第0話 神様のバンド
青春ってどんなだろうか?とふと考えたとき、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか?
初めまして。私は暇入と申します。
まずこのお話を閲覧していただきありがとうございます。気に入りましたらブックマークをしていただけたら幸いです。
さて、冒頭の質問についてですが、もちろんこれは人それぞれ異なると思います。例え、人の言う青春が犯罪だとしても、その人が青春だと言うのなら青春です。まあ批判は免れないでしょうが。
皆さんにとっての青春を思い出しながら、今から私の想像の中にいる彼らの青春を覗き見していただけたら、と思います。
それでは本編スタートです。
青春とは何か。
そう聞かれた日本人は一体どう答えるだろうか。
「恋をする!」
うん。いいね。彼氏彼女は大切だ。
「みんなで定期テストの勉強をする」
うん。それ勉強してないね、楽しんじゃってる。
「インターハイを目指す!」
うん。もはや常套句。まさにアオハルだ。
「図書館の本を全部読みまくる」
うん?
とまあ、様々な意見が出るだろうが、どれも正解だ。そんなの当たり前だ。とある漫画では青春を「青い箱」と呼び人それぞれに青春があることを示している。
つまり俺がここで言いたいのは、青春というのは一人一人違うものである。
そう。俺の青春とは―――
「なにぼさっとしてんの!ほら、時間だよ!」
突如、目の前に金色の綺麗な髪の少女が飛び出してきた。少し頬を膨らまして、不満げな様子を見せてくる。
「ああ、すまん。もうそんな時間か」
「しっかりしてくれよ、オレらの晴れ舞台だ。一番の功労者が虚空を見つめていてはだめだろう?」
「そうですよ!ほら、猫背になってますよ?堂々としてください!」
二人の男女が背後に回り込み、ガタイのいい男が俺の肩に腕を回し、少女は背中に強い力を加えてきた。
「い、痛い痛い!」
「君たちはいつまでそんなことをやっているんだい?」
「そーだよ!早くいこーよー!みんな待ってくれてるよ」
呆れながら今度は中性的な顔立ちをした美男子とスポーティーな少女が歩いてくる。
「悪かったって、ほらお前らいつものやるぞ」
俺がそう声を掛けると、他の五人も円状に並んだ。
「俺にとって、青春とはなにか」
俺はそう呟く。他の五人はまたこの質問?と呆れた目で見てくる。でも全員の表情は楽しそうだ。
そうだ。言うのを忘れていたな。
俺にとっての青春とは、「日本一を目指したこと」だ。
「みんなと日本一を目指したこと」
隣にいる少女がそう言った。彼女はそうでしょ?と俺にニコリと笑顔で聞いてきた。
「ああ、そうだ。お前らと一緒にここまで来れたことを俺は来世も忘れない。本当にありがとう」
まずは感謝の意、みんなと一緒にここまで来れてよかった。心の底から俺はそう思っている。今日やっと伝えられた。
「んだよ、急に感謝とか」
俺の正面にいる大男が笑いながら言う。
「悪かったな、言いたくなったんだよ。じゃあ行こうか、俺らはなんだ?」
そして俺らのルーティン。大舞台の前は毎回これをやっている。
五人の顔が笑顔になる。そして大きく息を吸って、声を揃えて言う。
「「「「「「ミューズ!」」」」」」
突如として大きな歓声が聞こえてくる。このやりとりが多くの人々に聴かれていたのであろう。
そう。彼らはミューズという音楽バンドなのだ。
彼、彼女らを作り上げたギターのアメノミ。
逞しい体とそれが織りなす力強さのあるドラマを叩くスサノオ。
人の心に温もりを与える優しさを持ったボードを弾くアマテラス。
色気さを感じさせる顔立ちと、それと対比的に重厚感のあるベースを弾くツクヨミ。
圧倒的な美貌と明るさで人に希望を与え、元気溌剌なギターを弾くコノハナヒメ。
そして天女のような声を持ち、圧倒的な歌唱力を持つイザナミ。
そう。彼らは「バンドの神様」ではない。
「神様のバンド」なのだ。
そしてこの話もまた、「バンドの神様」の話ではない。
「日本一を目指した世間知らずな高校生」の話である。
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