不可抗力で私は浸透した。しかもいつもの皮膚接触より何十倍も密着しボウルと一つになっている。それが余計に腹が立ったが、先ほどの男の言葉で私は状況を理解した。


(こいつ、子どもができないのをゴールデンなボウルの状態異常だと思ってこんな暴挙に出たのか)


なぜこんな拒否反応が出ているのかわからないが、私はここに接触させられるのが怒髪天を衝くほど嫌である。

ただ、やむにやまれぬ事情があるのはわかった。


(最悪な気分だけど、今だけは我慢してやる)


私はこの地獄の時間が過ぎ去るのをひたすら待った。


結果、男の状態異常は治らなかった。

聖水は呪いや不浄などの状態異常に効果はあるが、たまたま子種が失われることになった玉には効果は無かったというわけだ。

男は心底ガッカリしていた。

おかげで子どもを望んでいた妻にも逃げられたようだ。

だが、結果的に聖水を毎日溜め込んだ男の玉は素晴らしくふっくらとし、清浄に光り輝くありがたいホーリーボウルと化していたのである。


男のホーリーボウルは、伝説となった。

主に色町で。

彼は男やもめになったことで自棄になり、娼館通いを始めたのだが、いかにも清潔でありがたみのあるホーリーボウルが娼婦達に大変人気となったのである。

彼は娼婦達に話して聞かせた。どうやってホーリーボウルを持つに至ったのかを。

彼にとっては人生の苦労話だ。しかし娼婦達は彼の人生よりも、清潔で大変魅力的なホーリーボウルに興味があった。

ホーリーボウルの作成方法は、娼婦を通じて他の客へと広まり、いつしか世にホーリーボウル一大ブームを生み出すこととなる。


そう、こうして全世界を巻き込む悲劇は幕を開けた。



(ぬおおおおおおお!!!!許さん…っ、許さんぞ、人間どもめえぇぇ!!!!)


世はまさにホーリーボウル時代。

男の嗜みとして聖水が酷使される。

おかげで、毎日私はとある国に住むほとんどの成人男子のボウルとドッキングする地獄を味わっていた。ちなみにこのブームは隣国を始め各国に広まりつつあり、この調子で行けば全世界の成人男子ボウルコンプリートという偉業を達しかねない。


本来、聖水は聖水脈から涌き出る破邪の効能を持った水で、デトックス効果や新陳代謝を上げる効果もある。

それ故に古来より教会が、神の恵みとして独占売買を行ってきたようだ。

そんなありがたい水を股間に使うなど罰当たりとして、表向き教会は認めていないが、聖職者でさえこっそりボウルを聖水でホーリーしている始末だった。

むしろ各国の聖職者にこいつらがホーリーボウルを布教したのだ。戦犯である。


(教会も腐敗している…。最近はボウルだけじゃ飽き足らず、ホーリー棒だのホーリーホールだのの作成にチャレンジするやつまで現れた)


何故執拗に下半身を光らせたいのか。私は我慢の限界だった。


(もう無理、もう無理、もう無理、もう無理もう……聖水なんてもう辞めだ…辞め…辞めれんの?聖水辞めれんの?ねえ?????)


ちょっとおかしくなっていたのは認めざるを得ない。

それほど限界だったのだ。

ただ、どうやって辞めたらいいかわからない。どこかに逃げるのは無理だ。なんせ私はこの世界に水脈として根付いている。


(こんなことになるなら、効能なんていらなかった。ただの水なら…ただの水……ん?効能出さない選択とか、あるんか?)


私は聖水だ。効能ありきの存在だ。それを出さない方法なんて考えたこともなかった。


(効能を消す?いや、消し方がわからない。それなら我慢する?強く念じる?効能を発揮しないイメージ…イメージ…私は絶対効能出さないマン……絶対に、だっ)



その日から、世界の聖水はただの水となった。

男達のホーリーボウルも、ただのゴールデンボウルに戻った。

いや、人々の嘆きはそれだけに止まらなかった。

そもそも破邪清浄として真っ当に使用していた人々も、その恩恵に与れなくなったのだ。当然被害は甚大だった。

私だって効能の使い方によって出すか出さないかを決めたい気持ちはある。しかし、そんな器用なことはできなかった。

出すか、出さないか。聖水か、聖水以外か。

状態としてはその二択しか私には無い。

何故か心が傷む。でも聖水である私が何故人間の生き死にに心痛むのかよくわからなかったので、考えないように私は効能を出さないことに全集中した。

人間に使われなくたって私自身は特に困らないし。


その後の人々の動きは様々だった。

「聖水が使えないなら破邪の魔道具を使えばいいじゃない」

そんなことを提唱し、魔道具を量産しようとした指導者達もいたが、価格や数の問題でやはり追いつかなかった。

それと同時に教会も焦っていた。聖水という巨額の利権が失われたからである。

しかも「聖水の効能が失われたのは、教会の腐敗に神が怒っているからだ」という声も上がるようになった。

人々の怒りは教会に向けられつつある。教会に、暴徒が押し寄せる事件も発生している。

なんとか責任をそらしたい教会側は世界に向けて布告した。


「聖水の効能が失われたのは、ありがたい聖水を罰当たりな使い方をしたことに神が怒ったからである。今後は一切、不適切な部位に聖水を使うことを禁ずる」


いや、神が怒ったからではない。私が怒ったのだ。

だが、おかげで人々はもうホーリーボウルを作らなくなった。

結果オーライ。

私は全集中を解いた。ただの水から、聖水に復職したのである。

人々は神に感謝を捧げている。

神なんて関係ねえよ。会ったことすらない。全部私の仕業だよ。

まあそんな主張はどうでもいい。

私はボウルに勝った。あいつとドッキングする未来に打ち勝ったのだ。

後はストレス無き惰性の聖水生。どうぞ存分に使ってほしい。

実際、ただの水生もそれはそれで良いことばかりではなかった。人間も動物も普通に水で体を洗うし当然股間も洗うんだ。

ただの水にも私と同じような意識があるのか知らないが、結局私には聖水生が合っているのかもしれないな。






【ホーリーボウル事件】


グリタム歴260年頃、世界から聖水が失われた事件。

アスオリール国に端を発したとされる。当時アスオリールの一般男性が陰嚢に聖水を使用した所、光り輝くほどの清浄な状態となることを発見し、以降アスオリールでは成人男性の陰嚢に聖水を使用することが通例となった。

その慣習は数年かけて近隣諸国に広がったが、グリタム歴271年、突如全世界で聖水の効能が失われた。

これが教会への不審と繋がり、各地で教会に対し暴動が起こる事態となった。

これに対し教会は「聖水が効能を失う原因は、不適切な使い方による神罰」とし、ホーリーボウルを厳格に禁じ、違反した者は破門する処置をとった。

各国もこれに同調、現在も世界各国に共通するホーリーボウル法(ホーリーボウルや不適切な聖水の使用に厳罰を処す法)はこの時期に制定された。

これに伴い、ホーリーボウルはほぼ根絶され、グリタム歴277年、聖水の効能は突如として戻った。

聖水とホーリーボウルに関係性があるかは検証が許されないため不明であるが、この時聖水が使えなくなったことによる被害は、関連死を含めると数万人規模とされる。


本当かどうか謎ですが、化粧水をゴールデンなボウルに塗ると手首等の皮膚の40倍浸透するという話をよく見かけるようになったので、なんとなく書いてしまいました。

すみませんでした。

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