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ハルキさんの言った言葉が信じられなかった。

例えこの人があの国に愛着がなかったとしても、その言葉の意味をわかっていないわけがないのに。



「……何を、馬鹿なことを言ってるんですか……!

―――そんなこと、できるわけないじゃないですかっ!」

「どうして?」

「どうしてって……っ!貴方が言ってることはっ!」



あの国を、あの国で生きる民を。



「全て、見捨てると言うことなのにっ!!」

「それが?」



ハルキさんは、それがどうしたと言わんばかりに首を傾げる。

……酷い。酷い、酷い!



「例え数年でも、貴方も生きていた国でしょう?!そんなの、貴方の母親もっ!」



望んでいない、そう言おうと思ったのに。

―――男は静かに笑った。



「俺の母親は1人だけだよ、リン。―――今ここで生きている、あの人だけだ」

  『  返してよ!返しなさいよ!私の息子を、返してよぉっ!!!  』



女性の断末魔が聞こえる。

なんて残酷な話なのだろう、と私は涙を流した。





 

 ◇ ◇ ◇






どうやって家に帰ったかなんて、私は覚えていません。

気がつくと、住み慣れた家の前に立っていました。

いつものように、ドアノブに手を伸ばします。

けれど、いつものようにそのドアノブを回すことができませんでした。

……裏切った兄弟子。

でも、心の奥底ではあれには訳があるのだと言い聞かせていたのに。

あっさりとそれは崩されました。

私はこの1カ月でこの国が好きになりました。

それなのに、あの人は何年もあの国にいたのに、なにも感じなかったなんて。

それどころか、自分を本当の息子のように可愛がってくれたあの女性さえも、否定するなんて。

悲しい。

けれど、それ以上に悔しい。

私の方が、あの国を愛してるのに。

どうして、この力はあの人よりも弱いのだろう。

どうして、あの人なんかに劣るのだろう。

――――どうしたら、あの人のように"私自身"が必要とされる?






「……リン?」






いつのまにか、カケルさんが後ろに立っていました。

目と目が合うと、"感じる"力。


  





『  ……綺麗に描けたね、リン。それじゃあ、それを発動させてみようか?  』







昔、あの人が言った言葉が聞こえる。

――――見つけた。帰る方法。

あの人がした裏切り行為が、まさか私を助けるなんて。

私は自嘲しながら、流れる涙を袖で拭います。

そして、呆然と立っているカケルさんに、言いました。










「……カケルさん、私のために召喚術を覚えてください」








それは頼みじゃなくて、命令。








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